2015年9月9日(水)~11日(金)の3日間にわたり開催された、アッシュ・ペー・フランス主催のファッションとデザインの合同展示会「rooms31」。社会や環境に対し、配慮ある取組やモノづくりをするメーカーやブランドが集まる“エシカルエリア”はたいへん大きな賑わいを見せており、「LOHAS WORLD ZONE」はその中でもまた、ひときわ注目を集めていました。同ゾーンで展示された「エシカルコスメ」10ブランドは、ヘアメイクアップアーティスト・ナチュラルコスメプロデューサーとして活躍されている、小松和子氏監修による選りすぐり。日本におけるオーガニック化粧品の定義は曖昧で、この数年、オーガニックコスメと呼ばれる製品が続々と登場している中、実情は・・・?展示会を終え、今回ロハスワールドゾーン、エシカルコスメを監修された小松和子さんに、バイヤーの反応、これからの市場についてなど、流通、小売、メーカーの方が聞きたい、知りたい!といった内容を中心に、インタビューさせていただきました。

――今まで、数々の展示会オファーを断ってきたとの噂を耳にしましたが(笑)、今回の出展を決めた一番の理由は何ですか?

今のオーガニック&ナチュラルコスメの市場の広がりはわずか5パーセント未満。以前よりは成長していると言いつつも、個々のメーカーにはそこまでの実感はあまりないはずです。それはこのジャンルのコスメブランドが日本に輸入さる数が増えたこと、さらに国産コスメもどんどん増えているからです。これだけブランドが増えれば今までの狭い範囲の流通では当然ブランドはあふれ返ってしまいます。

だから「今までと同じはダメ。新しい発信が必要」だと思いました。

主にファッションが主流の展示会である「Rooms」は、これまでの枠を超えた新しい流通の場を広げるチャンスですし、「全く違う市場からエシカルなコスメが求められている兆しが見えていた」というのも、決め手の理由でした。

――なるほど。今までとは違う市場に可能性が感じられたわけですね。実際、主にファッション業界など、感度の高いバイヤーさんの反応、反響はどうでしたか?

反響は大きいと思いました。

興味を持ってくださる方が多く、しっかりと話も聞いてくれます。まだまだ流行という目でとらえる人も多いと思いますが、私たちが参加したゾーンは、「エシカル」という枠でしたので、環境保全や持続可能な製品作りに共感を持っていただけた方も多かったのが印象的でした。そしてそういうものが支持される時代が来ているのを強く感じました。

おしゃれで上質なものをライフスタイルに取り入れたいという若者たちの満足度を高めるために、エシカルコスメはroomsのような展示会で、新たな力を発揮するチャンスをもらった気がします。そして不思議なのですが、会場には今までのオーガニック業界の流通関係者も多く来客されていました。ですから今までの流れの販路も抑えつつ、新しい販路を広げるチャンスもできたという一石二鳥の結果となっているのも興味深かったです。

これが実際に取引につながってくるかというと、、、、初めてでしたので正直わかりません。ですが、rooms主催のアッシュ・ペー・フランスも、そして私も、これから必ず結果につながっていくと肌で感じています。

――オーガニックコスメは、今や専門ショップのみならず、ファッションやインテリア、ライフスタイル提案型ショップなどへと、販路が広がってきていますね。

今、ファッションが不調な理由の中には、消費者がお金をかける比率が、食や身の回りの生活用品にも質の良いものを求め、バランスよく分散を始めているからだと思います。たとえ購入理由が流行だからということだったとしても、そこは使い始めるきっかけが何であろうと、まず、オーガニック製品を手に取っていただける環境が様々な分野に増えていることは進歩だと思います。

――今後のオーガニックコスメのあるべき方向性について、今回の展示会を通して感じたことがあればお聞かせください。

オーガニック製品は「作ることにはこだわるけど、売るのは下手」という印象。

――確かに(笑)

今までの流通では、いかに製品が厳しい基準で作られているか、、、そこが大きく評価されていたと思います。今回の展示会では、評価される視点がもう少し違うところにあると感じました。

――評価される視点、今までとの違いとは?

まず「必ずしも認証にこだわっているわけではない」ということ。

エシカルエリアのコスメは、オーガニックなどの認証を持っていないものもたくさんありました。でも、「エシカル」というくくりにあるということは、それだけで製品にストーリ-性があることを表しています。そして、来客者たちも、自分の店にセレクトしているものと合わせ、心地よい流れで紐づけられる製品を探しに来ているようでした。
そういった意味では、製品をしっかりと理解して魅力を引き出す見方をしてくれているのが逆に新鮮でうれしかったです。

もしかすると、オーガニック業界者の中では「基準などがきちんと伝わらないではないか」という解釈をする人もいるかもしれません、でもそう考えてしまうと、今までと同じになってしまうと思います。

――今までのオーガニック業界では、厳しい基準で製品を作ることを最優先、重要視してきました。もちろんそれは大事なことですが、必ずしもそれだけではないですね。

こうした人たちからの新しい打ち出し方をヒントと捉えれば、これからいろいろな形が見いだせるのではないでしょうか。たとえフェアトレードでも、たとえ素晴らしい原料を使ったコスメであっても、手に取って購入してもらえなければその先がありません。

これからは、魅力的なプロダクトを自由な発想で発信していく必要があるのです。

――ここ数年のオーガニックコスメ人気、市場拡大についてどのように感じていますか?

正直、「流行」という言葉が先に思い浮かんでしまうほど、今はまだ浅いものだと思います。先ほども申し上げましたが、売れているというのはブランド数が急激に増えているからだと思います。

ただ、オーガニック化粧品に対して「癒し」を求める人が増えている、ということもありますし、エシカル分野の製品に関心を持っていただける機会が増えてもいます。そういう意味ではこれからきっと、本当の意味で市場が広がりをみせるのではと思います。

――これからオーガニックコスメを販売したい、扱いたいという方に向けて、アドバイスを頂けますか?

本当に好きなものをこだわって扱ってほしい。ブランドストーリーやプロダクトの面白さを沢山伝えてほしいです。消費者が手に取りたくなるような伝え方ができるのは、扱う店舗さんの力が大きいと思います。

製品の特性上、多少の知識は必要になりますが、製品を通じてお客様との絆を作りやすいことも良い面です。すでに扱っている製品に紐づけられるものから販売をされると、流れで売りやすくなるポイントとなりますので、製品選びに役立ててください。

――小松和子さん、貴重なお話をありがとうございました!

写真

佐々木 育弥 IKUYA SASAKI / photographer

佐々木 育弥 IKUYA SASAKI / photographer1985年北海道上士幌町生まれ。大学卒業後、建築設計デザイン事務所に入社。その後、写真を通してできる「人とのつながり」に心を打たれ、海外を放浪しながら独学で写真活動を開始。旅先での一瞬の出会いを記録する「ひとたび 一度・人旅」をライフワークとする。『 「君の椅子」ものがたり』 (文化出版局刊) 、無印良品の商品開発チームに同行しタンザニアやキルギスにて生産者の撮影を担当。
http://www.ikuyasasaki.com/

個展  2012年5月 ”THE OTHER PLACE” アルテピアッツァ美唄 2012年6月 ”THE OTHER PLACE” 札幌大洋ビル 2012年8月 ”THE OTHER PLACE” 旭川ONE DREAM PICTURES 2013年6月 ”THE OTHER PLACE” 旭川東海大学 2014年4月 ”佐々木フイルム写真館”札幌 Kita:Kara Gallery 2015年5月 ”SEEK -Guided by the lights of the unknown.-” 札幌 TSURU CAFÉ

グループ展  2013年1月 ”One day trip – rumoi” 旭川ONE DREAM PICTURES 2013年8月 ”東川ストリートギャラリー2013″ 東川町国際写真フェスティバル (準グランプリ受賞) 2014年2月 ”Growth Ring” 旭川ヒラマ画廊 2014年8月 ”MYカメラアングル写真展 「Growth Ring」” 東川町国際写真フェスティバル 2015年4月 ”写真家有志の合同写真展 -コスモス桜祭展” 東京ギャラリーコスモス 2015年6月 ”DARKROOM MEETING 2015 -gelatin silver print exhibition-” 札幌コンチネンタルギャラリー 2015年9月 ”アッシュ・ペー・フランス主催-rooms31″ 国立代々木競技場第一体育館

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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