9月に開催された、一般社団法人フードトラストプロジェクト主催による「第7回フードマーケティングセミナー」で、株式会社ローソン商品本部 ナチュラルローソン商品部部長 稲葉氏による「ナチュラローソンの“いま”と“これから”」をテーマとしたセミナーが開催された。

具体的な数字等は公表できないが、一時苦戦していた時期もあったナチュラルローソンも、成城石井のワイン大幅導入やそれに伴う関連製品の品揃え、また、地域商材の採用などにより、売り上げも好調であるという。

キーワードは「地域」
・東京では買えない
・ここでしか手に入らない
・うまいと認めている

・・・といったローカルな加工品、地元ならではの美味しい食べ物の発掘が第一歩。

しかしながら、
・毎日納品、オーダー数欠品NG
・販売期間中の欠品NG
・流通在庫は基本返品

といった、今までの流通のルールを守れるのは、大手メーカーやNB製品くらいのもの。地域のこだわりある製品を生み出す中小規模のメーカーにとってはハードルが高い。

そこでナチュラルローソンは今までのルールを見直し仕入れ方針を転換することに。「欠品してもよい」「売り切れ御免」「期間限定品」「数量限定」のものをOKとすることで、お客様のニーズを満たす、魅力的な品揃えが実現した。

そして、ナチュラルローソンは、ここからさらに進化する。バイイングというスタイルからの脱却。つまり、商品を「採用する」から、生産者と「連携する」へと発想を転換したのだ。あるものをただ買うのではなく、自社オリジナル製品を企画して生産加工を管理(VDR)。続いて加工や原料調達のインフラをつくり、製造から小売りまでを一貫して行う製造小売業(SPA)としても動き出した。

これらは従来、我々オーガニック業界の得意としてきたことだったが、どうやらここ数年の間にスーパーやコンビニも、商品を「採用する」から「連携する」というビジネスモデルに着目し始めたようだ。福島屋しかり、ナチュラルローソンしかり。ナチュラルローソンは、これから「地域と連携してプレミアムなものを提供」していくという。ナチュラルローソンがどう変わっていくのか、今後の動きも注意深く見守っていきたい。

ちなみに、ここでいう「プレミアム」なものイコール「オーガニック」や「無添加」といったものに限ったものではない。店舗名が店舗名だけに誤解してしまいそうだが、そもそもナチュラルローソンの商品取り扱い基準は、オーガニック業界の考え方とは少し異なるようだ。お店に行って品揃えを見れば、オーガニック業界に携わる者ならすぐにわかること。ここに来ればすべてがナチュラルなもので揃う、というお店ではない。
さらに、現段階では商品知識や接客力には、ナチュラルローソンとオーガニックショップのスタッフとで大きく差があると感じられる。コンビニならではのFC事業だからこそ、店舗オーナーやスタッフへの教育システムの構築に難しさがあるそうだ。基本ナチュラルローソンはセルフ購入で、個人的にも接客された記憶はない。だからといって、最近のオーガニック専門店側の教育レベルを見ている限り、安心してもいられないということは肝に銘じておこう。

2001年にナチュラルローソンが目黒区に1号店を開業した当時、多くのオーガニック業界の人たちが戦々恐々とし、こぞって視察に行っていたことを思い出した。あれからもうすぐ15年。我々の身近にあって自分たちの過不足を補える便利な「コンビニエンスストア」が、美と健康、美味しさと希少性(プレミアム)をセレクトした店として進化し、変化し続けている。最近では、オーガニック製品や無添加、伝統食材などを販売するお店が増え、インターネットを含め専門店に行かなくとも色々な手段で購入が可能な時代となってきた。MDで差別化を図ることが難しくなってきた今、我々オーガニック業界は、専門店ならではの「明確な商品選定基準」「オリジナリティのある商品、独自ブランドの開発(おいしさの追及・機能性の追求)」「販売スタッフの専門知識や接客力」についてなど、改めて見直す必要があると感じている。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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