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僧侶にも必要なオーガニック

2016 / 03 / 25特集コラム


タイの中央部。地図でいうと、ピサノロークから真横に移動したあたりにカオコー高原はある。標高が800メートルのあるので、軽井沢といった風情がただよい、昼間は暑いのだが、夜はバンコクより相当涼しく、もちろん夜空には満天の星が輝く。

僧侶にも必要なオーガニック
だが12月の夜は寒すぎる。涼しさを通り越し摂氏0度になることもある。いつも知り合いの農園に泊まるのだが、板1枚の壁の隙間からは外が見えるという夏対応のコレージは本気で冷え込む。持ってきた服という服をすべて着込み、隣のベットの布団も引っ剥がしてグルグル巻きにしても野外に寝ているのとそうは変わらない気がする。朝、コテージのドアを開けると目の前に身を丸めて野良犬が寝ていた。驚いて立ち上がる犬の体からは白い湯気が一斉にのぼった。

タイ人はこの程度の寒さはなんのその。普段が暑いので「今こそ体を冷やしておこう」という気になるらしい。日が昇ると真っ青な空が広がり、水滴をいっぱい溜めた南国の花がキラキラ輝く。昨夜、虫の音が騒がしかった森も、照りはじめた太陽に下ではひっそりと沈みかえり、暑い1日が始まろうとしている。

僧侶にも必要なオーガニック

今日は知り合いのお坊さんが昼ごはんにいらっしゃる。お坊さんの食事時間は午前11時までと決まっていて、それ以降は食べ物を口にしてはいけないという戒律があるのだ。やがて黄色い衣のお坊さんがどこからともなくあらわれ、私の作った料理をもの静かに食べ「エネルギーに溢れた食事でした」といいおくと、またどこへともなく帰って行った。

僧侶にも必要なオーガニック

実はこの僧侶は有名な画家で、以前、彼のワークショップに参加したことがある。色鉛筆を使い、虹の輪を作っていく。赤からはじまり、いつしか青く変わっていく色の流れを作っていくのだ。どんなに赤1色だと思った中にも青い点が存在し、やがてはそれが主流になり、どんなに青1色だっと思った中にも赤い点が存在し、やがてはそれが主流になる。深い…。タイの人が優しいのは小さい時からこういう教えを聞いているからかもしれない。包み込むような優しさの中に底なしのいい加減さも存在し、底なしのいい加減さの中にも無垢の優しさが存在する。そのとうりだ。

僧侶にも必要なオーガニック

農園では最近、僧侶の宿をはじめた。タイ全土を托鉢する僧侶のために丘のうえにコテージを建て、そこで有機方法で作られた野菜や玄米の食事を提供している。僧侶の食生活は托鉢でまかなわれるのが常だが、その托鉢が世相を反映して、人々が寄進する食べ物が昔と違ってしまったのだ。添加物いっぱいのインスタント食品だったり、抗生物質いっぱいの肉や魚、卵だったり、薬剤で絞った安いオイルや精製された砂糖過多だったりと超現代食を毎日食べることになる。そのため、病気になる僧侶が増え、高血圧の僧侶が沢山いるという。下の写真の僧侶の横にあるプラスチックボックスも信者からの奉納品だ。スーパーで見かける強力な合成洗剤が入っている。食べ物から生活用品まで選ぶことを許されないとは、なんと厳しい修行だろうか。

僧侶にも必要なオーガニック

宿に僧侶がやってきたと知らせが来た。行ってみると3人の僧侶が山の上で瞑想していた。長い瞑想が終わったころを見計らいご挨拶にいった。みんなと同じ作法で手を合わせ、お辞儀をして目をあげると、若い僧侶は青い目だった。 彼の故郷とは何もかも違うこのタイの大地を歩き、高血圧の危機も顧みず、何をみつけようと修行しているのだろうか?

その時。「人参にしよう。異国の僧侶に人参サラダを作るぞー」と、なんの脈絡なく思いついた。いや、多少脈略はある。私も異邦人だからまず辛くない料理という選択肢にかなったこと。それに人参は彼も小さい時から食べていた馴染みの食材だろうと思ったからだ。もうすこし落ち着いて考えてみれば、人参には血圧を下げる効果や血圧を調節する作用があるし、豊富な食物繊維で腸の中も安定する。滞在中に日頃の野菜不足を解消するにはぴったりでもある。

青い目、僧侶、托鉢、人参。なんで私はタイにいるんだ?精神世界と超現実が絡み合う中、沈み始めた夕日を背に山をおり、農園の畑によって無農薬の小さな人参とコリアンダーを抜いて帰った。あれ以来、このサラダを作ると無窮の世界を思い出し、あてどもないことを考えてしまうのだ。

僧侶にも必要なオーガニック
僧侶のサラダ

・人参       中サイズ1本
・塩        ティースプーン1/2
・コリアンダー   いっぱい
・ネギ       1/4本
・ゴマ油      スープスプーン1
・レモン(ライム)汁 スープスプーン1

1.人参を細く千切りにし塩をまぶす。
2.ネギも細く切る。コリアンダーは1㎝に切る。
3.プライパンでごま油を熱する。
4.野菜を盛りつけ3とレモンの汁をかける。
※計りがあれば、塩は人参の重さの1%です。

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木幡恵の「いつだって幸せごはん」木幡恵プロフィール

20代でマクロビィオテックに出合い、30代で雑穀に出合い、50代でタイに出会ってしまった料理クリエイター。ストイックだけど大胆、本気だけど本音であることがたいせつだと思っている。料理活動の場はバンコク。ベジを基本にアジアの調理法を盛り込んだ料理クラス「gaiatable」を主宰。

タイ語のマガジンHEALTH &CUISINEと日本語のタイ情報誌のDACOにレシピを連載中。
自身が企画した商品をヤムヤムから販売している。

日本語書籍
木幡恵の「いつだって幸せごはん」木幡恵の「いつだって幸せごはん」

タイ語書籍
木幡恵の「いつだって幸せごはん」■つぶつぶクッキング
■無発酵の雑穀パン
■雑穀つぶつぶクッキング
■おいしいマクロビィオテック (タイ語)
■タイの料理雑誌HEALTH&CUISINE(タイ語)
■タイのマガジンDACO 料理エッセイ「大地のめぐみ」(日本語)

 

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