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「臭う」から「匂う」へ進化

2016 / 09 / 21特集コラム


多分、私がずーっと日本で暮らしていたらナンプラー(魚醤)は遠い存在だったと思う。タイに暮らすようになっても長いこと臭いが苦手で、醤油ならば美味いのにと思うこともままあった。だが私の趣味は「食」。食品売り場や市場に出かけ、いろいろなもの買ってきては試す楽しさはやめられない。

「臭う」から「匂う」へ進化

クリアな色が溢れている南国の食品売り場の中、見過ごしがちな地味な場所にナンプラーは並んでいる。そのうえ顧客はタイ人とばかりラベルもタイ語なので、何を基準に選んだものか判断がつかなかった。

なにか基準になることが知りたくてタイ人にたずねた。するとナンプラーには、本当に魚と塩で漬け込んだものと、そうじゃないものがあり、そうじゃないものは色や香りや化学調味料を後から添加しているのだそうだ。「だから安いからといって買っちゃダメよ」ということだった。なんと大胆な説明!どうしろというのだと思ったが、やっぱりそういうことなんだと納得した。

「臭う」から「匂う」へ進化
ナンプラーがタイの調味料になったのは、15世紀にイタリア船がアンチョビを伝えたことにはじまる。そのころのアユタヤは世界の船が行き交う国際都市だったのである。しかし目の前にあるアンチョビの「魚」の部分より、滲み出た「汁」に興味を持ったとは、なんともタイ人らしい視点だと感心してしまう。と、いうのは、タイ人にスープをよそってもらうとわかるのだが、彼らは明らかに「実」よりも「汁」を大事にしている。

トムヤムクンを椀に取り分けるとき、日本人はまず立派なエビや具をドーンと椀に入れ、それから汁をはる。まずは具をお玉いっぱいすくって、それから汁だ。タイ人は違う。ポットの中の高価な具もかまわず押さえつけ、具をかきわけて「汁」だけをすくって椀の半分まで入れる。その後、具をチラッと入れ、また汁だけを器用にすくいだして追加するのだ。汁はそのまま飲んで味わうことからはじまり、ごはんにかけて最後の一滴まで味わい尽されるわけで、この汁へのこだわりと愛着が、ナンプラー発見につながったと勝手に確信している。

「臭う」から「匂う」へ進化

ナンプラーダシのラーメン

あるとき、バンコクで開催された地方産物展で珍しいボトルのナンプラーに出合った。店番のおじさんの懸命な説明によると、ここのナンプラーの自慢は、白砂糖は使わず黒砂糖を使っていることだという。

「えっ!砂糖が入っているの?!」

ナンプラーは製法自体、最後に砂糖を数パーセント入れ、塩味を調節するものだったのである。そのことがわかって以来、砂糖が入ってない熟成発酵のみを味わってみたいと天然ナンプラー探しがはじまった。今のナンプラーがどうこう言うのではないが、是非とも、そのままの味が知りたかった。

「臭う」から「匂う」へ進化
市販されている大手ナンプラーの熟成発酵期間はだいたい3~6ヶ月だということがわかった。だが、こだわる蔵元のものは1年ねかせていたし、2年ねかせたものも見つけた。醤油と同じでここまでくるとコクも風味も全然違っていて、それにクサミがおさまり、砂糖を入れる必要もない、調和のとれた旨みが生まれていた。

ナンプラーの原料はアンチョビと同じでカタクチイワシが基本だが、内陸の海のない地方では川魚も使う。魚種が違えば味も風味も違い、お国自慢に花がさくわけである。だがどんな魚にしろ、魚の一部分だけを漬け込んでいるものは論外だという。丸大豆じゃないけど、丸ごと1匹には強いこだわりがある。

ウンチクは知れば知るほど面白く、あっという間にナンプラーにハマリ、試しに買ったナンプラーで我が家の戸棚はあふれかえった。その中で、とくに砂糖を加えていない2年熟成発酵させたものの美味しさには驚きだった。勿論、ナンプラーをほんの少し入れるだけでタイ料理はピタッと決まった。陰性なタイのハーブには陽性なナンプラーがよく合うのだろう。「おうちでタイ料理」という日が増えた。 外で食べるより甘みが抑えられるため、もたれることもなく、安心して味わうことができた。

「臭う」から「匂う」へ進化

めんつゆは、ナンプラー小さじ1と1/2 本醸造醬油大さじ1 水大さじ6

「臭う」から「匂う」へ進化

オクラとコリアンダーをナンプラーと酸味であえる。エリンギをナンプラー数滴と醤油とみりん半々の液をかけながら焼く

80代の両親が滞在している時のことである。ベジタリアンのうちの食事が嫌というのではないが、いまいち馴染めない様子で気の毒だった。そこでナンプラーと醤油を組み合わせ、照り焼きや和え物をつくってみた。すると母たちが慣れ親しんでるダシのきいた日本の味になったのだ。おまけに誰もナンプラーとは気づかない。2年熟成発酵しているナンプラーの旨みはダシとして和食も支えることができたのだ。それ以来、ダシの味が恋しいと思うときは、うどんのつけダレに、てんぷらつけダレにとナンプラーは手軽に期待に答えてくれる。

「臭う」から「匂う」へ進化
タイでも日本でも「時間をかけて旨みを作りあげる製法」が見直され、評価される時代がようやく来た。砂糖を添加しないナンプラーはタイの次世代が取り組んだもので、今、かわいい産声をあげている。そして世界中のどこよりも早く、この9月から、発酵の国、日本で発売されている。

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本場のパッタイ 1人分http://gaiatable.com/story/%E4%BA%8C%E5%B9%B4%E7%86%9F%E6%88%90%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%BC/

・米麺    40g
・厚揚げ   40g
・キノコ、モヤシ、ニラ、人参 適量
・油     大さじ1+小さじ1
・ピーナッツ 大さじ2
(コリアンダー 干しエビ 適量)※
・卵 1個

調味料A
・ナンプラー 大さじ1
・柑橘汁   大さじ1
・ココナッツシュガー 小1+
・醤油    数滴
*混ぜておく

「臭う」から「匂う」へ進化

1.水で戻した米麺と厚揚げを油で炒める
2.麺が柔らかくなるまで水を差しながら炒める
3.Aの調味料を2に加えて炒める
4.麺に味がよく絡んだら、野菜を入れ、火をとめて蓋をしておく
5.皿に盛り付け、生野菜 ピーナッツ 薄焼き卵をそえる

*パッタイは野菜がシャキシャキと出来上がるのがポイントです。炒め方は「麺や卵」が先で「野菜」があとです。蓋をして野菜を蒸らすと上手にできます。
*卵は炒め合わせても美味しいですが、薄焼き卵を添えるのが、このところのバンコクのトレンドです。
※カッコ内は使わなくても作れます。

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二年熟成発酵『王国のナンプラー』

「臭う」から「匂う」へ進化

「王国のナンプラー」は砂糖を一切使っていません。甘味はご自分のお好みに応じてお使いいただけます。砂糖を使わずに丸みのある香りと濃くを生み出すには、長いの時間をかけた熟成発酵が必要で、「王国のナンプラー」は二年の熟成発酵期間から生まれた本物の旨みです。魚臭はほどよく抑えられ、深い濃くがタイ料理の伝統の味を作り出します。材料となる魚はカタクチイワシのみを丸ごとを使用。バランスのとれた旨味の一滴を作るため、材料は毎回厳しく吟味しています。添加剤や防腐剤は一切使っていません。

原料:カタクチイワシ・塩
内容量:200ml
原産国:タイ
小売価格:600円(税抜)

▽ヤムヤムWEBショップ販売ページへ
http://gaiatablethai.shop-pro.jp/?pid=107311682

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木幡恵の「いつだって幸せごはん」木幡恵プロフィール

20代でマクロビオティックに出合い、30代で雑穀に出合い、50代でタイに出会ってしまった料理クリエイター。ストイックだけど大胆、本気だけど本音であることがたいせつだと思っている。料理活動の場はバンコク。ベジを基本にアジアの調理法を盛り込んだ料理クラス「gaiatable」を主宰。

タイ語のマガジンHEALTH &CUISINEと日本語のタイ情報誌のDACOにレシピを連載中。
自身が企画した商品をヤムヤムから販売している。

■つぶつぶクッキング
■無発酵の雑穀パン
■雑穀つぶつぶクッキング
■おいしいマクロビィオテック (タイ語)
■タイの料理雑誌HEALTH&CUISINE(タイ語)
■タイのマガジンDACO 料理エッセイ「大地のめぐみ」(日本語)

★Gaia Table 南国食日記
http://gaiatable.com/diary/

★ヤムヤムホームページ
http://www.gaiatable.com/

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