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オーガニックと地域性は両立する?

2015 / 06 / 18特集コラム


私の暮らしているハレはドイツ中部に位置する人口約23万人の都市。ベルリンやミュンヘンなどの有名観光地に比べると規模は小さいですが、街の西側にエルベ川の支流であるザーレ川が流れ、自然が多くて住みやすい街です。オーガニックの商品を買う場合、市場の八百屋、オーガニック専門店、スーパーマーケットやドラッグストアのオーガニックコーナーなど選択肢は多岐にわたります。その中から今回はハレで最初にオープンしたオーガニック専門店である「Naturell」について紹介したいと思います。

オーガニックと地域性は両立する?

店主のアイヒホルンさんが「Naturell」をオープンさせたのは約20年前。今の店舗は2年半前に移転してきたため比較的新しく、建物の1階が食料品、2階が化粧品とカテゴリーが分かれており、フロアごとにスタッフも分かれています。店に入るとまず迎えてくれるのが青果コーナー。プラスチック製の箱を使う小売店が多い中、ここでは籠を使って常時50~60種類の野菜や果物を陳列しています。ほとんどの野菜が常温で並べられており、冷蔵庫にあるのはマッシュルームやチコリ、サラダ菜などごく一部。店内へと進むとワインや量り売りのチーズ、パンなどを扱うコーナーがあり、カウンターの内側には水道・電気の設備がまとまっています。さらに店の奥に進むとグローサリーと冷蔵・冷凍庫に入れられた日配品などが並びます。

オーガニックと地域性は両立する?

 

オーガニックと地域性は両立する?
オーガニックと地域性は両立する?

このお店で多く目にするのが「ECHT BIO.」(本当のオーガニック)のロゴ。ショーウインドーやポスター、リーフレット、エコバックなど色々なところに記載されています。これは、ドイツ各地の卸売会社13社が連携した「DIE REGIONALEN」(地域のもの・ひと)というグループが行う活動を表しています。このグループはチェーンやブランドに縛られないことに意味を見出し、地域性に特化した品揃えを重視しています。そのため「ECHT BIO.」活動に参加する小売店は独立運営の商店やスーパーなどで、その数は約460店舗。それぞれが自店の周辺地域を統括する卸売会社と契約し、仕入という形で商品や資材の供給を受けています。

今回のお店で例えれば、パンや量り売りチーズは周辺地域の商品、青果については地域産のものにポップをつけて差別化をしています。加えて店にとって魅力なのが「DIE REGIONALEN」によって商品の売り出しが定期的に行われることです。2週間ごとに売り出しの内容は変わり、その都度、リーフレットやポスターなどの販促資材と合わせて対象商品を販売することができます。

オーガニックと地域性は両立する?

オーガニックと地域性は両立する?
BÖLW(※)の調査によれば、”オーガニック食品は重要である”と回答した消費者のうち、69%が“オーガニックであることと地域産であることは同等もしくはそれ以上に重要である”と答えています。

※BÖLW…ドイツでオーガニック関連の食品産業に携わる生産者や加工業者、小売店などが加盟する協会団体

【参考】BÖLW(2015)「Zahlen, Daten, Fakten: Die Bio-Branche 2015」(参照pp14) http://www.boelw.de/zahlendatenfakten.html

店主に店の良いところについて質問したところ、「個人対個人で客と関わるところ。と答えていました。私と話しながら店に入ってくる客、ひとりひとりに笑顔で声をかける彼女の姿勢はまさにその言葉を表しています。

大手雑貨チェーン店で私が遭遇した場面ですが、食品コーナーの前で二人連れの女性がその店のプライベートブランドのオーガニック商品を見ながら「これは本当のオーガニックじゃない。」と話していました。おそらく比喩的な表現だと思いますが、プライベートブランド特有の画一的なパッケージや、個々の特徴を出すよりも商品群として見せるような点に違和感を覚える人もいるのかもしれません。そのため、たとえオーガニックであっても“誰が作ったのか、誰が売っているのかが伝わってくる方が良い“という消費者心理が働くのではないかと思います。そして「Naturell」はまさにこの心理に合わせた店づくりをしています。

青果のポップに書かれているのは「REGIONAL IST 1. WAHL」(地域が一番)というキャッチコピー。オーガニック専門店同士の競争があるがゆえに、「地域性」をキーワードに差別化し、客とのつながりを強くしようとする店の姿が見えてきました。

※数値は2015年6月現在のものです。

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神木桃子(こうぎももこ)プロフィール

オーガニックとローカルをテーマに食の魅力を探求し続けるレポーター。
オーガニック専門店を運営する会社にて販売・バイヤー職に、地域産品のコンサルや販売を行う会社にて営業・バイヤー職に従事し、商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積む。
2014年秋からドイツ在住。