ホーム > 特集コラム > オーガニックコラム【連載】 > 神木桃子の「深掘りドイツのオーガニック事情」 > 問われる日本のオーガニック – BIOFACH 2018 から見る日本食品の今後

問われる日本のオーガニック – BIOFACH 2018 から見る日本食品の今後

2018 / 03 / 10特集コラム


過去最大規模となった今回のBIOFACH(以下、ビオファ)。全9ホール中、7ホールがインターナショナルブースとなり、世界のオーガニック商品が一堂に会する大規模なイベントとなりました。ここで気になるのは日本企業の動向。今年はJETROが3年ぶりにジャパンパビリオンを出展。同パビリオンに出品した14社を含め、ビオファ全体で日本企業は17社が出展しました。

ジャパンパビリオンを訪問した2日目午後は来場者の多い時間帯。にもかかわらずパビリオン自体は閑散とした印象を受けました。ホール内には人気のヴィーガンエリアも設けられており、人通りが少ないわけではないだけにとても残念でした。

問われる日本のオーガニック-BIOFACH 2018 から見る日本食品の今後

他のアジア各国の出展数と比べてみると、中国61社、タイ30社、フィリピン17社、韓国8社と日本企業の数の少なさがわかります。成長著しいタイのエリアではキッチンブースでタイ料理がライブで提供され、人を集めていました。
(各国出展数はBIOFACH / VIVANESS発表より)

■ドイツエリアには現地ナイズされた日本食品が

国際見本市と言っても、そこは開催国であるドイツが優勢。来場者の約半数がドイツ国内からの参加。そしてドイツ企業・団体のみで3ホールがしめられ、どこも賑わっていました。

いかにブースに人を集めるか、商品に目を止めてもらうか。ただ出展するだけでなく確実に実績をつくるためにもドイツ市場を知っておくことはとても重要です。事例として今回はドイツエリアに出展していたメーカーを2社紹介したいと思います。

1社目は醤油や味噌、酢、みりん、海苔など数多くの日本食品を扱うドイツ生まれのメーカー「ARCHE」。元々はマクロビオティックから始まった会社で、ヴィーガンであることから日本食品の取り扱いも始めたとのこと。その大半はオーガニック食品の輸出入を手掛ける(株)ミトクが原料提供しています。

問われる日本のオーガニック-BIOFACH 2018 から見る日本食品の今後
他社との差別化として、商品の裏ラベルにはオーガニックやヴィーガンマークと並んで“MITOKU”のロゴが。日本オリジナルの品質であることをアピールしています。

問われる日本のオーガニック-BIOFACH 2018 から見る日本食品の今後

加えてホームページやリーフレットなどでは商品を使ったレシピを提案。

例えば「Shirataki(しらたき)」を使ったレシピでは、トマトソースを使ったイタリアンや、ピーナッツソースを使ったエスニックなメニューが紹介されています。日本人には違和感があっても、現地の人にとってはレストランやカフェで麺料理として食べなれた味。しらたきを知らない人でも抵抗感なく試せます。

このような工夫が功を奏しているのでしょう。大手オーガニックスーパーのアジア食品コーナーには必ずと言っていいほど「ARCHE」の商品が並んでいます。

2社目の「Aiya」は日本の老舗抹茶メーカー・㈱あいやのドイツ現地法人。抹茶ブームに後押しされ今年はブースを拡大、存在感を高めていました。

問われる日本のオーガニック-BIOFACH 2018 から見る日本食品の今後

OEMとして原料提供もしていますが、注目すべきは人気があるという自社ブランドの商品。カラフルでポップなデザインの抹茶商品の数々はとても目を引きます。開催時は雪も降るほど冷え込んだ現地、試飲に出していたのは寒い時期におすすめというシナモン入り抹茶パウダーでした。日本人の感覚ではなかなか思いつかないデザインやブレンドですが、ハーブティーなどと並べても違和感がないですし、シナモンはドイツ人の好きなスパイスのひとつ。生活に取り入れやすいよう、よく考えられているなと感じました。

問われる日本のオーガニック-BIOFACH 2018 から見る日本食品の今後

このように醤油や味噌などの定番調味料や抹茶は、多くのメーカーが現地に合わせた商品を手掛けるほどスタンダードになっています。日本のメーカーが同じような商品を持ってきて、日本産オーガニックです、とただ並べるだけでは目新しさはありません。

オーガニックの分野に限って言えば、商品開発力はヨーロッパが上。常にトレンドが移り変わる小売業界でバイヤーは次にヒットするもの、新しい体験や知識を求めているのです。

■まだまだ知られていない日本食品はたくさん

ドイツから日本を見て感じるのは食材の豊富さやメニューの多様さ、食品加工技術の高さです。日本にはまだまだ世界に知られていない食材や食べ方、技術が数多く存在します。海外での販路を開拓するにはそこに焦点を当てることが必要なのではないでしょうか。

そう言った意味で注目なのが日本を代表する梅酒メーカー・「CHOYA」の挑戦です。昨年、念願の国産有機梅を使用した有機梅酒を発売。現地法人があるためドイツ企業ブースとしてビオファに出展し、海外に向けたプロモーションをしていました。

そもそも梅という素材が認知されていないヨーロッパ。まずは梅とは何か、そして梅酒にすることでのどのような効用があるのか。アルコールとしてではなく、健康飲料として訴求すると、興味を持つ人が多いと担当者は話していました。

現地の食文化にないものをどう売り込んでいくか。「CHOYA」の取り組みは新たに進出を予定している企業にとってはロールモデルとなるかもしれません。

問われる日本のオーガニック-BIOFACH 2018 から見る日本食品の今後

今回のビオファ訪問で最も印象に残ったこと。それはジャパンパビリオンに出展していた企業の社長さんが発した一言でした。人の入りが良くないという話の流れでこぼした

「日本のオーガニックが問われているのかもしれない。」

という言葉、胸に刺さるのは私だけでないはずです。

原料調達の難しさや海外に比べると小さい国内市場規模など、オーガニック商品を開発するには多くのハードルが存在します。それでも海外へ日本のいいものをもっと発信していってほしい。メーカー側の努力はもちろん必要ですが、ドイツ企業と肩を並べて競争するにはもっと政府や行政の支援が必要です。

このままで大丈夫だろうか、強い危機感を感じる今回のビオファでした。

*************************************

神木桃子(こうぎももこ)プロフィール

オーガニックとローカルをテーマに食の魅力を探求し続けるレポーター。
オーガニック専門店を運営する会社にて販売・バイヤー職に、地域産品のコンサルや販売を行う会社にて営業・バイヤー職に従事し、商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積む。
2014年秋からドイツ在住。