ホーム > 特集コラム > オーガニックコラム【連載】 > 神木桃子の「深掘りドイツのオーガニック事情」 > 古代穀物ディンケル(スペルト小麦)がドイツで支持される理由-後編

古代穀物ディンケル(スペルト小麦)がドイツで支持される理由-後編

2015 / 08 / 31特集コラム


前回はドイツで人気のディンケルとは何か、その特徴についてご紹介しました。今回は、ディンケルについて調べていく中で出てきた二つの疑問「特別な小麦だから高い?」「グルテンフリーとは違う?」についてふれつつ、ドイツにおけるディンケルの市場価値について考えてみます。

古代穀物「ディンケル」・日本でも注目のスペルト小麦がドイツで支持されているワケ

左が普通小麦、真ん中と右がディンケル(パッケージの数値はミネラル含有量)

■流通価格の違い
同じブランド・同じ内容量の小麦粉で比較してみると、普通小麦は2.59ユーロ(約350円)、ディンケルは3.99ユーロ(約539円)とディンケルの方が割高でした。この理由をディンケルや普通小麦を栽培している農家に聞いてみたところ、「ディンケルは普通小麦に比べて収穫量が少ないため、割高になってしまう。」とのこと。加工品では直接比較ができませんが、ディンケルを使用している分、設定単価を高くしているのは容易に想像ができます。
※1ユーロ=135円換算

ディンケルを選ぶ理由を何人かのドイツ人に聞いたところ、口をそろえたように答えは「健康に良いから」でした。パン消費量世界一と言われているドイツにおいて、生活にパンは欠かせません。パン以外にもケーキやスナック、パスタやピザなど食生活の中で小麦の占める割合は高く、使われている小麦の質にこだわるのは当然の流れと考えられます。高い栄養価・オーガニック・品種改良が加えられていない、という“健康”をイメージさせる特徴に加え、伝統的・ローカルであることも付加価値となって、多少の価格差は購入の妨げにはならないのでしょう。

古代穀物「ディンケル」・日本でも注目のスペルト小麦がドイツで支持されているワケ

市場のパン屋 ディンケルの全粒粉パンも人気だとか!

■小麦疾患との関係性
ディンケルが小麦の一種である以上、避けては通れないのが小麦疾患との関係です。小麦アレルギーやグルテン過敏症、小麦不耐症など小麦によって引き起こされる疾患はいくつかあり、その発症メカニズムはそれぞれ異なります。ディンケルは小麦アレルギーに対しては症状が出にくいという事例があるようです。ただしグルテンを始めとする小麦特有の成分を含有していることに変わりはなく、それらが発症要因となる疾患に対してディンケルの摂取は推奨されてはいないようです。

グルテンフリーについて意識するか前述のドイツ人に聞くと、「アレルギーがあるわけではないから特に気にしない」とばっさり。ただしグルテンフリーのニーズが低いかというとそうではなく、一般店でのコーナー化や外食店でのメニュー表示など、日本よりは対応が進んでいます。どちらがトレンドとして優勢かと言うわけではなく、個人のニーズに応じて小麦食・グルテンフリー食のどちらでも選択できるようになっているのです。

ドイツは連邦制を敷いており、州ごとに独自の文化を持っています。同時に移民政策を背景に様々な人種が集まる国でもあり、食文化は多様化しています。オーガニックの分野においても同様のことが言え、ベジタリアン、ヴィーガン、グルテンフリー、ローフードなどのキーワードが互いに影響しあい、ゆるやかなトレンドを作り上げている印象です。その中でディンケルは、伝統的な小麦食を嗜好する消費者を中心に根強く支持されているのではないかと考えられます。

実際、ドイツの学者や関連業者などの間で、ディンケルを始めとする古代穀物が高いマーケットポテンシャルを持っていることに期待する声は多いです。特にディンケルは本格的なブームがきていると言われ、2015年の作付面積は前年に対して20~30%も伸びているという調査結果も出ています。日本においても差別化のひとつとしてディンケルを用いる選択肢が今後増えてくるのではないでしょうか。

 

 

*************************************

神木桃子(こうぎももこ)プロフィール

オーガニックとローカルをテーマに食の魅力を探求し続けるレポーター。
オーガニック専門店を運営する会社にて販売・バイヤー職に、地域産品のコンサルや販売を行う会社にて営業・バイヤー職に従事し、商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積む。
2014年秋からドイツ在住。