欧米諸国のオーガニックスーパーでは、野菜や果物に過剰包装しない「ばら売り」「裸売り」「量り売り」のスタイルが一般的だ。自分の必要な分だけを袋に入れ、ハカリにのせて出てくる料金シールをつけてレジで精算する。通常、販売者側がバックヤードで袋詰めする作業を、買う側がやることになるわけだ。「セルフスタイルで量り売り」は、一般的に、包材などに余分なコストをかけないため、比較的安く提供されやすい。消費者側にとっては手間かかるが、直接鮮度や香りを感じながら、好きなものを好きなだけ、必要な分だけ、無駄なく安く購入できるというメリットもあり、また、無駄なゴミも削減できる。

それなのに、何故か「ばら売り」「裸売り」「量り売り」のスタイルは、日本ではほとんど普及していない。過剰とも思えるような、袋やトレイ、ラップなどでパックされたものがほとんどだ。海外の青果コーナーや市場などの販売スタイルは、ビジュアル的にも素敵で、販売側としても試してみたいと思うところだが、鮮度保持の面だけでなく、消費者側にも受け入れられにくいということで、なかなか取り入れられていない。長年の買い物習慣を変えるのは、大変難しいことなのだ。

では、日本のスーパーで有機野菜が“しっかり”袋詰めされているのは何故だろう?

日本では有機農産物であっても、有機JASマークが付されていない場合は、「有機栽培農産物」「有機栽培○○」「○○(オーガニック)」等の表示をすることができない。例えば、ケースで有機のじゃがいもが入荷された場合、段ボールには有機JASマークが表示されているはずだが、じゃがいも1つ1つには、当然表示はされていない。お店では、これを適量を袋詰めして価格を表示して販売する。しかし、その小売店が「有機小分け認証」を取得していなかったら、袋詰めをした製品には、有機やオーガニックとは表示ができない。「オーガニック」であることをきちんと明示しつつ、自店による袋詰め、量り売りをするためには「有機小分け認証」を小売店で取得する必要があるのだ。

小分け認証を取得するには様々な条件をクリアすることが必要なうえ、納品から小分け、出荷までの記録を管理するなどに手間や人件費等コストもかかる。店側としては「有機認証」であることで慣行品との差別化を図りたいので、あらかじめ適量に小分けされ有機JASマークが付いているものを仕入れる。

日本における長年の買い物習慣、鮮度保持、売り手側の管理、表示のルール・・・こういった現状が「ばら売り」「裸売り」「量り売り」のスタイルを定着しにくくしている。

ドライフルーツやナッツの量り売りも同じこと。さらに日本の気候風土では、湿気による劣化やカビの発生、酸化も起こりやすいなど鮮度保持が難しい。異物混入の恐れなどもある。

また、そもそも日本の消費者は量り売りに慣れていない。どれくらいが100gになるのか?の想像できず、対面の量り売りでも店員に声をかけることがためらわれる消費者も多い。総菜売り場などでは、大中小のカップを用意して、これで〇〇〇グラムくらい、これで〇円くらい、という目安を見た目で判断しやすく工夫している。あらかじめ、店側で量り売りしたものを売場に置いて準備しておくことも多い。

ファーマーズマーケットのように、「ばら売り」「裸売り」で陳列したものを、対面で「量り売り」をすることもハードルが高いが、さらに「セルフスタイルの裸売り、量り売り」となると、日本での実現はなかなか難しそうだ。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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