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スペインで300年以上続くぶどう農園。ワイナリーを営む9代目生産者がBIO農法へと転換した理由

2017 / 11 / 1特集コラム


スペイン、カタルーニャ地方で18世紀初頭(1700年頃)からぶどう栽培を続けているという、Eudald Massana Noya(エウダルド・マッサナ・ノヤ)。家族経営で代々ぶどう農園とワイナリーを営んでおり、現在のオーナー、エウダルド氏で9代目となる。

スペインで300年以上続くぶどう農園。ワイナリーを営む9代目生産者がBIO農法へと転換した理由
スペインは土壌もぶどうの栽培に適した石灰石や粘土質が多く、気候や地形など環境に恵まれている。ぶどうの栽培面積でみると、なんと世界で第1位なのだそう。ワインの生産量でみると、フランスやイタリアに次いで第3位のワイン王国だ。

スペインで300年以上続くぶどう農園。ワイナリーを営む9代目生産者がBIO農法へと転換した理由
Eudald Massana Noyaは、およそ30haの圃場面積を有する畑を所有している。ここではオーガニック(BIO)農法でぶどうが育てられ、この自社農園のぶどうを使った、白、赤両ワインの他、カヴァ(CAVA)というスペインのスパークリングワインも生産。スペイン国内だけでなく、アメリカ、イタリア、ドイツ、ベルギー・・そして日本へも輸出されているそうだ。敷地内にショップもあり、ここで購入もできる。

スペインで300年以上続くぶどう農園。ワイナリーを営む9代目生産者がBIO農法へと転換した理由
Eudald Massana Noya(エウダルド・マッサナ・ノヤ)の社屋に並ぶ醸造所からは、広々としたぶどう畑が見渡す限り続く。農地は地中海から16kmほど離れたところにあり、海が隆起してつくられた石灰岩地帯。圃場内の場所によって土壌の性質も異なるため、30haを31区画に分割し、それぞれ違う品種のぶどうを植えている。その地質に合った品種を育てることは良質なワインを生産するためにも必要だという。

スペインで300年以上続くぶどう農園。ワイナリーを営む9代目生産者がBIO農法へと転換した理由
ちょうど訪れたのが9月末で、今年の収穫は終わったばかり。毎年収穫日は決まっておらず、長年の経験とシュタイナーカレンダーを活用するなどして、ブドウの育ち具合や熟度などを見極め、一斉に収穫。そのまま敷地内の醸造所でワインの仕込み作業が行われる。

スペインで300年以上続くぶどう農園。ワイナリーを営む9代目生産者がBIO農法へと転換した理由

収穫したブドウは圧搾機に入れられ果汁が搾られるのだが、「私たちのワインは一番搾りしか使わない」とのことだった。えっ?エキストラバージンオリーブオイルのように、ブドウ果汁にも一番搾りとかあるの?と驚いた。一番搾り後、圧搾してとれる二番搾りの果汁は売り先があり、それが安価なワインの原料として使われ流通するとのことだった。

スペインで300年以上続くぶどう農園。ワイナリーを営む9代目生産者がBIO農法へと転換した理由
Eudald Massana Noyaは、現在はオーガニック(BIO)農園だが、以前は慣行栽培だった時期があるという。もともとこの地域では、オーガニックという言葉が使われ始める前から農薬などを使わずに農作物が栽培されてきたわけだが、1900年頃の大量生産・大量消費の時代とともに、農薬や化学肥料を使用する合理的な栽培方法がとられるようになってきた。今まで何百年も続いてきた伝統ある農地がいつしか慣行栽培へと変わっていたが、9代目エウダルド氏へと経営を移行したおよそ30年前から、オーガニック農法を取り入れるようになったという。

何故、オーガニックへと転換したのか?と訊ねると、

「美味しいワインを作るためには、美味しいブドウが必要だったから」
「そして、身体に良いワインを作りたかったから」

かかるコストは増え、ぶどうの収量も少なくなっても、良いワインを世に送り出すために選択した、という答えが返ってきた。害虫や病気との戦いではあるが、自然の摂理を利用した方法で対応できている。年2回ほどオーガニック認定機関から検査を受けているが、これもまた、農園のクオリティアップにもつながっているし、特に大変だとも煩わしいとも感じていない。

スペインで300年以上続くぶどう農園。ワイナリーを営む9代目生産者がBIO農法へと転換した理由
では、一番苦労したことは?と訊ねると、

「BIO農法に関してのノウハウを、先代から引き継ぐことができなかったこと」

環境に配慮し、農薬や化学肥料などを使用しないBIOによるブドウ栽培を決意したエウダルド氏。親の代が長い時間をかけて作り上げてきた農地、農法を継ぐにあたり、子供のころから身近にあった家業のスタイルをそのまま引き継ぐのではなく、異なる農法「BIO」、オーガニック農法を選択することは、全くの新規で農業を開始するのと同じくらい大変なこと。大きな決断と覚悟が必要だったことと思う。

ノウハウを、先代から引き継ぐことができなかったエウダルド氏は、7年間、地元の大学に行き直して農業について、そして「バイオダイナミック農法」についてもいちから勉強したという。

大学で学んだことに加え、積み上げられた知識と経験から今のスタイルにいきついた。今では農薬や化学肥料などを使用しないのはもちろんのこと、太陽や月など天体の運行が生み出すリズムを取り入れ、種まきや苗植え、耕うん、調合剤の準備や施肥、収穫などの時期を選択するなど、「バイオダイナミック農法」をこのブドウ栽培に取り入れている。デメターの協会には入っておらず、ワインにデメター認証マークはついていないが、オーガニック(BIO)認証を取得しており、彼らが作るワインは正真正銘のビオワインだ。

スペインで300年以上続くぶどう農園。ワイナリーを営む9代目生産者がBIO農法へと転換した理由
Eudald Massana Noya が慣行栽培から有機栽培へと転換した理由は、とてもシンプル。きっかけは「美味しいワインをつくるため」だった。ワイン造りにとって最も重要なことは原料となるぶどうが最良であることであり、その結果行きついたのがBIOだった。

もともとBIO(オーガニック)だった先祖から続くこの土地が、元通りになっただけ。それが今の時代に必要とされていることであり、自然の流れなのだと、9代目エウダルド氏は語った。

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佐藤アキ (Aki Sato)プロフィール

大学時代は社会福祉を専攻。老人福祉を学びボランティア等の経験から「健康」「食」「環境」に強い関心を持つようになる。自身が幼少期から現在に至るまでアレルギー体質であることも、自然・健康産業分野に従事するきっかけのひとつとなった。首都圏を中心にオーガニック専門店を展開する企業で経験と実績を積んだ後、健康関連商品を扱う日本最大級の通販サイトへと活躍の場を移す。リアル店舗の現場からE-コマースの分野へと、当時オーガニック業界とは真逆の文化とも言えるであろう、インターネットという未知の世界に飛び込み、それぞれに黎明期とも言われる時代に経験を積んだユニークな経歴を持つ。それぞれの分野で蓄積された知識と経験を活かし、さらに消費者という情報の受け手側に立った視点も加えたソリューションを提供することを決意。業界先駆けとなるオーガニック専門の情報サイト『TOKYO ORGANIC LIFE (東京オーガニックライフ)』、『ORGANIC PRESS (オーガニックプレス)』を立ち上げた。

http://www.organic-press.com/about/