ここのところ、男性たちの間でもヨガが人気となっており、「ヨガ男子」「メンズヨガ」といった言葉も飛び交っています。スタジオ・ヨギーでは、TOKYOスタジオがオープンした2010年に、男性専用クラスをイベント的に開催していましたが、ついに今年、ヨガのメンズクラスをレギュラー化しました。男性にとってのヨガの魅力とは何でしょうか。実際にスタジオ・ヨギーに通うお客様にお話しを聞かせていただきました。

お話しをしてくれたのは、会社員の濱直人さん(30代)です。現在は、週に4回ヨガクラスを受講しています。

なぜヨガをはじめたんですか?きっかけを教えてください。

大学で博士号を取得後、アメリカのコロラド州立大学に博士研究員として2年ほど留学していました。同じ研究員のアメリカ人の女性が、ヨガマットを持って嬉しそうに自転車で出かけていくのをよく見かけていました。またあるとき、テレビで片岡鶴太郎さんがヨガを習慣的にやっていて、あまり寝なくてもよくなった、というのを知り、睡眠時間が少なくていいなら、時間を有効に使えるのでは、と思って、ヨガへの興味がわきました。

帰国後、仙台にある東北大学で研究助教をしていたときに、数回、ホットヨガスタジオに行きましたが、しっくりきませんでした。その後、転職して2015年に東京に引っ越したのを機に、スタジオ・ヨギーに通い始めました。職場から近いところで、朝の出社前や、仕事帰りに通えるスタジオを探していました。

やるからにはちゃんとやりたい、と思って、通い始めてしばらくは週に3~4回ほどクラスを受けていました。自分に合っているかどうかを見極めたかったんです。半年ほどたって慣れた頃、ベーシック・トレーニングコース(BTC)を受けました。ヨガの哲学、アーサナ、呼吸法、瞑想、アーユルヴェーダなど互いに関連していたんですね。通っている人同士で話して、おすすめの先生を聞いたりしていました。

ヨガをはじめてから、感じた変化はありますか?

自分の中での変化に気づくようになりました。眠くなったな、と思うとそれに従うようになりました。布団に入って3分以内には寝れます。また、眠りの質がよくなりました。自然と朝型にもなって、目覚ましなしで快適に起きられるようになりました。目覚めもすっきりして、会社で集中力が増した気がします。また、体の状態に気づきやすくなり、気づいたらすぐに動けるようになりました。足が冷えたら早めに対策をする。風邪もひくけれど、ひいたな、と思ったら、前より早めに対策を取るようになりました。以前はもう少し、放っておいていましたね。

また、直観力がさえてきて、右脳と左脳の垣根が減った気がします。というのも、これまで理系で生きてきたので、どちらかというと左脳に偏っていたかもしれません。目に見えないもの、スピリチュアルなものをあまり信じてこなかったので、瞑想には苦手意識がありました。実際に瞑想のクラスを受講して分かったことは、瞑想によって自分のありのままをみつめることで、最善の選択が出来るようになる、そして自分らしく生きていけるようになる、ということです。瞑想をするようになって、とっさの判断力がついてきましたし、あがり症も対処できるようになってきました。今後も自分なりに続けていきたいですね。

ヨガのどんなところが好きですか?

ヨガのアーサナを行いながら自分を客観的にみつめるのが好きですね。筋肉を正しく使っているか、バランスは良いか、呼吸は自然か、など肉体的なことや、今落ち着いているか、人と比べていないか、など精神的なこともかわるがわるアーサナ中に考えています。アーサナ中は静止していますが、頭の中は案外忙しいんです。いろいろなヨガの道があるのも面白いです。先生がクラスのはじまりに話すお話しが、心に響くようなときがあります。解剖学が詳しくて、体に関する深い知識を伝えてくれる先生もいます。「力まないで」とヨガへの臨み方、精神的な姿勢を教えてくれる先生もいます。そんな多様なヨガへのアプローチがあるなかで、自分で選べる道があるところが好きです。また、一生続けることができる、というところがいいですね。

ヨガを始めてから食生活での変化はありますか?

元々自炊をしていたので、野菜は多めにとるように心がけていました。ヨギーの人と話しているうちに、玄米食にすると頭が禿げにくくなるよ、というのを聞いて、玄米食に変えました(笑)。炊飯器で炊いたときは美味しくなかったのですが、圧力鍋で炊くようになったら美味しくなりました。ヨギーのクラス後にサラダボウル専門店ではじめて食べたのですが、想像以上に美味しく、食べた後に体が軽くすっきりしたように感じました。そんなふうに感覚がよくなってきた気がします。

写真は、留学前に通っていた語学学校の近くにあった魚の美味しいお店で定食を食べているところ。

はまっている食べ物や、健康にいいものはありますか?

玄米食と手作りケフィアヨーグルトは美味しいので続いていますね。あと、メジュールデーツはアメリカにいるころから食べています。ドライフルーツなんですが、おやつで食べています。

オーガニック食品に興味はありますか?

自分の生活圏や通り道にあれば、オーガニックのお店に行くと思います。興味はありますね。ただ、何が基準か、よくわからないところがあります。何が正しいとか正しくない、というのがわかりづらいですよね。水素水の水素は水にほとんど溶けない、とか、コールドプレスジュースは酵素がいいから、というけれど、酵素は胃で失活してしまうのでは、という意見もあります。有機野菜は、農家の人の手間がかかっているから美味しいのか、あるいは、新鮮だからなのか、とか。やはり美味しいものがいいです。もちろん、農薬を極力使わない、使いたくない、という選択ができるような環境であればそれがいいと思いますが、発展途上の国で、農業による大量生産が必要だ、というときには、農薬も有効な手段だと思います。

オーガニックという言葉そのものも、意味がいまひとつクリアーではないんです。実は、僕は製薬会社で研究者として、Organic Chemistry(有機化学)を専門としています。このオーガニックというのは、炭素を含んだ、というような意味合いで、病気に対する有効成分を選択的に作って届ける薬の開発をしています。植物から有効成分を抽出するとなると、大量の植物を必要とすることがあります。たとえば、抗がん作用を示す医薬品の有効成分であるタキソールはイチイの樹皮から抽出されますが、1人の患者さんを治療するのにおよそ6本もの木を犠牲にします。イチイのように生息量が限られている場合、必要な量を自然界から得ることができません。代わりとしてもっと豊富にある資源から化学的な変換によって有効成分を作りだし、患者さんへ安定的に届ける、というようなことを研究しています。

スタジオ・ヨギーで販売している食品は定期的に買って試しています。オーガニック食品とか、お店とか、紹介してくれたらチェックしますし、行ってみたいと思っています。

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ヨガをする男性が増えたとはいえ、スタジオではまだ少数派。居合わせた男性同士のお客様と顔見知りになり、情報交換をしたり、食事に行ったりと、交流を深めているそうです。なかには実際にお仕事でもご一緒するようになることもあるとか。

流行りやトレンドにのりやすい女性と違って、自分自身の軸に照らし合わせてヨガを選択し、楽しんでいる男性ならではの”本気度“が伝わってきました。

濱 直人(はま なおと)さん
理学博士。大学で博士号を取得後、渡米。コロラド州立大学で博士研究員として2年間過ごす。帰国後、東北大学大学院薬学研究科にて研究助教を務めたのち、中外製薬株式会社に転職。現在、スタジオ・ヨギー神楽坂、新宿EAST、新宿WEST、池袋などで、週4回ヨガやピラティスのクラスを受講している。ベーシック・トレーニングコース(BTC)を受講後、メディテーション・インテンシブコース(MIC)を受講して、瞑想も学んでいる。

手首を痛めたのを機に、カイロプラクティックに通い、全身のバランスを整えることで患部を癒す魅力にはまっている。この冬は単身インドにわたり、2週間滞在し、ヨガやアシュラム生活を体験する予定。インドは以前行ったことがあるが、観光だけだったので、今回、ヨガを旅行に組み入れる楽しさが増えた。

この記事を書いた人

スタジオ・ヨギー/ヨギー・マガジン
コンテンツディレクター 七戸 綾子

studio yoggy presents「ヨガをする人たちのほんとうのところ」
ヨガスタジオ「スタジオ・ヨギー」を全国20カ所に展開する株式会社ロハスインターナショナルにて、コンテンツディレクターを務める。音声アプリ「音ヨガ」「寝たまんまヨガ」の企画・制作、広報誌やオウンドメディアの編集を経て、2016年「ヨギー・マガジン」を立ち上げ、ヨガにまつわる記事やストーリーを発信している。

これまで一番効果があったダイエットは、炭水化物、脂肪、糖分を抜く“リセットダイエット”だったが(-9kg減)、元来の食いしん坊が災いしてあっという間にリバウンド。鍼灸師であり食事療法士の辻野 将之氏に、東洋医学に基づいたホリスティックな視点を学び、食養生ジュニアコーディネーターに。現在は、旬のもの、ナチュラルな素材のものを美味しく食べることを心がけている。

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