本来であれば、話題のヴィーガンやCBD(カンナビジオール)の展示会、そして恒例のNatural & Organic Products Europeの展示会のレポートを皆さんにお届けしたかったのですが、コロナウィルス (Covid-19)の影響を受け、相次いで中止または延期となりました。
このウィルスの影響で政府が外出を制限するように促しているため、オンラインスーパーマーケットは一時的にウェブサイトをクローズするほどの需要があり、どこも対応をするのが大変なようです。
2019年のイギリスのオーガニック市場は、昨年に比べ4.5%増しの成長。そのなかでもオンライン及び宅配サービスの売上高が11.2%増加しました。そして、イギリスの有機認証機関であるソイルアソシエーション協会が認証しているオーガニック食品宅配サービスの検索数は、2019年末で前年比174%となりました。
その宅配サービスで、ゼロ・ウエイストがトレンドになりつつあります。環境や生態系を考慮すればオーガニック農業に行きつくように、オーガニックと環境は切っても切れない関係にあります。オーガニック産業にいる限り、環境への配慮は十分であるべきです。今回のコラムでは、各社がどのように具体的な取り組みをしているのか、お伝えしたいと思います。
自社ドライバーが配達するからこそできる回収と再利用
前々回のコラムで紹介したオーガニック食品の宅配サービスをしているRiverford(リバーフォード)ですが、自社トラックで自社のドライバーが注文者の自宅に届けてくれます。だからこそできることですが、例えば青果物のボックスの裏面に書かれているように、10回程度の再利用が可能なため、新しいボックスが配達される際、前回分のボックスを回収をしてくれます。その他、肉や魚を配達する際に使用されるチルドバッグ・ウールライナー・アイスパック・ボックスカバーも再利用が可能なため、注文者へ返却を促しています。
また、自治体によりゴミの回収規定は異なりますから、プラスチックの袋・プラスチックまたは紙素材のトレイ・紙袋などのリサイクル回収を居住している自治体が行っていない場合、Riverfordが回収してくれるという親切で環境に配慮したサービスです。
ついに発売されたゼロ・ウエイストボックス
このRiverfordより、3月上旬にローンチされたゼロ・ウエイストボックスを購入してみました。上記写真のように包装が全くないため、見事にゴミが出ません。見えづらいですが、箱の下の方に複数の菊芋とじゃがいもがそのままの状態で入っていました。
Riverfordで購入をすると、じゃがいもは通常、紙袋に入った状態で届きます。じゃがいもは土がついたまま配達されますので、衛生面を気にする人がいるのかもしれません。それと同時に、通気性がある紙袋が保存の観点からすると適しているからでしょう。
今後どういう種類の野菜が入るのかをRiverfordに訪ねると、「残念ながらゼロ・ウエイストボックスでは、長時間空気に触れて傷むレタスなどの葉物を入れることはない」とのことです。けれどもRiverfordでは、サラダの野菜セットも購入できるため、葉物野菜が入らないゼロ・ウエイストボックスも多くの消費者に受け入れられることでしょう。
Abel&Coleの会員向けリフィルサービス
(出典:Abel&Cole)
Abel&Cole(アベル&コール)は、オーガニックの利点に関心を抱いた創立者が1988年にビジネスをスタートしました。美味しく、旬で、エシカル、そしてサステナブルなオーガニック野菜・食品を自宅に届けてくれるサービスです。こちらもメインは、野菜や果物の青果物のボックス販売です。その他、肉・魚・乳製品・パン・お菓子などの食品や掃除用の洗剤など生活で必要なものを追加購入できます。
そのAbel&Coleが今年に入り年会費10ポンド(3月26日時点 日本円換算約1,316円)でメンバーになれる「Club Zero(クラブゼロ)」という会員向けのリフィルサービスをスタートしました。現在は、米・パスタ・レンティル豆・チョコレートなどの限られたアイテムを購入出来ます。
このClub Zeroで購入すると、イギリスで幅広く、そして簡単にリサイクルが可能なBPAフリーのポリプロピレン素材を使用したプラスチック容器に入れられて自宅に配達されます。
プラスチックのゴミを出さないことが目的であるにも関わらず、プラスチックを使用することは心苦しい選択だと思いますが、軽量で耐久性があり、簡単に洗浄ができ、再利用が可能なので詰め替えサービスに最適な素材です。
(出典:Abel&Cole)
このリユースを推し進める鍵は、やや見た目の悪いシンプルなプラスチック容器を使っているところです。それを配達用として使用することで、自分のお気に入りの容器へすぐに移し替えることができる。そして翌週の配達の際に返却!
それから返却されたプラスチック容器をAbel&Cole社が洗い、再利用という流れです。
あくまでもこれは試験的なスタートで、これからミルクや洗剤などの液体製品の取り扱いを増やすビジョンも掲げています。
一方、皆さんなじみのフランス発のオーガニックスーパーマーケットBio c’ Bon(ビオセボン)を運営するイオングループなど計13社が参画し、この秋に日本でも展開を予定しているLoop(ループ)は、ステンレス素材などを使用したスタイリッシュで耐久性の高いパッケージに入れ、繰り返し使用するというAbel&Coleとは対照的な手法を選択しています。
一見するとステンレス製の方が長く使用できそうですが、落とすなどして強い衝撃を与えるとへこみますし、表面に傷がついてしまいます。それに加え、プラスチックに比べて重いため、運輸時のエネルギー効率が下がり、排出されるCO2も増加してしまいます。
また、紙は耐久性が弱いため、繰り返し使用することができず、ゴミとして扱われてしまいます。
企業が環境問題に取り組む際、環境への影響を多面的に考えることが大切です。そして今後、日本でもオーガニック食品の宅配サービスを中心にゼロ・ウエイストの新しい風が起きるとよいと思います。
この記事を書いた人
鈴木 聖佳
約8年間、東京にて化粧品業界商社兼メーカーに勤務、Eコマース、カタログ通信販売のマーケティング&法人営業に従事。2012年よりロンドンへ移住し、3年弱、金融業界で勤務。そして、日本と「繋げる」・日本に「伝える」を仕事にし、現在は、ネゴシエーター・フリーランスライターとして活動中。特にオーガニック・ナチュラルプロダクトの食品・化粧品に関するマーケットリサーチ、インサイドセールス、ライティングをプロジェクトベースで行っています。