ついに、オープンしたゼロ・ウェイストショップ「バルクマーケット(Bulk Market)」へ足を運んで来ました。2017年にポップアップショップとして登場したバルクマーケットが2018年に通常店舗として戻ってくるという情報を耳にし、心待ちにしていました。
場所はハックニーという、ひと昔前は治安が悪かったエリアでありますが、最近は新しいトレンド感のあるショップやカフェが次々にオープンする、流行やオシャレに敏感な若者に人気のエリアのひとつです。ガードレール下にこのバルクマーケットは店を構えています。
バルクマーケット(Bulk Market)について
本来使い捨てせずに、すべてのものをリサイクルするべきと考えているショップオーナー。しかし、難しいのが現実です。すべてのスーパーマーケットは、未だカットできるであろうプラスチック製の包装をしています。それらのプラスチックが、どのような環境問題を引き起こしているか、ようやく周知されはじめています。
そんな背景があり、このバルクマーケットは「お客様には、購入した食品だけを自宅に持って帰ってもらおう!」というコンセプトに基づいています。フードウェイスト・パッケージウェイストの問題に立ち向かい、また私たちの生活や環境に違いをもたらすサプライヤーを支援するというのがバルクマーケットです。
クリスマス・ニューイヤーの休暇明けの最初の週末に伺ったので、商品があまりない印象でしたが、店内は人で埋め尽くされ賑わっていました。私が店内に居た10分間でも、人の出入りが途切れませんでした。やはり、若者に人気が出始めているエリア、そしてトレンドのあるコンセプトだからか、20代・30代の男女が多かったように感じます。それでも、ローカルの子連れのお母さん、年齢を重ねた男性も見かけました。
もう世界中のオーガニックショップで見かけるバルクなので、説明を加えなくても皆さんご存じですよね。豆類、シリアルやグラノーラ、パスタ、小麦粉、ポレンタ、そば粉など、この店ではトータル60種類以上の食品が量り売りで必要な分だけ購入できます。オーガニック認定のものは、バルクに表記がされています。
どのように購入したらよいのか、初めて利用する方のためにも分かりやすく説明されています。BYOとは、Bring your ownの略で、自分のものを持って来てくださいという事です。
1.家にある空き瓶や容器を持ってください。または店頭でも再利用できるこのような瓶が購入できます。
2.空き瓶や空の容器の重さを測定してください。
3.容器に購入したいものを必要な量だけ詰めてください。
4.会計で瓶や容器の重量を差し引いた分量の金額を支払います。
必要な分量だけを、必要なときに購入できるので、プラスチック製のゴミ問題のみならず、家庭内での食品ロスが防げるのも重要なポイントです。
皆さんリピーターなのか説明を読まずとも、淡々と手慣れた様子で買い物を済ませている様子でした。おそらく、ゼロ・ウェイストショップというコンセプトを理解している、すでにプラスチックゴミ問題に強い関心を持ち、個人でゴミを出さないように気をつけて生活をしている人たちが店に集まっているのかもしれません。
そして、量り売りの購入方法の説明に加え、はっきりと注意点が掲示されています。
「ご自身で容器を持参する場合は、きちんと消毒してください。バルクマーケットは、お客様が持参した容器に入れられた場合の食品の二次汚染に関して一切の責任を負いかねます。また、一度容器に入れたものは、バルクディスペンサーに戻さないようにしてください。」
という内容です。
確かに商品の包装がされていることにより、手でその商品を何度も触ったとしても、衛生面の問題からパッケージが守ってくれるので気にすることはありません。しかし、パッケージがないと、このような問題点も考慮しなければならないということですね。
プラスチック製パッケージの今後
現在、ヨーロッパではこのようなゼロ・ウェイストショップはブームとなりつつあります。
それもそのはず、2015年10月より、英国では従業員が250名以上いる小売店でプラスチック製の買い物袋を5pチャージしています。そして、コーヒーショップの紙コップの使用に関しても、マイカップやマイタンブラーを持参することで割引をしてくれるカフェが多いので、人々の意識にも「再利用できる」、「エコである」ということは生活に馴染んでいると思います。
つまり、時代の流れがエコ・フレンドリーに変わって行っているので、このようなゼロ・ウェイストショップは注目されているのです。
そして、バルクマーケットのオーナー、イングリド・カルディロー二さん(Ingrid Caldironi)は、
「きっと数年以内に大手のスーパーマーケットも変わるでしょう。なぜならば、そういう危機に面しています。そして、人々からの需要が市場を変える鍵となるでしょう。このバルクマーケットは、人々の認識に変化を与え、そういった人々の需要を創っています。」
と、こう述べています。
需要により、メーカーではこれまでなかった商品が開発されたり、店舗では新しい売り場の設置や売り場の拡大がされますね。後日、久しぶりにオーガニックスーパーマーケットへ足を運ぶと、新たなバルクコーナーが設置されていたり、プラスチック製ビニール包装がされた石鹸と並び、包装が全くされていない石鹸がいくらかお手頃な価格で販売されていました。確実に無駄なプラスチック製の包装を省こうとする動きは徐々に広がっているように感じます。
時の経過とともに、日本でもプラスチックごみ問題に対して、さまざまな対策がなされれば消費者の意識も変わって来るでしょう。そして、このようなゼロウェイストショップが数多く見られる日がそう遠くない将来訪れるのかもしれません。
この記事を書いた人
鈴木 聖佳(すずき さとか)
約8年間、東京にて化粧品業界商社兼メーカーに勤務、Eコマース、カタログ通信販売のマーケティング&法人営業に従事。2012年よりロンドンへ移住し、3年弱、金融業界で勤務。そして、日本と「繋げる」・日本に「伝える」を仕事にし、現在は、ネゴシエーター・フリーランスライターとして活動中。特にオーガニック・ナチュラルプロダクトの食品・化粧品に関するマーケットリサーチ、インサイドセールス、ライティングをプロジェクトベースで行っています。