出典:VEGANUARY 公式Media Kit  https://veganuary.com/de/

新年が始まり、個人や企業が新たな挑戦や目標を掲げて走り出すなか、オーガニック業界にとって注目すべきキャンペーンが毎年1月に行われるVeganuary(ヴィーガニュアリー)です。ヴィーガンやプラントベースの浸透により、海外では年を追うごとに盛り上がりを見せており、その影響力は個人の消費や企業を変えるほど。今回は、ヴィーガン市場を世界的にリードするドイツにおけるキャンペーンの様子を現地よりレポートします。

そもそもVeganuaryとは?

VeganuaryとはVegan(ヴィーガン)とJanuary(1月の英語表記)を組み合わせた造語。2014年にイギリスで始まり、今や世界中に拡がる、1月にヴィーガン食を推奨するキャンペーンです。2023年は、228の国と地域が参加。7言語9ヶ国に対応する公式ウェブサイトには70万人以上が登録し、主要キャンペーン国だけでも1,610点以上の新しいヴィーガン商品やメニューが発売されました。

ヴィーガン文化が定着しているドイツ

人口の10〜20%がヴィーガンもしくはベジタリアンであるという調査結果が出ているドイツ。市場調査会社・YouGovによると、ドイツ成人の9%が2023年のVeganuaryをきっかけに、意識的にヴィーガン食を試しており、回答者の45%が植物性代替食品に興味がある、もしくはすでに購入したことがあるとの調査結果が出ています。キャンペーンを主導する非営利団体・Veganuaryのインターナショナルマネージングディレクターは、「ドイツは独自のヴィーガン文化を発展させ、それが定着しつつあることは素晴らしい。一般市民も企業もメディアも、非常に熱心でオープンに受け入れている」と語っています。

多くの企業が参加するVeganuary

街中でキャンペーンロゴを見ない日はないと言えるくらい、2024年は生活のあらゆるシーンにVeganuaryが拡がっているのを感じる年となりました。Veganuaryドイツの責任者は、2024年1月のキャンペーンを振り返り、「Veganuaryブームが到来した。10年以上の歴史の中で、最も成功した月として語り継がれるだろう」と述べています。ドイツでは1,000社以上の企業がキャンペーンに参加。うち120社以上は、ワークプレイスチャレンジと呼ばれるプログラムに参加し、職場で従業員へヴィーガン食に親しむ機会を提供するなど、小売や飲食の業界を超えた拡がりを見せています。


期間中は、様々な媒体でVeganuary関連の特集が組まれます。


オーガニックスーパーの店頭では、VEGANUARYキャンペーンチラシと共に穀物ミルクなど、VEGANの製品が並べられていました。

≪主なキャンペーン事例≫

■小売業界
「ALNATURA」や「BIO COMPANY」に代表されるオーガニックスーパーはもちろん、一般のスーパーやディスカンター、ドラッグストアがキャンペーンに参加。新商品、クーポン、割引キャンペーン、試食などを提供。例えば、ドイツだけで2,000店舗以上を展開する大手ドラッグストアチェーン「dm」では、7割以上がヴィーガン対応である「dm-Bio」の商品ラインナップに、Veganuary限定商品を20点投入。クーポン利用で全品20%オフにする大胆な施策を実行。

■食品業界
日本でも名の知れたチョコレートメーカー「Ritter Sport」などの大手ブランドから、スタートアップまで、プラントベースの新商品やキャンペーンを大々的に展開。ハムやソーセージを製造販売する加工肉メーカー大手の「Rügenwalder Mühle」が、10年前からヴィーガン仕様の商品を販売し、本キャンペーンにも参加しているのはヴィーガン市場が拡大していることを示す象徴的な事例。

■飲食業界
ドミノ・ピザ、ピザ・ハット、バーガーキングなどの大手外食チェーンから、パン大国であるドイツで親しまれているベーカリーチェーン、社員食堂や学食などでプラントベースのメニューが拡大。宅配デリバリーサービスの主要2社は、多くの提携レストランと協力して、ヴィーガン料理を割引価格で提供。

■出版業界
2024年のVeganuary開始に合わせ、初の公式ヴィーガン料理本のドイツ語版が登場。国際的なヴィーガンチームによる、100以上のレシピが掲載されている。

出典:VEGANUARY 公式Media Kit  https://veganuary.com/de/

日本におけるVeganuary活用のカギとは?

Veganuaryの発表によると、2024年1月のキャンペーンでは、全世界で180万人以上の人々が無料メールマガジンに登録し、のべ2500万人がヴィーガン食にチャレンジしたとのこと。その影響力はますます無視できなくなっている一方で、その反動とも言える事例をひとつ紹介します。

Instagramで7.8万人のフォロワーを持ち、サステナブルなライフスタイルを発信しているAlmut Periwitzさん @maedelsbande (https://www.instagram.com/maedelsbande)がVeganuary期間中、1枚目に「ヴィーガン食ではないです」、2枚目に「プラントベース食です」と書かれたプラカードを掲げた写真を投稿。

ヴィーガンであると語ると偏見をもたれることや、ヴィーガン食品の問題点に言及し、それでも完璧にヴィーガンでいたい?とフォロワーに問いかけています。そして最後に、「プラントベース」という言葉が個人的にしっくりくるし、偏見もなく、面白い話題になるでしょうと締めています。

植物性の食事は健康にも地球環境にも良い影響を与えることは研究によって示されており、日本においてもヴィーガン市場の成長は期待されています。

Veganuaryは個人も企業も活用しやすいキャンペーンであるものの、日本ではヴィーガンと聞くとドイツよりも身構える人が多いのが実情です。彼女の例が示すように、プラントベースという言葉とどう組み合わせるかが、受け入れやすい土壌を作るカギかもしれません。

この記事を書いた人

神木桃子(こうぎももこ)

ドイツ在住オーガニックライター
オーガニック専門店を運営する会社での販売・バイヤー職、地域産品のコンサルタントや販売を行う会社での営業・バイヤー職を経て、2014年秋よりドイツに移住。商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積んだエキスパートならではの視点で、ドイツのオーガニック&サステナブル情報を発信している。3歳になる娘を子育て中。

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