寒暖の差があるほどにおいしいお茶が育つ。霧が発生するのはその証(樽脇園)

プロローグ

2019年の暮れまで、海外の和食人気に拍車をかけるように日本茶(とくに抹茶)の輸出が目覚ましい伸びを見せていました。それが2020年になると新型コロナウィルスのパンデミックで世界中がストップ。そのまま1年が過ぎ、2021年も予測不能の幕開けとなりました。ただ、視点を内側に向け、内観することでこれまで見えていなかったものへの気づきが始まっています。お茶もそうです。

たとえば、日本茶は免疫力アップの効能があり、コロナ感染に抑止力が働くと聞きます。それはコロナ禍、アフターコロナに向け、お茶のもつポテンシャルを引き出し、免疫力アップの新しい魅力ある商品(力)展開へと進化する可能性を予感させます。

また、小規模ながらも各産地で和紅茶が続々と誕生しています。ここからも新しいストーリーが見えてきそうです。

「お茶しよう!」のフレーズはくつろぎの時・空間に移動するサイン。

コロナ禍の現在、自宅で過ごす時間が多くなり、「お茶しよう!」を日に何回つぶやいているでしょうか。以前にも増してお茶の時間はとても大切なひとときとなりました。それは味わい方、楽しみ方を通してお茶がもつエスプリの再発見へとつながります。

お茶の産地は全国に散らばっていて、産地名の3~4ヵ所ぐらいは知っていそうだけれど、産地別の味の特徴はと聞かれても明確に答えられないのが実情です。お茶を味わう機会が多くなった今、知らないままは”モッタイナイ”と感じるところです。

そこで、新茶にはもう少し待ち時間がありますが、ひと足早く、有機の茶葉を探してきてコロナ禍ゆえのいながらにして巡る茶葉の旅を試してみました。

静岡の実力を垣間見る

一番茶(一芯ニ葉)はエネルギーで煌めいている

お茶と言えば、多くの人が静岡茶をイメージするというのが一般的な印象でしょうか。しかし、静岡茶といっても金谷、掛川、川根、牧之原など県内の各地域で、その特長は在来種も含めて様々です。

数少ない知り合いのお茶農家で考えてみても、茶葉の品種は“やぶきた”が多いけれど、味はどこもちがいます。

藤枝市の「人と農、自然をつなぐ会」代表の杵塚敏明さんは完全無農薬栽培41年の大ベテラン。大地にしっかり根づいたお茶の木が毎年産み出してくれるのは香り、渋味、甘味、うま味のバランスが絶妙の常飲したいお茶。

同じ藤枝市の向島園の向島和嗣さんは、亡父の跡を継いだ十代のときの清々しさが味のベースになっているという印象を私は強く持っています。そしてこの10年、年ごとに切れ味と繊細な味わいの深さが増しています。

善光園の増田善光さんは牧之原台地から山あいに入った山間地で自然栽培を28年。夫婦で淡々と育んできた茶園。「味は肥料で作れる。最近は肥料の内容に変化はなく、味が安定している」と語る。滋味豊かでやさしい甘味と香りに思わずホッとし、笑みこぼれるお茶を栽培しています。

樽脇園(樽脇靖明さん)は川根茶で名高い川根本町。峠を3~4つは越えた感のある天空の茶畑です。夜明け前、湧き出た霧が茶畑を流れる光景に遭遇。「美味しいお茶ができない筈がない」と腑に落ちた瞬間の体験でした。

いながらにして巡る茶葉の旅

一説には“色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす”というらしく、産地としては北に位置する埼玉県入間の狭山茶を後藤園(代表/後藤賢治さん)のお茶ではじめて味わってみました。狭山茶の産地は寒いので収穫が年1〜2回と少なく、その分葉が厚く、味が凝縮され、濃く深い味わいがあるといいます。まさにその通りで最初のひと口でやられました。

毎年、ファンが集い手摘みを楽しむ(人と農、自然をむすぶ会)

次に、今回は近畿を飛び越えて一気に南下して四国・高知へ。四国山地の山深い森の奥、吾川郡いの町の国友農園(代表/国友昭香さん)は、森に自生している茶木を自然農法で育てた野趣あふれる山茶が自慢。お茶本来の薬効の生命力に溢れ、“皐月の森の香り”と呼ぶ香りが際立って、中国茶の柔らかい香りと味を彷彿とさせます。

そして九州へ。九州のほぼ中央で北に阿蘇外輪山を望む標高600mの宮崎県五ヶ瀬町の宮崎茶房(代表/宮崎亮さん)の今では数少なくなった釜炒り茶。急須から湯呑に注ぐ時から釜炒り茶特有の芳醇さが香り、漂い、なごみます。

最後は日本で最高に自然の豊かさで溢れかえっている屋久島から。八方寿茶園のお茶はどこよりも早く3月には新茶を届けてくれます。味、香り、色のどれもが濃く鮮やかで、まさに山と森と水と太陽の光のエネルギーで育まれたお茶です。

ここまで来て、やはり宇治、奈良・三重、嬉野、八女、知覧・・・と名立たる産地を抜きに、お茶は語れないと思うことしきり。

つづく旅 ―― BIOCHA(ビオチャ)のすすめ

人と環境に負荷を与えない無農薬・無化学肥料の有機農法や自然農法で栽培したお茶をBIOCHA(ビオチャ)と呼び、その視点から産地、生産者、消費者意識、国内外マーケットがどんな動きをするのかレポートします。

もちろん、おいしいお茶を紹介しながら。

【茶葉巡りした生産者】

①人と農・自然をつなぐ会 静岡県藤枝市
http://munouyakucha.com/

②葉っピイ向島園 静岡県藤枝市
http://mukoujimaen.jp/

③善光園 静岡県島田市
https://zenkouen.net/

④樽脇園 静岡県川根本町
https://taruwaki-en.jimdo.com/

⑤後藤園 埼玉県入間市
TEL:042-934-1705  FAX:042-934-1705

⑥国友農園 高知県吾川郡いの町
http://www.kunitomo-f.co.jp/

⑦宮崎茶房 宮崎県五ヶ瀬町
http://www.miyazaki-sabou.com/

⑧屋久島八方寿茶園 鹿児島県屋久島町
http://www4.synapse.ne.jp/hachimanjyu

この記事を書いた人

山口タカ
大分県佐伯市出身 や組代表 ジャーナリスト&クリエイティブディレクター(出版/マッチングコンサル) オーガニック、アウトドア、食育をテーマに活動。1997年に日本初のオーガニック専門誌「ORgA(オーガ)」創刊。 2001年に「オーガニック電話帳」を自費出版。以来、”ひとり出版社”と称してオーガニックの普及をライフワークとし、全国有機農家や食品メーカー、レストランなどを取材している。漫画「美味しんぼ」第101巻“食の安全”をコーディネートし、作中に“有機の水先案内人”として登場。近著に「東京オーガニックレストラン手帖」(辰巳出版)