兵庫県にある「山のパン屋」さんの、自家栽培小麦食パン「一尺二寸」。コンセプトは、「お米を食べるように、1日3食、365日食べても飽きないパン」。この理想のパンを作るために小麦粉を探し始め、最終的にたどりついたのは、パン専用小麦「せきとらら」を自ら畑で育てるという、選択。もちろん、農薬や化学肥料は使用していません。

究極の地産地消

リーンなパンというのは数々あれど、理想の小麦粉を探し求めて、最終的に自分たちの手で小麦の栽培までしてしまった・・・という、究極の地産地消。畑の土づくりから種まき、収穫、製粉・・・パンを焼き上げるまで、すべて自社で一貫製造するということは、理想はあっても、なかなか、簡単にはできることではありませんね。

小麦畑の土づくりからはじまって、一つのパンになるまで、その期間は実に1年を要します。

シンプルで飽きのこない味 

原料は小麦と水、塩、酵母のみというリーンなパンは、世の中には他でも存在しているものの、使う小麦の種類や酵母によって、個性が出てきます。

「一尺二寸」に使われるのは、南あわじと兵庫県稲美街で作った全粒粉に六甲の水、赤穂の塩。自社の畑で栽培された小麦(せときらら)は、天日干しで乾燥させ、石臼で製粉。石臼でじっくりと時間をかけて粉を挽くことで、熱の発生を抑え、小麦の香りが高熱で飛んでしまうことを防いでいます。だから、小麦本来の持つ甘みや香りが感じられるのですね。

このパンの味の印象は、とにかくシンプル、そして軽い!軽く焼くと表面はサクッと、小麦の粒や香ばしさも感じられます。卵や牛乳、生クリーム、バター、油脂類などが入っていないため、重くない。だからこそ、オリーブオイルやはちみつなどをはじめ、サンドウィッチなど、合わせる具材も選びません。

軽いからいくらでも食べられるパン、というのともちょっと違って、しっかり噛むことで満足感もあるパン、という印象でした。

「一尺二寸」というネーミング力 

いわゆる「角パン」「食パン」ですが、「一尺二寸」という、日本的でインパクトのあるネーミング。一尺二寸は365mmなんですね。パンの実寸をそのまま、そして、「365日食べても飽きないパン」というキーとなる数字にかけているのも、良いなと思います。

地産地消になると、どうしても「〇〇さんの作ったパン」と生産者の方の名前を入れたり、「〇〇産小麦使用」など産地を強調するなどが多いですが、ネーミングはブランディングのうえで重要な要素の一つ。同じ角パンでも、商品名ひとつで大きく印象が変わります。インパクトがあり覚えやすい、そしてストーリー性のあるネーミングはいいですね。

「一尺二寸」のいいね!ポイント
◎シンプルな原材料
◎添加物不使用
◎究極の地産地消
◎手ごろな価格帯 ※通販価格1,080円(税込)/1本
◎ネーミングセンス

【共同企画】オーガニックプレス&オーガニックヴィジョン

「オーガニックの商品力」
これからのオーガニック業界では、商品そのものが魅力を放つ「商品力」が必要とされるだろう。市場と消費者意識をいちはやく察知したメーカーによる、多彩な「商品力」を持つオーガニック商品にフォーカス。商品を検証、実食し、さまざまな視点から新商品を分析する。

※一般社団法人オーガニックヴィレッジジャパン(OVJ)発行「ORGANIC VISION vol.11」(発売日:2018年7月31日)オーガニックプレス&オーガニックヴィジョン共同企画「オーガニックの商品力」にて、一部レビューコメントが掲載されます。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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