感染拡大防止と社会経済活動の両立に舵を切った日本。今、オーガニック業界に求められる姿とはなんでしょうか。

それを計るうえで、先行して制限緩和に踏み切ったドイツの事例は参考になるものばかりです。今回はコロナ禍における業界全体の傾向、企業の動向、見えてきた課題などについて紹介します。

オーガニック小売店は例年にない売上を記録

オーガニック業界誌・BioHandelが発表したオーガニック小売店における2020年1~3月期の売上成長率は軒並み高い水準となり、コロナ危機がオーガニック消費にとっては追い風となったことを示しました。

出典:BioHandelより筆者作成

もちろん外出自粛で食品など生活必需品の購入が増えるのは、オーガニックに限らず、小売業全体の傾向ではあります。しかし、ドイツ連邦統計局が公表しているデータによると、食品を主に扱う総合小売店(スーパーマーケットを含む)の売上成長率は同時期で+10.3%。オーガニック小売店の伸びがより顕著で、消費者の意識がオーガニックへ向いていることがわかります。

出典:Alnatura(写真:Marc Doradzillo)

この表で、農場直営店の突出した数字が気になった方もいるかもしれません。
ドイツの場合、農場直営店が野菜を中心とした定期宅配サービスも行うことがあります。このため、外出制限によって宅配の需要が増え、結果として売上を大きく伸ばしたのです。

ただし、農場直営店によっては自社や地域の限られた物流網を使用しているため、需要に供給が追い付かず、新規顧客を受け付けないといったところも。筆者も3月に周辺地域の宅配サービス数社に申し込みをしようとしましたが、注文が殺到しているとの理由から現在も順番待ちの状態です。

筆者在住地域で宅配サービスを行っているオーガニック農場のウェブサイト。現在は新規顧客を受け付けていない旨が明記されている 出典:https://www.hofzurhellen.de/

アルナトゥラは新たな戦略を考察

消費者のオーガニック志向の高まりを受け、オーガニックスーパーでも一般スーパーと同様にパスタや粉類、缶詰や青果などを中心にまとめ買いや買い占めが多く見られました。

オーガニックスーパーチェーン第2位のAlnaturaは食品業界専門誌・Lebensmittel Zeitungのインタビュー記事(4月8日付)でそのことに触れ、次のように語っています。

「(消費者がオーガニックを求める)トレンドはコロナ後も続くだろう。私たちがどのようにサステナブルに生き、環境と気候を守ることができるかという問いに対して、オーガニックは重要な答えになる。(一部略)

私たちは世界規模でこの社会がいかに脆いかを学んだ。だからこそ、私たちは社会の一員として考え直さなければならない。気候変動やオーガニック農業、そして利益優先主義ではない方向へとより強く」(筆者訳)

出典:Alnatura(写真:Marc Doradzillo)

生産現場の深刻な人手不足には特別措置

オーガニック業界に限ったことではありませんが、農業の分野では深刻な人手不足が問題となっています。収穫・種まきシーズンを迎えるこの時期、ドイツでは主に東欧から多くの季節労働者を迎え入れます。ところが今回の入国制限措置によって季節労働者の入国も禁止となってしまったのです。

この状況に対してドイツオーガニック業界団体・BÖLWのPrinz zu Löwenstein代表は声明を発表。政府を批判するとともに、特別措置を求めました。

「農場の状況はコロナによって劇的に深刻化している。ドイツ中で植え付けや世話、収穫に何十万もの人手が足りていない。しかし自然は待ってくれない。満足な食事をとるために、夏の収穫に向けて今すぐ野菜やジャガイモを植え付けないといけない」(3月25日付コメントより抜粋・筆者訳)

このような声は他の農業団体からも挙がっており、ドイツ政府は季節労働者に対し入国禁止の一部解除を決定。4月と5月に最大4万人までの労働者に限り、所定空港へ飛行機で入国させ、雇用主が農場までの移送や現地での健康調査・感染対策などを講じるうえで労働可能とする措置を発表しました。

また民間では「ERNTE ERFOLG」(収穫の成功という意味)というプラットフォームが誕生。ウェブ上で働き手を探す農家と収穫の手伝いを希望する人とを直接結びつけるサービスを始めています。

農業支援プラットフォームERNTE ERFOLGのウェブサイト 出典:https://ernte-erfolg.de/

人との接触が制限される中でどのように社会経済活動を維持していくのか。多くの人が課題を抱える中で、この農業支援プラットフォームのようなサービスが今まさに求められていることかもしれません。

先に紹介した宅配サービスしかり、せっかくオーガニックの需要が増えているのに、人手や設備面が理由で供給が追いつかないのはとても残念なことです。

インターネットやSNSを活用し、このような課題をどう解決していくか。今まさに取り組んでいるドイツ企業の事例を次回はお届けしたいと思います。

※本記事は5月31日時点のデータを元にしています。

この記事を書いた人

神木桃子(こうぎももこ)

ドイツ在住オーガニックライター
オーガニック専門店を運営する会社での販売・バイヤー職、地域産品のコンサルタントや販売を行う会社での営業・バイヤー職を経て、2014年秋よりドイツに移住。商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積んだエキスパートならではの視点で、ドイツのオーガニック&サステナブル情報を発信している。3歳になる娘を子育て中。

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