ここ最近、英国では、野菜や果物を包装しているプラスチック製パッケージが無駄ではないか?という稟議がされているのを頻繁に見かけます。また、それと同時にゼロ・ウェイストショップが次々と新しく店を構えているのを見ると、エコの時代が本格的に到来するような気配を感じます。

通常、店舗数や流通量の多いスーパーマーケットで購入したほうが、生鮮食品の品質も良いし、価格もリーズナブルなので、オーガニック専門店で購入することは滅多になく、大手のスーパーマーケットでオーガニックプロダクトを購入しています。そこでは、オーガニック・ノンオーガニックに限らず、プラスチック製のパッケージやビニール袋に入った野菜や果物が多く並んでいます。

プラスチック製の袋で包装されている野菜

ある記事によると、たった14%のみのプラスチックがリサイクルされているという現実。
そして、年間8百万トンものプラスチックが海に流されているそうです。

実際、英国のオーガニック認証機関、ソイルアソシエーションのスポークスウーマンは、
「オーガニックとノンオーガニックの野菜や果物と混合させないように、パッケージに入れている」と言っています。

プラスチック製のパッケージがないと、オーガニックであることやオーガニックの認証マークを明記できないので、識別をしづらいのかもしれません。

(出典:The Guardian

しかし、オーガニック専門店で行っているようなことが、比較的規模の大きいチェーンスーパーマーケットになると本当に実施できなくなるのでしょうか。そんなことを考えさせられるスーパーマーケットに出会いました。

1977年よりアメリカ、ハワイ州のローカルの農家をサポートし発展し続けている、オーガニック・ナチュラルのビーガンスーパーマーケット、ダウントゥアース(Down to Earth) です。2018年11月現在、6店舗あります。

驚きの売場、ダウントゥアース 

スパイスやハーブ類の量り売り

小麦粉・ココナッツフラワー・タピオカフラワーなどの粉類まで量り売り

ロンドン市内のオーガニック専門店では、ナッツ類、グラノーラなどは、このような量り売りもしていますが、このダウントゥアースのように、小麦粉やドライハーブ、スパイスまで量り売りはされていないので、正直とても驚きました!

そして、キャンディやグミ、ドライフルーツも量り売り!本当に必要な量だけ買えるので、食べきれず、ごみになってしまう食品ロスを未然に防げるという観点でも優れています。

ビニール袋の設置もありましたが、自身でプラスチックやガラス製の容器を持参し、購入する事でごみを減らす事ができます。

実際、朝早くから店舗に来ていた女性客は、ジャムの空き瓶を持参してスパイスやシリアルを購入していました。

果物売り場

野菜売り場

これまで様々な売場を見てきましたが、オーガニック専門店では、プラスチック製の包装がほぼされていなくても、野菜や果物が、無造作にカゴに入れられているところがほとんどです。このダウントゥアースのように、きちんと丁寧に並べられている野菜・果物の売り場は、見た事がないので驚くと同時に感動してしまいました。

また、写真からは少し分かりづらいですが、商品名と価格の横にオーガニックのものであれば、USDAのオーガニック認証マークを表示しているので、きちんとオーガニックの食材を選ぶことができます。

冒頭で触れた、ソイルアソシエーションが言う「オーガニックとノンオーガニックが混ざってしまう可能性」に関しても、以下の方法で回避できると思っています。

ダウントゥアースの売場写真をよく見てみると、野菜や果物にもそれぞれに生産地などを表記するシールが付いています。そこに、機関認証マークのシールは貼られていなくても、オーガニックであればオーガニックと表記されています。ひとつは、出荷元がシール貼りを徹底することで、プラスチック製の包装がなくても、区別がつきます。

そして、もうひとつは、同じ野菜や果物でオーガニックの商品とノンオーガニックを置かないということです。

極端すぎるかもしれませんが、地域に密着したローカルのスーパーマーケットであれば、売場の敷地面積もそこまで広くないため、仕入れ・陳列できる野菜や果物の種類も限られていることと思います。オーガニックのキノコしか仕入れられなかった場合は、オーガニックのキノコのみを置く。必ずしもオーガニックとノンオーガニックの二者択一をさせなくても良いのではないでしょうか。

実際、小さなスーパーマーケットに足を運ぶと、そのような売り場は存在しています。品揃えは、日々の仕入れ状況によって異なることですから、そこは思い切って実施しても問題がないように、消費者としても感じます。

プラスチック製の包装は何のためか?

「野菜や果物などのプラスチック製の包装は、そもそもなぜあるか」を考えてみたことはありますか?

ビニール袋に入っていることで、野菜や果物が多くの人の手に触れることがないので衛生的で良いかもしれません。また、プラスチック製のパッケージやトレイに入っていることで、実が傷つきやすい野菜や果物は、守られているのかもしれません。

しかし、昔ながらの八百屋や農家直販の市場などでは、そのままむき出しで売られていますよね。

なぜプラスチック製の包装をするのかを考えてみると、やや小売店の都合のような気もしなくはありません。

英国では一般的なのですが、野菜や果物でもパッケージに賞味期限が表記されています。そのため、陳列の際など管理しやすい。また、 単品ではなく、ある程度まとまった個数を販売することで客単価を上げられる。そして、棚持ちが良くなるということでしょうか。

例えば、バナナはビニール袋に入れないで陳列すると傷みやすくなります。つまり、プラスチック製の包装を止めることで、売り物にならないような傷んだ野菜や果物が増え、食料廃棄物が増えてしまうという懸念点もあるかもしれません。

ただし、そこは仕入れ管理でうまく調整できないものでしょうか。また、スーパーマーケットで売り切れなかった食材を調理し、デリのような出来合いの食品を販売すれば、その店舗ごとで食料廃棄物を減らすことができると思います。

そして、日本のような少子高齢化社会では、世帯人数が少なく、少量の食材を必要な分だけ購入したいという需要も多いかもしれません。

プラスチックを減らすことを表明したイギリスのスーパーマーケット

イギリスで4番目に大きい、500店舗弱あるチェーンスーパーマーケットのモリソンズ(Morrisons)は、2025年までにPB(プライベートブランド)のビニール袋包装に関して、再利用やリサイクルできる、または、堆肥できる素材の包装に変更していくと表明しています。

それでは、どのようなことを具体的に進めていくのか見てみましょう。

・店内の魚や肉売り場のカウンターでは、消費者が持参した容器に入れることを許可すること。
・全てのPBに不必要なプラスチック製の包装がないか見直すこと。
・複数の店舗で野菜や果物のビニール包装を試験的に取りやめること。
・リサイクルが可能なパッケージに移行する。具体的なことの一例として、魚や肉のプラスチックのトレイの使用を2019年までに段階的に廃止すること。

このように掲げています。

そして、モリソンズでは、既にプラスチックのストローは仕入れていなかったり、綿棒の棒部分はプラスチック製のものではなく、紙素材の綿棒のみを仕入れていたり、ごみ袋として代用できそうなビニールのレジ袋は廃止したりと積極的に実施しています。
(出典:Packaging News

プラスチックのごみの問題は、全世界が行動しなければならないのです。消費者のひとりひとりが、どんなにプラスチック製の容器・ビニール・ストローなどを買わない、使わないと気をつけていても、できることには限りがあります。

やはり、生産者や小売店が環境や地球に対して、しっかりとした倫理観を持って商売をすることで、回避・軽減できることがいくつもあります。ぜひ、日本の小売店も、海外のスーパーマーケットの動向なども参考にし、施策を立て実行して行くと良いのではないでしょうか。

この記事を書いた人

鈴木 聖佳(すずき さとか)

約8年間、東京にて化粧品業界商社兼メーカーに勤務、Eコマース、カタログ通信販売のマーケティング&法人営業に従事。2012年よりロンドンへ移住し、3年弱、金融業界で勤務。そして、日本と「繋げる」・日本に「伝える」を仕事にし、現在は、ネゴシエーター・フリーランスライターとして活動中。特にオーガニック・ナチュラルプロダクトの食品・化粧品に関するマーケットリサーチ、インサイドセールス、ライティングをプロジェクトベースで行っています。

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