ちょっと注目のキーワード!97%と5%の関係
2010年、「日本におけるオーガニック・マーケット調査報告書」(IFOAMジャパン発行)のアンケートで無作為に選んだ2,876人に「有機、オーガニックという用語を知っていますか」と質問。
97%の人が知っていると回答した。予想外の結果に調査メンバーは驚いた。内心「よしっ!」と拳を握り、叫び、喜んだのは私だけではないはず。
言葉の認知度は高く、十分に浸透しているといえる。データはないけれど、10年前と比べると、感覚値では雲泥の差だ。
思い返せば、この10年の間に食に関してはスローフード、ロハスといった大きなブームがあった。その中身はオーガニックと相通じるものがあり、ブームゆえに言葉としての勢いは衰えているが、その価値はまだ息づいている。 オーガニックもブームらしきものはあった。しかし微妙におとなしかった。一世を風靡するとか、世の中を席巻するというほどの盛り上がりや熱は感じられなかった。
なぜか?
オーガニックは有機と併用して使われている。有機は有機JASという法律として生まれもした。こうなると消費者には何となく専門的で難解な、理屈っぽい匂いがして、ちょっと距離を置く感覚が芽生えるものだ。事実、97%の人が知っていると回答したけれど、正確に理解している人は5%にとどまった。一瞬「アレー!」と声を出して天を仰いだ。
けれども、これはこれでいいのではないか。この歩みの遅いのは否めないが、確実に前進、成長しているのだと思い直した。有機、オーガニックは価値観や美意識を、そして生き方までも変えてしまう意義とエネルギーを持ち合わせている。だから時間はかかる。そして日本では、草の根的活動が生い立ちなのだから「遅いのもよしとしよう」と思えてきた。
視点を変えれば、ブームにならず、ゆっくりと広がっているからこそ、オーガニックはまず言葉としての市民権を得た。これは重要だ! そして、これからは理解の深さだ。その速度は個人差はあるものの、言葉が定着している以上、何かのきっかけでその魅力に触れる機会さえあれば「オーガニックってうまいじゃないか、いいじゃないか!」と気づいてもらえるはず。5%が20%になるのも、60%になるのもあとは時間の問題だ。これまでもそうであったように一歩一歩かなと。
もちろんいまやれることはやる。ということで「気がついたらオーガニック」はじめます。
この記事を書いた人
山口タカ
大分県佐伯市出身 や組代表 クリエイティブディレクター(編集制作/マッチングコンサル) オーガニック、アウトドア、食育をテーマに活動。1997年に日本初の一般消費者向けのオーガニック専門誌「ORgA(オーガ)」創刊。 2001年に「オーガニック電話帳」を自費出版。以来、”ひとり出版社”と称してオーガニックの普及をライフワークとし、全国の篤農家や食品メーカー、レストランなどを取材している。漫画「美味しんぼ」第101巻“食の安全”をコーディネートし、作中に“有機の水先案内人”として登場。2020年4月、「東京オーガニックレストラン手帖」を辰巳出版より刊行。