先月、ORGANIC PRESS編集長にメールで原稿を送ったときのことです。返信メールの中に、こんな質問がありました。

「いわゆるセルフの量り売り、バルク販売って、どんな感じですか?通常通りか、あえて中止して、全部パック入りとか?日本の普通のスーパーでは、自分でトングを使ってとっていた総菜売り場も、全部パック入りになっています」

「えっ、そこまで?!」と正直、驚きました。ドイツでも、外出自粛によるプラスチックごみの増加が問題になっています。しかし、量り売り販売を中止するという話は、耳にしません。すぐにでもドイツの様子をレポートせねば!と、予定していたコラムを、急遽変更することに。というわけで、今回は、ドイツの量り売り専門店の動向について紹介します。

以前と変わらぬ量り売りスタイルを維持

結論から言うと、通常通りの量り売り販売を行っています。ただし条件つきで。

デュッセルドルフ市内にある量り売り専門店・Unverpackt Düsseldorfに足を運んでみると、店内はなんら変わらない様子に見えます。

しかし、まず初めにお客さんがすることは手の消毒。そして、持ち込み容器の重さをはかりで確認し、容器もしくはガムテープに手書きします。通常なら、ボタンを押してバーコードラベルを印字するところですが、今は禁止されているからです。

はかりや消毒用ディスペンサーが置かれた台の前には、買い物のルールをまとめた貼り紙がある。はかりには「ボタンは押さないで」という注意書きも

買い物カゴは必ず利用。そして、店内の一角に置かれた“清潔”と書かれた緑色のカゴから、スプーンやスコップ、じょうごなどを取り出して、量り売り商材のところまで持っていきます。詰め終えたら、用具は“使用済”と書かれた赤色のカゴに入れます。もし、別のものが欲しい場合は、新しい用具を使わなくてはなりません。

洗浄済みの量り売り用具が入った箱が、入口脇に置かれている

使用済み用具を返却する箱が、レジ横に置かれている

実際に買い物をしてみると、いつもよりひと手間もふた手間もかかります。他にも、レジ前の床には会計待ちのラインがひいてあったり、入店人数は最大5人までと決められていたりと、細かいルールがあります。これを面倒に感じて、買い物に来る人が減るのではないかと心配になるほどです。

しかし、訪問した日は、入れ替わり立ち替わりにお客さんが入ってきて、人が途絶えることはありません。手慣れた様子で、持参した容器に食品を詰め、人によってはカウンターでパンも注文して、カゴいっぱいに買い物をしています。厳しいルールがあったとしても、この人たちにとって、量り売りショッピングは日常なのだ、と感じさせる場面でした。

量り売り専門店ならではのガイドライン

この店も加盟する、ドイツの量り売り専門店協会・Unverpackt e.V.では、感染防止対策として独自のガイドラインを策定。ドイツ政府がドイツ全土に接触制限措置を求めるガイドラインを発表した同日、3月22日に会員へ通達しました。

ドイツで、すべての食品小売店に課せられている感染防止対策(人と人との間隔保持や入店制限、こまめな消毒など)の順守は、量り売り専門店も例外ではありません。これに加え、量り売りならではの特徴をふまえた“追加の措置”を、このガイドラインでは定めています。

今回、同協会にガイドラインの内容について問い合わせたところ、こころよく開示してもらえましたので、こちらで紹介したいと思います。

≪量り売り専門店における感染防止対策のガイドライン≫

  1. 感染防止対策について目立つところに貼り紙をする
  2. レジ前では間隔をあけるために印をつける
  3. 買い物をしない付添人は外で待つ
  4. 子供は同行してもよいが、親の監督下におく
  5. 入口には消毒用ディスペンサーを設置し、すべての客が手の消毒を行う
  6. レジには従業員が使う消毒用ディスペンサーを設置する
  7. 手の消毒に用いる消毒液は、コロナウイルスに対する有効性を重視して選ぶ
  8. すべての従業員がシアバターなどのハンドケア製品を自由に使えるようにする
  9. 手に傷やひび割れがある従業員は手袋を使う
  10. レジやカウンターで間隔保持が出来ない場合は、バリアを設置する
  11. 手が触れる場所(ノブ、ハンドル、レバー、スコップ、かご、キーボード、マウス、受話器など)は、毎日消毒する
  12. カード払いを推奨する
  13. 試食は避け、テスターは置かない
  14. 客から提供された容器を、消毒なしで次の客へと渡さない
  15. 子供のおもちゃは撤去し、プレイスペースは閉鎖する
  16. イベントは中止する
  17. カフェやビストロエリアは閉鎖する
  18. 固定のチームでシフトを組み、店舗をまたぐ従業員の移動はしない

(Unverpackt e.V. 提供、筆者訳)

Unverpackt Düsseldorfの店内

いくら対策をほどこしたとしても、目に見えないウイルスとの闘いは、量り売り専門店にとって、逆境であることには変わりありません。

ドイツの製品テスト誌・ÖKO-TEST(エコテスト)は、「量り売り専門店での買い物は安全なのか?」というタイトルの記事をオンラインで掲載(4月2日付)。量り売り専門店を取り巻く状況について報じました。この記事の中で、量り売り専門店協会の代表をつとめるGregor Witt氏は、こう話しています。

「量り売り専門店での買い物は、以前のように安全で、心配する必要はない」(Witt氏)

記事によると、ロックダウン中、一般的なスーパーやドラッグストアで品薄だった小麦粉やドライイースト、トイレットペーパーなどを、量り売り専門店では買うことができました。そのため、客数が伸び、売り上げを伸ばした店も多かったそうです。

「コロナがあるとしても、私たちはゴミ削減や気候変動といったテーマから目をそらしてはいけない。現在の政治的、社会的な柔軟性が、おそらくパラダイムシフトを生み出し、新しいサステナブルな経済へつながっていくことを期待している」(Witt氏)

この力強い言葉に、環境問題をおろそかにしないドイツ人の姿勢が何よりも表されています。

同協会にガイドラインについて問い合わせをした際、返信メールには「4月から制限が緩和され、売り上げが下がってきている」と書いてありました。しかし、キャンペーンなどで売り上げを取り戻す準備をしているそうで、終始、前向きな姿勢が印象的でした。

ドイツの量り売り専門店は、強い信念のもと、ウィズコロナの時代を生き抜いていくことでしょう。

この記事を書いた人

神木桃子(こうぎももこ)

ドイツ在住オーガニックライター
オーガニック専門店を運営する会社での販売・バイヤー職、地域産品のコンサルタントや販売を行う会社での営業・バイヤー職を経て、2014年秋よりドイツに移住。商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積んだエキスパートならではの視点で、ドイツのオーガニック&サステナブル情報を発信している。3歳になる娘を子育て中。

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