2021年9月に発刊した「食育入門」に30ページ増で改訂版を出版。とくに第3章としてオーガニック給食最前線レポートを加えました。

コロナ禍の3年間で世の中が大きく変化しているけれど、実は何がどう変化したのか、しているのか、これからより具体的にその正体が見えてくるのだろうと思う。

そして食を中心に据えて周りを見回すと、より鮮明に見えてくるものが数多ある。

「新食育入門」は、その気配をいち早く察して、日常生活に安全策を取り入れる準備をするテキストでもあり、おのずと食育とオーガニックの親和性とその重要性に気づく構成になっています。

近未来の食卓風景

30年後と言うと食育基本法施行から48年、約半世紀ということになる。

小中高校で食育授業をはじめて受けた世代が50代で親になっていて、その子どもたちが2代目として食育授業と家庭での食育を受けている頃となる。

いまの世の中は目まぐるしく変化するので30年後の予想は難しい。しかし人の意識、価値観が変化し、社会がその様相に塗り替えられるには時間がかかる。そして、文化として根づくにはそれなりの時間と出来事のプロセスが存在する。

食育とは「心のある人」に育てるのが、大きな目的のひとつである。食育のあるべき姿がここにある。

「心のある人」とは、世の中のために、人のために働き、人に寄り添うことができる人をいう。相手の気持ちを推し量ることのできる人。ものや生き物、そして自然に寄り添うことのできる人だ。その心を育てるのは、愛情あふれる親子関係であり、家族であり、家庭の食卓である。ゆえに家庭が社会の基本の場となる。

食育の三つの柱のひとつ「共食力」は、家族が食卓を囲むことを意味しているが、核家族の時代では家族に限定する必要はない。

給食がそうであるように、これからは老若男女、市民同士がともにテーブルを囲む場を作ることを提案したい。

それはみんなで田畑に入って米や野菜を作り、料理して、いっしょに食べる共働・共同作業も含めたい。自然と触れ合うなかで自分の手で野菜の命を育て、家族や仲間と一緒に料理し、感謝してその命をいただく。

その過程の共同作業で子どもはお年寄りを気づかい、お年寄りには子どもに社会を担う人としてのルールを伝える場となる。そして、お互いが寄り添うことができる。子ども同士、大人同士も同様だ。心の通う食卓で人を育てるコミュニティを創出できるのではないだろうか。

30年後、そんな風景が当たり前になっているなら幸いだ。

この記事を書いた人

山口タカ
大分県佐伯市出身 や組代表 ジャーナリスト&クリエイティブディレクター(出版/マッチングコンサル) オーガニック、アウトドア、食育をテーマに活動。1997年に日本初のオーガニック専門誌「ORgA(オーガ)」創刊。 2001年に「オーガニック電話帳」を自費出版。以来、”ひとり出版社”と称してオーガニックの普及をライフワークとし、全国有機農家や食品メーカー、レストランなどを取材している。漫画「美味しんぼ」第101巻“食の安全”をコーディネートし、作中に“有機の水先案内人”として登場。近著に「東京オーガニックレストラン手帖」(辰巳出版)

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