GOTS round table
真の持続可能な社会へ。働き方をオーガニックに考える。
「パネルディスカッション」
■主催:GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)
■協力:JOCA(日本オーガニックコットン協会)
■開催日時:2018年1月10日(水)17:00~18:45
■場所:ナヴァー(navarre)
■モデレーター
三好 智子 氏
GOTS地域代表、IFOAM Asia 理事
■パネリスト
福井 佑実子 氏
株式会社プラスリジョン代表取締役、農林水産省6次産業化プランナー、有機JAS検査員・判定員
尾山 優子 氏
一般社団法人環境パートナーシップ会議 事務局長
GOTS round table「GOTS プレカンファレンス報告」に続き、ディスカッションへ。
キーワードは、
・不平等と持続可能性
・ものづくりと働く環境
・SDGs
・責任ある調達
・オーガニック3.0
最近、ようやく日本でも「SDGs」が、共通の言語として浸透しつつある印象です。企業が「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」を自社の経営に取り込もうという動きも見えてきました。そんな中、「オーガニック」は一般の人にはどう認知されているか?というと、いまだに農薬を使っている、使っていないの話に終始してしまうレベル。「オーガニック」は栽培方法だけをさすのではなく、持続可能な社会づくりのために世界を変えることができる、社会課題を解決する視点を持っています。
あらためて、おさえておきたい「オーガニックの4つの原理」とは
◎健康の原理 (Principle of HEALTH)
◎生態的原理 (Principle of ECOLIGY)
◎公正の原理 (Principle of FAIRNESS)
◎配慮の原理 (Principle of CARE)
これらは、持続可能な社会づくりという大前提のもとにつくられた原理です。
これから日本でも、オーガニックは農薬云々だけではなく、広義で持続可能な社会福利(福祉)、生き方であることを考えていく必要があるでしょう。
「平成29年版障害者白書」から見た数字では、身体障害、知的障害、精神障害の3区分において、障がいのある方の数は850万人を超えます。ちなみに、これらは障害者手帳ベースの統計となるため、統計上には表れない「発達障害」などは含まれていません。この850万人のうち、350万人ほどが就労対象人口。これから高齢化が進み労働生産人口が減っていくで、職を求めている障害のある方々の活躍できる場があれば、持続可能な社会につながっていくのではないでしょうか。
また、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催にあたり、ますます「オーガニック」「福祉」などは大きなキーワードとしてクローズアップされていくでしょう。東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会において、「持続可能性に配慮した調達コード」基本原則 のなかで「障がい者の権利尊重」についても盛り込まれており、また、「持続可能性に配慮した農産物の調達基準」のなかでは、有機農業により生産された農産物、障がい者が主体的に携わって生産された農産物の推奨についても盛り込まれています。
※「持続可能性に配慮した調達コード」「持続可能性に配慮した農産物の調達基準」
参考:東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式ウェブサイト
https://tokyo2020.jp/jp/
画像:IFOAM
https://www.ifoam.bio/en/
これにより、「農福連携」という言葉もまた2020年に向け、これから多く聞かれるようになるキーワードになると思われます。ただ単に福祉と連携すればいいという話ではなく、「持続可能な社会」につながっているかどうか?オーガニック3.0の視点で評価する必要があります。
「オーガニックな働き方」を考えるうえでは、IFOAMが策定した5つの分野20項目のチェックポイントからなるガイドライン、「BEST PRACTICE GUIDELINE FOR AGRICULTURE AND VALUE CHAINS」、このサスティナブルフラワーの、Society(社会)の部分が一番関係してくるのではないでしょうか。(福井氏)
Society / 社会
・Equity & Gender 公平性&男女平等
・Right Livelihood 妥当な生活
・Lobar Rights 労働者の権利
・Safety & Hygiene 安全&衛生
オーガニックは、とても生活に身近で衣食住に沿っているもの。自分がそれを選択することで、持続可能な社会に寄与できる、自分の行動によって社会を変革できるというのはとても希望のある話だと思います。(尾山氏)
「SDGs(Sustainable Development Goals)」の17のゴールは、ベースとなっているのは「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」。世界中にオーガニックだけではなく、環境分野、人権、労働、貧困、格差も合わせ様々な持続可能な社会に向けて活動している団体や、想いをもつ人、政府、機関など、その人たちがこれまでの行動原理を見直すことで、もしかして隣にいるかもしれない人との出会いによって、持続可能な社会に近づけるのではないか?それが2030アジェンダであるというのが私の理解です。17のゴールは確かに目標ではあるけれど、そのために自分たちの行動を直す、のではなく、見直してみる、思い返してみるということ。それにより、「オーガニックの世界の人たちと一緒にやったら、こんな新しい世界が待っているかもしれない」と思えるのではないでしょうか。もうそのことだけでSDGsはいいのではないか、とも思っています。(尾山氏)
***
今回のディスカッションでは、参加者からは多様な視点や意見が飛び交いました。一層広く多岐に及ぶ視点で持続可能性を追求する段階に来ていると思います。
今、一般的に理解されている”オーガニック”はエコロジー、環境面への配慮が強く、本来果たせる役割のポテンシャルはもっと大きいと理解しています。
オーガニックを作る側も使う側も”文化”や”経済”、そして今回のキーワードでもありました”社会責任”=公平性&男女平等・妥当な生活・労働者の権利・安全&衛生へのアクションへともう一歩踏み込んで行けたら、SDGsの達成と持続可能な社会に向けてよりインパクトを持たせられると思います。
オーガニックはそういう意味で多くの個人や企業に使いやすいツールだと思っています。
(三好氏)
Photo by:廣瀬真也(spread)
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。