2018年11月30日(金)、在日フランス大使館主催の討論会「日本のビオ市場 2018」が開催されました。日仏双方のビオ(オーガニック)業界関係者6名が討論会に参加し、3つのテーマに沿ってそれぞれの体験談を共有。双方向的に意見が述べられました。モデレーターを務めたのは山口タカ氏。本討論会のビデオプログラムが公開配信されました。
「ビオとは」
日本におけるビオの歴史は1970年代「提携」として始まりました。これは、消費者と地元生産者との広範囲なパートナーシップ・ネットワークのことです。
日本では2001年には、有機JAS認定が始まりました。
「ビオ」の概念
“農薬や肥料を極力使わない、自然な農産物”は、長年様々な現状を経てきました。
今日フランスなどの他の先進国において有機農産物は食品市場全体の14%に達していますが、日本の有機市場はまだまだ少ないと言えます。
ここでは、日仏両国の専門家が、日本におけるビオとその将来について総括いたしました。
※このイベントは、フランス農業・食料省によって支援されています。
■討論1:BIOを理解する ~ Qu’est-ce que le bio
1つめのテーマは「BIOを理解する」。フランスでピレネー子羊を育てるFabienneさん、農薬や化学肥料・除草剤も使わず野菜を育てる須賀さんに、生産者の立場からご意見を伺いました。今日、ますます世界で拡大傾向にあるBIO。このような農法は時代に逆行している?また、ビオで人々を養っていけるの?ビオ製品と慣行品との違いとは?農薬、または除草剤を使わない栽培方法とは?
ー今日、ビオは益々世界で拡大傾向にありますが、これは時代の逆行になるのか? またビオは今後人々を養っていけるのでしょうか?
« Aujourd’hui le bio se développe de plus en plus, est-ce un retour en arrière ? Comment allons-nous nourrir la population ? »
―イノベーションと高い技術を必要とするビオ農業は、時代に逆行するのではありません。
高いレベルの技術欲が必要となり、農業従事者に寄り添っていかなければなりません。
ビオをやるには支援が必要です。(FABIENNEさん)
―現在の人々の暮らしは非常に高度になって、逆に自然からかけ離れた環境に暮らしています。そのような背景の暮らしている人がビオを見たら、昔返りのような感覚を受けると思いますが、有機栽培は決して時代を逆戻りするものではないと、私も思っています。(須賀氏)
【スピーカー】
Mme FABIENNE GILOT (filiére agneau des Pyrénées)
・ピレネーの子羊の生産者
・150の畜産農家
・年間8,000匹の子羊の生産
須賀 利治氏(有限会社豆太郎 代表取締役)
■討論2:健康と食品 ~ Santé & alimentation
2つめのテーマは「健康と食品」。ビオ製品は消費者にとってより安全なのか?その栄養価と味は?ビオセボンのアジアのディレクターを務めるPascalさん、代々木上原でビーガン、マクロビオティックを取り入れた和菓子屋を営む黒岩さんに伺います。
ー「ビオ製品は消費者にとってより安全かどうか?」
« Les produits bio sont-ils plus sains pour les consommateurs ? ≫
―消費者は良いものを食べるためにビオ製品を買います。
アメリカの医学雑誌により調査、実証が行われました。
ビオを食べている方はがんになるリスクが低い。(Pascal氏)
―ありとあらゆるアレルギーを持った方が、次々お店にいらっしゃる。
お母様のお腹の中にいるときに、何を食べていたかとか、たぶんそういったことにつながっていくのではないかなぁと。
身体って食べ物でできていますから。(黒岩さん)
【スピーカー】
M. Pascal Gerbert-Gaillaed(Bio c’ Bon Japon Co.LTD.)
・フランス発祥でヨーロッパで170店舗
・現在日本では7店舗展開
・2020年には50店舗展開を予定
黒岩 典子氏(和のかし巡 代表 / 菓子職人)
■討論3:農業と環境、挑戦 ~ Le grand défi planétaire
3つめのテーマは「農業と環境 チャレンジ」。ビオ農業の収穫量は十分なのか?なぜ、ビオは高いのか?日本における有機農業の現状。地球の未来におけるビオ農業の役割とは?フランスよりBIO穀物生産者のPierreさん、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやの創業を手がけた、有機農産物流通の第一人者、徳江さんにお話を伺います。
ー「ビオ農業の収穫量は十分か」「なぜビオ製品は従来品よりも高いのか」「日本におけるビオ農業の現状は」「地球の未来におけるビオ農業の役割とは」ー
« L’agriculture bio a-t-elle des rendements suffisants », « Pour quelle raison les produits biologiques sont plus chers que les produits conventionnels », « Quelle est la situation de l’agriculture bio au Japon ? », et « Quel rôle de l’agriculture biologique pour l’avenir de la planète »
―従来農業に比べ、ビオは収量がどうしても少なくなります。作物にもよりますが、窒素がより必要な作物、穀物、とうもろこしなど30~50%収量が少なくなります。しかしながら、世界の食糧問題は、ビオ、従来農法だからという問題ではなく政治的影響によるものも多く、それも世界中に耕していない農地栽培の仕方が悪い農地が多いのです。(Pierre氏)
―どうしてビオ製品が高いかというと、手間がかかるから。そしてヘクタール当たりの収量がビオは低いので、農業従事者としてはその分高く売るしかないことになる。でも、ビオは化学製品を使わないのでその分人々の健康を維持できる。汚染水の除染、農家の人々の除染が必要なく、社会全体がかかるトータルコストを考えれば従来の方法に比べてビオの方がよりコストがかかるということはないと思います。(Pierre氏)
―何故高いのか?
事情はフランスも日本も同じだと思います。
特に日本は有機農業は中山間地での農業も多く、経営規模が小さい。小さいので売り先も個別になる。また、日本は物流費が圧倒的に高い。有機というのはコストが高くなる構造のなかでやってきたといえるし、差が出るのは当然のこと。(徳江氏)
大事なことはコストに対して、どういう価値を認めるか、その差に対して消費者がどう評価するのか?という問題。高いから売れないとかそういう話ではない。(徳江氏)
【スピーカー】
M.Pierre PUJOS (Agriculteur céréalier bio du Gers )
・シリアルビオ食品生産者
・農業従事者団体「AGRIVALEUR」のメンバー
・「アルブル&ペイザージュ」協会会長
徳江 倫明氏(一般社団法人フードトラストプロジェクト 代表)
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主催:フランス農業・食料省(Ministère de l’Agriculture et de l’Alimentation)
コーディネーター:や組 メディアプロデューサー 山口 タカ
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。