食のまちづくり条例、オーガニック憲章をつくり、オーガニックビレッジ宣言をしている大分県佐伯市。その海辺にある米水津小学校の5、6年生が地元の有機食材を使って給食メニューを作り、県内の学校、介護施設、病院のそのレシピを提供。これまでは食育の授業を受ける側だったのが、今度は食育を伝えるプレイヤーとなる体験となった。行政、学校、地元生産者、地元食品企業、市民が一緒になってサポートし、次代をになう子どもたちがプレイヤーとなった“食育とオーガニックの親和性”を象徴するモデルケースである。

親和性の顕在化により弾みがついた

農林水産省が2022年に「みどりの食料システム戦略」を発表した。2050年までに国内圃場の25%、100万ヘクタールを有機圃場にするという目標を掲げた。これは現在の約50倍に相当する。翌年には「みどりの食料システム法」として法制化した。

有機農業推進法は2006年に施行されたものの、国がそれ以上積極的に動く気配はないままだった。それが2022年に突然「みどりの食料システム戦略」を発表した。

オーガニック業界関係者にとっては耳を疑う、寝耳に水と言わんばかりのニュースとなった。

みどりの食料システム法が掲げる有機農業の成長は2030年から2050年まで急上昇を示している。目標が達成されたとき、日本の社会は、私たちの食卓はどんな風景になっているのだろうか。

ここで食育との関係性において注目したいのが「みどりの食料システム戦略」に明記された全国1700余の市町村に向け「オーガニックビレッジ宣言」の創出を促す活動である。

オーガニックビレッジとは有機農業の生産から消費まで、農業者のみならず食品事業者や地域の住民を巻き込み、地域ぐるみで取組みを進める市町村のこと。そして、有機農業の推進、拡大を目指しオーガニックビレッジ宣言する市町村を2025年までに100市町村、2030年までに200市町村を目標にした。

このプランは当初から自治体の関心度は高く順調な滑り出しを示した。そして2025年12月現在で154市区町村。目標は早々と達成した。この結果は2050年有機圃場100万ヘクタールに接近する原動力にもなり、有機(=オーガニック)の価値が一般的にも認められつつある兆しと考えられる。

しかしながら、いち早くオーガニックビレッジ宣言をした市町村といえども、国がそうであったように市町村行政もこれまで有機農業を積極的に推進していたわけではない。むしろノータッチのところがほとんどである。ゆえに指導するノウハウも情報も持ち合わせていない。

そこで多くの自治体は有機農業推進協議会的なものを行政(農林課、地域振興、食育推進など)と地元生産者、地元企業、学校給食関係者、一般市民の参加などで結成。その主たる活動内容は、有機農法を習いながら(有機農法はさまざまな種類があるのでどれを選択するかの検討が必須となる)、慣行農家の有機への転換、移住者への有機農業新規就農、耕作放棄地の有機圃場転換、有機農産物生産量拡大などそれぞれに目標値を定め、すべて同時進行でその振興を進めている。

困難を極めること必至であり、食育導入のときと同じように現場では手探りの活動が始まった。

オーガニック給食の登場

ここにオーガニック給食実現という目標が加わった。それは瞬く間に全国に広がっている。

すでにいくつかの自治体が有機農業を推進しながら、学校給食への有機食材導入を実施していたが、2022年あたりからオーガニック(有機栽培)給食の話題を頻繁に耳にするようになった。全国各地で“学校給食をオーガニックにしよう!”という声が上がり、大きな波となってうねり始めた。

その数は2022年に123市町村、2025年には278市町村になったと報告されている。その数は加速しながら増えている。

なぜこのタイミングでオーガニック給食が増えたのだろうか。

まず多くの自治体がこの目標を掲げたのは、誰にでもわかりやすく、イメージでき、誰も反対しないからだ。そして少ないながらも実現している自治体があり、視察して、地元でも実現可能と見込めたのである。それは難易度を落として供給量が少なくても段階的な供給が可能な手段を計画でき、行政、教育機関、企業、市民らがスタートから一丸となって活動できるからである。

食育活動に積極的な自治体ほどオーガニックビレッジ宣言に積極的で、オーガニック給食を掲げている傾向が強い。市民の意識に可能な限り安心・安全で環境にもやさしい地元の食材を、まず子どもたちに食べさせたいという思いが食育活動で育まれているからだ。そして、その選択肢にオーガニックの魅力と必要性が市民の意識に醸成されているからだろう。

ここから食育とオーガニックが連動し、親和性を深めている。

オーガニック給食を軸に普及すると予測

これまで給食費無償化が政治課題として浮上していたけれど、こちらは先に2026年4月から実施されることになったので、今後自治体はオーガニック給食に絞って活動できる環境になった。

そして、食育がこの20年間、草の根的にじわじわと浸透していることを考えると、オーガニック給食は食育の普及をベースに広がっている。また、見方を変えればオーガニック給食は食育とオーガニックのランドマークといえそうだ。

こうした背景から、オーガニック給食の達成目標となる内容(理想的な)を設定すると客観的な状況分析ができる。

例えば、目標を下記のように想定してみる。

1.食材が100%オーガニックであり、持続可能な生産―調理―供給インフラが完成。また、調味料においても100%達成している

2.地産地消で食材の100%達成。調味料、加工品はできる限り地元産を調達する 

3.アレルギーなどの子どもが安心して食べられるメニューを提案する 

4.農福連携による地元のソーシャルファームから食材調達を可能にする 
 
5.食べ残しゼロ、食品ロスゼロ、エコサイクルを実現する

上記の目標にどれだけ接近しているかを経年観測すれば、その地域の食育とオーガニックの普及状況がわかり、その後の活動内容をより具体的に計画できるようになる。それは生産量の増減、有機農家数と平均年齢、有機圃場面積、地域内食料自給率等の推移がわかり、オーガニックビレッジとしての普及活動に直結する。

そして、学校でのオーガニック給食に続き、社員食堂、学食、オーガニック弁当のデリバリーなども加えて、高齢者家庭やひとり親家庭、母子家庭、生活保護家庭、病院、高齢者介護施設などにも順次広げるビジョンを描けるようになる。

オーガニックの視点からは、地域で育まれた食育のノウハウがオーガニックとの親和性を高めながらオーガニックを推進し、食育とともに地域に根づいていく道筋を導き出すことができる。

最後に食育がそうであるように、オーガニック給食の推進は食の安全保障、食の安心・安全、次世代を育てるフードビジョンを描く草の根運動として声を上げた。それは国民運動となる可能性を持って広がっている。

まず、これから2030年までの5年間、オーガニック給食の広がりに期待したい。そしてオーガニック給食が当たり前になったと気づく瞬間に、目指す有機圃場100万ヘクタールにどれだけ接近しているか、人と社会の食への常識がどう変化し、どんなフードビジョンが描かれているのだろうか注目したい。

この記事を書いた人

山口タカ
大分県佐伯市出身 や組代表 ジャーナリスト&クリエイティブディレクター(出版/マッチングコンサル) オーガニック、アウトドア、食育をテーマに活動。1997年に日本初のオーガニック専門誌「ORgA(オーガ)」創刊。 2001年に「オーガニック電話帳」を自費出版。以来、”ひとり出版社”と称してオーガニックの普及をライフワークとし、全国有機農家や食品メーカー、レストランなどを取材している。漫画「美味しんぼ」第101巻“食の安全”をコーディネートし、作中に“有機の水先案内人”として登場。近著に「東京オーガニックレストラン手帖」(辰巳出版)

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