2017年11月、3年に一度開催されるIFOAM(国際有機農業運動連盟)世界大会がインド、ニューデリーにて開催されました。この大会期間にあわせて開かれた「GOTS pre-conference」の概要について、GOTS地域代表・IFOAM Asia 理事の三好氏より報告会が行われました。
GOTS round table
真の持続可能な社会へ。働き方をオーガニックに考える。
「GOTS pre-conference報告」
■主催:GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)
■協力:JOCA(日本オーガニックコットン協会)
■開催日時:2018年1月10日(水)17:00~18:45
■場所:ナヴァー(navarre)
■報告:三好 智子 (GOTS地域代表/IFOAM Asia 理事)
GOTS pre-conferenceの主な議題は、
・オーガニック認証における社会的責任の歴史と位置づけ
・持続可能な認定基準における社会的責任の重要性
・社会的責任における課題(生活賃金と最低賃金、ランド・グラビング、違反事項等)
・認証を超えて-Beyond Certification(認証制度への賛否、ディスカッション)
・認証制度とそれ以外の可能性
これからは環境負荷を減らすだけではなく、社会的責任や経済的発展もカバーされなくてはならないというのがスタンダードに。オーガニックの認証においてもこの「社会的責任」をどのような基準で、どのように評価していくか?が重要なテーマとなってきます。
では、その社会的責任を考えたときどのような問題があるか?低所得化が進行する中で、最低賃金が生活賃金に満たないことで、最低限の生活水準の維持が難しいという現状が多くの国でおこり問題視されています。賃金が低いということが、自殺を生み、難民を生み、社会情勢を不安定にする。このような状況下では、そもそも持続可能な課題解決に取り組む状況になくサスティナブルとは相反するもの。賃金を適正に払っていくということも、持続可能な社会をつくるうえでの大きなキーとなるのではないか?と考えられます。
今回のGOTSプレカンファレンスを受けて、
1.オーガニック基準を含む”サスティナブル基準”とその認証制度の中に、労働環境を向上させるための社会的責任の基準を設ける。
2.社会的責任(主に労働環境の向上や人権問題)への対応が出来るような適切なツールやアプローチを明示し、評価できる仕組みを作る。
3.アパレルブランドや小売業者が、繊維業界の持続可能性に対する責任を果たす為、効率的な手段を見つける。
この3項目が採択されました。
今、時代は「オーガニック3.0」へ。有機農業の先駆者たちによる理念の確立(オーガニック1.0)から、グローバル基準、認証制度の普及による有機市場の規模拡大(オーガニック2.0)を経て、これからは真のサステナビリティに向けて、貧困や飢餓、地球環境や生物多様性の保全といった持続可能性など、幅広い視点を持つことが重要であり、それは2015年国連で採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」と多くの共通点があります。
GOTS認証をこのSDGs17項目に照らしてみると、ほぼすべてが当てはまるのではないかと思われます。そもそもオーガニックは、これらすべてにおいての答えを持っている、ということは大きな強みであり、特徴の一つと言えるでしょう。
また、オーガニック3.0、真のサスティナブルを評価するために、今までは比較的エコロジーの部分が中心でしたが、今後気をつけるべき項目として
Ecoligy / エコロジー
Society / 社会
Culture / 文化
Accountability / 責任
Economy / 経済
この5つがあげられています。5つの分野20項目のチェックポイントからなる「サスティナブルフラワー」の全てがカバーされ、バランスがとれているということが、真のサスティナブルとして評価されます。
SDGsや真の持続可能な社会づくりなど、個人の範囲では大きすぎる課題のように感じがちですが、個人として手に取れる商品の”作られ方とその基準”が課題解決に直結しているとわかれば、商品を通じて世界共通の課題解決に個人が取り組める事が実感できるのではないでしょうか。また、オーガニックなものづくりをする企業等も、社会的責任への意識と取り組みを促進していく事で、SDGs達成そして真の持続可能な社会実現に向けて、より大きな貢献ができるでしょう。
Photo by:廣瀬真也(spread)
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。