出典:IFOAM European Organic Congress

先月、9月26-28日まで、スペイン、アンダルシア地方のコルドバにてIFOAM European Organic Congress(https://www.europeanorganiccongress.bio/)が開催されました。スペインで初めて開催され、しかも弊社の母体であるEcovaliaが主催するイベントというまたとない機会で、弊社からも多くのメンバーが参加し、私も勉強の為1日だけ参加させていただきました。

今回で17回目となるこのコンファレンスには、EUの議会の責任者、各国の農林水産省の担当者、私どものような認証機関の関係者、アメリカや中国等でEUのオーガニック製品を輸入する業者や機関、地域の人々にオーガニック製品を届けるプロジェクトを行っているデンマークのアソシエーションの代表者等、EU諸国を中心に、24か国からあらゆるバックグラウンドのが参加者が集まりました。

下記にて、コンファレンス終了後、IFOAM Europeから参加者宛に届いたメッセージの抜粋を日本語訳させていただいたものをご紹介させていただきます。

コンファレンスで話された主要なトピックのまとめです。

1.オーガニックの分野に従事する私たちには、今後地球環境をより良い状態に保ち、環境・社会問題に取り組むための一端を担い続ける、という明確な目標があります。有機生産を通じて、農薬を減らし、生物多様性を高め、土壌を改良させ、貯水量を増やす等、食糧システムを変革させることが可能です。

2.私たちが直面している生物多様性、環境、危機的な政治情勢等により、今後の状況を予測するのは困難であるといえます。現在、多くの国で選挙が実施されており、政治情勢は地球環境と共に変化しています。このような状況において、オーガニックが環境問題に対する体系的な解決策を提供し、多くの問題を一度に解決することが出来るという事を忘れてはなりません。

3.欧州委員会、欧州議会及び各国政府のパネリストやハイレベル・スピーカーは、気候の変化だけでなく、政治的な変遷に直面しているが、2030年までに有機農地を25%にするという目標は、依然として(気候変動に対する)解決策の一部であることに同意しています。

4.今回、パネリストの多くは、オーガニックの体系的なアプローチを繰り返し強調しました。オーガニック、有機生産は、気候変動や生物多様性の危機といった、複雑な問題に取り組み、土壌、水、生物多様性、環境と人間の健康に恩恵をもたらす食糧システムを包括的かつ長期的に公正に提供する手段です。

5.植物育種技術に関するパネルディスカッションでは、レジリエンス(回復力)は健全で多様な農業食糧システムから生まれると強調されました。新しいゲノム技術(遺伝子組み換え作物)の持続可能性についての主張は、まだ確定事項ではなく、農薬体制の増加、生物多様性の損失、特許の氾濫といったリスクを伴い、生産者や育種家(育種業者)の種子へのアクセスをますます困難にしています。有機育種は、自然界で利用可能なものを使用し、より多くの既存品種(そして生態系)をより強靭なものにしています。EUの規則は、生産チェーンの全過程におけるトレーサビリティの義務化と消費者表示を通じて、遺伝子組み換え作物を使用しない有機栽培を汚染から保護しなければなりません。

6.有機生産の開拓者の子(孫)達によるパネルディスカッションでは、自分たちの親がオーガニックの原則に心を寄せ、自分たちを育ててくれたこと、また、彼らの企業での世代交代をどのように実現しているかについてが議論されました。彼らは、世代を超えてこの分野に関わり、オーガニックの原則を共有する事の重要性を強調しました。

7.オーガニック・サプライチェーンにおける革新的な事例が数多く紹介されました。ポルトガルのビオディストリクト・イダーニャ・ノヴァ(EUオーガニック・アワード2023受賞!)やフランスの地域オーガニック・ラベルなど、注目すべき取り組みがあります。市場側では、サプライチェーンの公正性を高め、オーガニックの売上を増やし、消費者にオーガニックを購入するよう促すために、小売業者が取り組んでいる事について学びました。

8.オーガニック市場の拡大チャンスは沢山あります。政府はあらゆるレベルで持続可能な公共調達を促進することで、食品を調理する側、食べる側それぞれに多くの利益をもたらします(生態系のレジリエンス回復力を促します)。オーガニック、有機生産のセクターはEUの推進政策を利用して、EUの有機製品の認知度を高めることが出来ます。

9.Organic targets 4 EUプロジェクトは、2030年までに有機農地を25%にするというEUの目標を達成するためのモデルを作成してきました。様々なモデルがあるにせよ、プロジェクト参加者は、オーガニック、有機生産セクターの成長は、有機の原則に沿って行われるべきであるという点で合意しました。

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以上抜粋終了(引用:IFOAM Organic Europeメッセージ)

前回の下名の投稿にてお伝えしました通り、グリーンディールの目標の達成には、有機農業の拡大が必要不可欠となり、そのためには行政が生産者に提供する経済的支援についての政府の政策が深くかかわっています。しかし、このIFOAMの議会において、政策の変更により、当初掲げた目標を達成するのが難しいとの判断を下している国がいくつかあるとの報告がありました。政策を変更しながらも有機生産を推進するという方向は変わらないとの事ですが、どうなるでしょうか。

次回はスペイン政府での取り組みについてお話させていただきます。

この記事を書いた人

大谷由美子(おおたにゆみこ)
兵庫県出身。2000年よりスペイン・セビリア在住。スペインの文化に興味を持ち、語学留学。のちに現地の語学学校に就職、17年半に渡り外国人向けスペイン語コースのプロモーションに従事。大好きなスペインと日本の橋渡しをすべく新たな可能性を模索する中、日本でのスペインの食文化のブームや人々の食に対する安全や環境保護への関心の高まりを受け、スペインの食品産業に注目。徹底した品質管理が行われた、安全でクオリティーの高いスペインの有機生産物を認証し、国内をはじめ世界に届けるための一端を担う事ができるCAAEに転職。有機JAS認証の窓口を皮切りに新しい分野での業務に日々研鑽を積んでいる。

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