2019年のイギリスのオーガニック市場総売上は来年に発表されますが、中間報告では昨年よりも、さらに市場が伸びていることが既に分かっています。2018年のイギリスのオーガニック市場の売上は、22億ポンド、2017年より6%成長しています。この市場規模の13%は、オンラインショッピングによる自宅への配送が占めていると言われています。今回は、オーガニック食品の宅配サービスをしているRiverford (リバーフォード) について、フォーカスします。

Riverfordの創業者, Guy Watson

Riverfordとは

創業者のGuy Watson(ガイ ワトソン)は、Devon(デボン)の農場を1950年代に引き継ぎ、1986年に有機農業への転換を成功させました。当時、農場で収穫した野菜を30箱程度の箱に詰め、地元に住む友人などへ手押し車で配達していたそうです。オーガニック野菜の宅配ボックスの需要が増えるにつれ、Guy Watsonの理念に共感してくれる他の農家を見つけることが必要となりました。そして、現在はデボンの農場以外にハンプシャー、ケンブリッジシャー、ヨークシャーの農場と組み、Riverfordファームとして、それぞれの地で収穫した野菜や果物を、梱包および配達しています。そして今日では、英国各地に週47,000箱程度を配達するようになりました。

Riverfordベジタリアンレシピボックスの内容量一例

Riverfordの品ぞろえ

青果物、肉はもちろんのこと、乳製品・卵・ワイン・ジュース、パンや調味料など一部仕入れ食品の販売もしています。そして、メインの宅配ボックスだけでも種類が豊富です。

●<レシピボックス>・・・いわゆるミールキットです。作りたいレシピを選択肢から選び、そのレシピで使用する食材がセットになって送られてきます。

●<野菜・果物・サラダ・スープー・肉のボックス>・・・世帯人数に合わせて食品の量が小・中・大・特大の4サイズから選べ、野菜とフルーツで9種類のボックス、またサラダ・スープ・肉で9種類の組みボックスがあります。食品の量が異なるだけでなく、箱に入っている内容もそれぞれのボックスの種類によって異なります。

箱の中身は?

今回は、2〜3人分の野菜&果物ミックス宅配ボックスを注文しました。紙袋に入ったじゃがいも(6個)、玉ねぎ(3個)、サボイキャベツ、ラディッキオ、チェリートマト、チェスナッツマッシュルーム、りんご(8個)、みかん(12個)、パイナップルでした。すべてオーガニックの農作物です。これで送料込みの17.85ポンド(11月20日現在の為替相場で2505円程度)です。

内容に関しては週ごとに更新されており、その週に何が届くか事前に把握できます。ただし、それぞれの内容量は書かれていません。

普段買い物をしているオンラインスーパーマーケットと比較して

【新鮮さ】
オンラインスーパーマーケットや店頭で買うじゃがいもは、芽が出ているものがあります。今回は全く芽が出ておらず、硬くて皮がしわしわとしていなかったです。農家から直送ということで、じゃがいも以外もとても鮮度が高かったです。

【おいしさ】
正直、りんごだけはやや残念でした。理由は、日照量が少ないイギリス産のりんごだったからか、りんごの種類が異なるからかわかりませんが、先日イタリア産のおいしいりんごを食べたばかりだったためでしょうか。それ以外はおいしく頂きました。

【価格】
ベジタブルボックスは、スーパーマーケットで購入するより安い!とRiverfordもうたっているので、実際に計算をしてみました。必ずしも同じ種類の野菜や大きさとは限りませんが、近いものを選択して比較すると、確かにRiverfordの方が3ポンド程安かったです。また、りんごやみかんは、スーパーマーケットで売られている1袋よりもたくさん入っていたので、随分とお得だと感じる量です。

サービスのポイント

エリアごとに配達の曜日が振り分けられており、配達先住所のポストコードを入れると次回の配達日がウェブサイトに表示され、オンライン注文をする形です。

そして、「本日、夜11:45までであれば、追加注文ができますよ!」というリマインドが配達日の2日前にメールで届きました。買い忘れや献立の変更にも対応してくれる食品宅配サービスは、とても嬉しいですね。

もうひとつ良いな!と思ったのが、たった2枚の同梱チラシです。これは、ミニマムだと思いませんか?日本の食品宅配サービスのように、不要なチラシがたくさん入っていないところに、何故だか好感を抱きました。過剰な商売っ気を感じないのは、野菜の作り手が始めたビジネスだからなのでしょうか。

同梱されたクリスマスのチラシは四つ折りになった状態で、もうひとつは二つ折りの見開きです。そちらには、なんだか心が温かくなるような創業者のコラム、ボックスの中身について、その野菜や果物の保存の仕方、調理の仕方、レシピが書かれています。

普段、オーガニック食品を幅広く取り扱うオンラインスーパーマーケットで買い物をしていますが、毎週買うものは似たり寄ったりになってしまいます。しかし、このボックスで食材の選択肢に幅を広げ、いつもと違うレシピで食材を調理するのもバラエティーに富んで食卓が楽しくなりますし、子どもが居る家庭では食育にもなると感じます。

Riverfordでは、100%イギリスで育った野菜だけを詰めたボックスを販売しているように、エシカルな視点で見ればローカルで作られた季節のものを食べるのが理想です。しかし、彼らは豊富な食材を消費者に届けることも大切にしており、季節や気候の関係でイギリスでは栽培できないバナナやパイナップルなどは国外より輸入をしています。しかし、CO2排出量を抑えるため、空輸便は一切使わないポリシーを持っており、全てが陸や海を介しています。

Riverfordデリバリーバン

そして、なによりも無駄なプラスチック包装がない食品を買えることが喜びになりました。

毎週玄関まで届けてくれるオンラインスーパーを利用しているので、玄関先で食品を受け取るということは珍しくないのですが、今回、丁寧に詰められたRiverfordの青果物を箱で受け取り、まるで母親や祖母が使用していた宝石を譲り受けるような感覚に似ているように思いました。

それは、プラスチックのありなしだけが理由なのでしょうか。それとも作物をつくる農家の思いが感じられたからでしょうか。箱から野菜や果物を取り出すとき、なんだか大切に扱いたくなりました。これまでのオンライングロッサリーショッピングとは違い、食材を買うという行為がなんだか特別な体験となりました。

オーガニック食品を販売している老舗のひとつとして、ずっと気になっていましたが、今回新しいトライをしてよかったと思っています。そして、その日のうちに翌週の注文を既に済ませるほど、私はすっかりRiverfordのファンになってしまいました。

この記事を書いた人

鈴木 聖佳

約8年間、東京にて化粧品業界商社兼メーカーに勤務、Eコマース、カタログ通信販売のマーケティング&法人営業に従事。2012年よりロンドンへ移住し、3年弱、金融業界で勤務。そして、日本と「繋げる」・日本に「伝える」を仕事にし、現在は、ネゴシエーター・フリーランスライターとして活動中。特にオーガニック・ナチュラルプロダクトの食品・化粧品に関するマーケットリサーチ、インサイドセールス、ライティングをプロジェクトベースで行っています。

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