都内にも3店舗あり、世界15カ国に40店舗を持つ、イタリア食品を取り扱うEataly(イータリ―)が、2021年4月29日、イギリスのロンドン市内にオープンしました。世界最大級の敷地と言われているこのEatalyには、以前より私が注目しているNatoora(ナトゥーラ)も入っています。

このNatooraのミッションは、現代の工業型農業やサプライチェーン流通によって脅かされている果物や野菜の種子の品種、栽培技術、独自の風味を生かし、より意味のある、そして責任のあるフードシステムを作ることです。

彼らは、食品の未来をより良くするため、果物や野菜の供給に革命を起こすということに熱心に取り組んでいます。

世界の大都市である、ロンドン、パリ、ミラノ、ニューヨークで最も影響力のある1300人以上のシェフや家庭料理人とコラボレーションをして、果物や野菜に対する考え方、消費の仕方を変える取り組みもしています。

(写真:Natooraの内装、英国の地図表示があり、生産者のファーストネーム、どこでどんな果物や野菜が作られているかが分かる)

売り手が伝えるべきトランスパレンシーとは

Natooraで取り扱うものは、果物や野菜のもととなる種、土壌、栽培方法など、生産に関することすべてを把握しているものだけを取り扱っています。店頭でそれぞれの果物や野菜の細かい情報を開示することは物理的に難しいですが、ウェブサイトにアクセスをすると、事細かな情報開示がなされています。

例えば、こちらはBaby Black Aubergines(ベビーブラックオーバージーン) という品種のナスですが、生産者、栽培技術、農法、種子、旬の季節、風味、生産背景のストーリーが記載されています。これぞ、これからの時代、生産者と売り手に必要となってくる「トランスパレンシー」(透明性)ではないでしょうか。

(出典:Natoora公式ウェブサイト

独自開発したプラスチックフリーの容器

果物や野菜の梱包方法に革命を起こすため、独自チームを編成し、設計、農産物管理、食品安全の専門家を集めて、プラスチックに変わる持続可能な代替品を研究をし、完全にプラスチックを使用しない独自の革新的なパッケージを開発しました。

リサイクル可能な容器は、従来のプラスチック製フローラップと異なり、180日以内に分解し家庭用たい肥可能なフィルムでフローラップされています。

Natooraの果物や野菜を買うことができるオンラインスーパーマーケットOcado(オカド)では、すでに年間150万個以上のプラスチックパネットが除去されているようです。

(写真:棚の下の方に見える、トマトが入ったパッケージがオリジナルの厚紙ボックス)

このような厚紙や生分解性のパッケージを独自開発していても、つぶれると液体が出やすいベリー類やトマトなど必要最小限でしか使用されていないので、プラスチックゴミを削減するだけではなく、ゴミそのものを減らす取り組みにも注目です。

Natooraの環境保護に対する取り組み

Natooraは、生物多様性、農薬や肥料などの化学的介入の不使用や最小限の使用、種の選択、伝統的な栽培技術、土壌再生、資源保護など6つの視点でサステナビリティであることも大切にしています。

また、120エーカー(東京ディズニーランド位の大きさと同様程度)の有機認証済みの土地をリジェネラティブ農業(環境再生型農業)で、土壌の健康を回復させ、生態系を再生するという取り組みを行っています。

そして、食品ロスに対しても真剣に取り組んでおり、特に食品廃棄物が埋め立てられることを防いでいます。不要な無駄を回避するためNatooraは、過剰な仕入れをせず、需要に応じて対応しているようです。

彼ら特有のサプライチェーンは、農産物の持続可能を中核にしています。 調達方法から輸送および管理方法まで、すべての農産物に対して注意を払い取り扱っています。さらに、残った農産物については、複数のパートナー企業と協力し、さらなる廃棄物の排除を支援しています。

例えば、Felix project(フェリックスプロジェクト)は残りの農産物を収集し、余剰食品をロンドン市内にある200弱の慈善団体に届け、健康的な食事を提供しています。2016年から週2回、この団体には既に10万5千kgを超える生鮮食品を寄贈しています。

また、もうひとつのパートナーであるReFood(リフード)は、埋め立て地に運ばれる食品廃棄物を再生可能エネルギーに変換する閉ループソリューションを運用しています。週3回、消費に適さない食品廃棄物を収集し、ロンドン東部の最先端の工場に運び、再生可能エネルギーとバイオ肥料に変えているそうです。

Natooraは、ロンドン市内に5店舗と週に一度のマーケットでの販売、あとはWaitrose(ウエイトローズ)やWHOLE FOODS(ホールフーズ)に卸しています。決して大規模の小売店ではありませんが、このようにしっかりした理念を持ちサスティナビリティに取り組んでいます。

(出典:Natoora公式ウェブサイト

この記事を書いた人

鈴木 聖佳

約8年間、東京にて化粧品業界商社兼メーカーに勤務、Eコマース、カタログ通信販売のマーケティング&法人営業に従事。2012年よりロンドンへ移住し、3年弱、金融業界で勤務。そして、日本と「繋げる」・日本に「伝える」を仕事にし、現在は、ネゴシエーター・フリーランスライターとして活動中。特にオーガニック・ナチュラルプロダクトの食品・化粧品に関するマーケットリサーチ、インサイドセールス、ライティングをプロジェクトベースで行っています。

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