ベランダ菜園のススメ
今年もベランダでのゴーヤづくりがはじまった。
夏になると、北西に面した仕事部屋軒寝室が午後からの日差しでサウナ状態(冬は冷えすぎ)になる。夜になっても壁が熱く、部屋は冷えない。幸い川沿いのマンションの10階なので、窓を開放すれば風は通り抜ける。しかしエアコンをほとんど使わないため、壁の保温効果で寝苦しい夜が続く。築30年の古さだからか、それとも手抜きか?どうやら壁に断熱材が使われていないようだ。そこで家人の発案でゴーヤを育て、緑のカーテンを作ることにした。今年で5年目になる。
毎年5月のゴールデンウィークから作業に取りかかるが今年は1ヵ月遅れだ。ベランダの長さは約8メートル。手摺に支柱をくくり付け、ネットを張る。1メートル間隔で土を入れた土のう袋にゴーヤの苗を植え、たっぷりの水を注いで準備完了。順調に育てば、梅雨の間にツルがネットの上部まで葉をつけながら伸び、梅雨明けには、日差しを遮るほどに葉は生い茂り、9月中旬まで順次実がなり、好きなゴーヤチャンプルー三昧だ。
そして、緑のカーテン効果はまず視覚効果から始まった。緑は目にやさしく、気持ちを和めてくれる。だから暑くても「暑い!」の語気が和らいでいる。植物を意識していると、荒げた語気は慎んでいた。
聴覚的には葉が風でこすれるサワサワ、ザッ、サワサワが自然の涼しさを少しばかり伝えてくれた。
つぎに朝夕に水やりをする。風呂場からバケツを持って10往復。ついでにベランダの床と壁にも撒く。打ち水効果も加わり効果有り。
ゴーヤは日照時間が短いのか、サイズは20センチ程。それでも充分!1本目の収穫はさすがに畏れ多くて、できるならハサミを入れるのを変わってもらいたい気がした。自分で野菜を育てると「いただきます」の感謝の気持ちはここから始まるのだと実感。
小ぶりなのが幸いしてか、一度に食べる量と食卓に上るローテーションがうまくかみ合い、飽きることなくいただいた。友人へのお裾分けもできた。
苦味が薄く、ゴーヤを好物としていなかった家人もゴーヤ好きになった。愛犬の故プレマ(当時12歳のミックス犬で、食事はすべて家人の手づくり)までゴーヤ好きになった。
完熟ギリギリの一番おいしいときに収穫して20分後には食卓に上がっている。このおいしさはベランダだから経験できる家庭菜園のツボ。
“フードマイレージ・ゼロのおいしさ”だ。
微生物とのつき合いは・・・まみれ!?
さて、この5年の間に一度ゴーヤからタネを採取して翌年植えたことがある。ツルは伸び、葉も生い茂り、花も咲いた。しかし実は少なく、大きさもショボかった。
「やっぱりF1(一代雑種)かぁ」
育たないタネ。人為的に育たないタネにしたタネ。やっぱり不自然。
有機栽培というには怪しくて、農薬、化学肥料不使用だが土と肥料(有機肥料)はホームセンターで購入してきた。しかし今年は、生ごみ堆肥で作った土(自家製)で初挑戦。微生物の存在を感じつつはじめる。
あまり生ごみは出ないからベランダ菜園には適度な量の堆肥と土づくりができる。土のう袋にキッチン鋏で刻んだ生ごみと米ぬかを混ぜ完熟させる。翌日に袋の表面を触ってみるとすでにかなり温かい。夏の発酵熱は50度くらいまで上昇するそうだ。なにやら無性にうれしい。姿は見えないが、微生物への毎日の餌やり(生ごみ入れ)が楽しくなった。
そういえば「うちの野菜畑は微生物やら虫やら、なんやらでイノチまみれですよ」なんていった人がいたな。もちろん無農薬・無化学肥料となる。
そんなことを思い出していたら「ゴーヤの固定種、在来種のタネを探してみようか」なんて気が涌いてきた。
段々とオーガニック(的)が浸みこんでくる気配を感じる。
注)生ごみの土づくりは門田幸代著「生ゴミ堆肥」ですてきに土づくり(主婦と生活社)を参考にしています。
この記事を書いた人
山口タカ
大分県佐伯市出身 や組代表 クリエイティブディレクター(編集制作/マッチングコンサル) オーガニック、アウトドア、食育をテーマに活動。1997年に日本初の一般消費者向けのオーガニック専門誌「ORgA(オーガ)」創刊。 2001年に「オーガニック電話帳」を自費出版。以来、”ひとり出版社”と称してオーガニックの普及をライフワークとし、全国の篤農家や食品メーカー、レストランなどを取材している。漫画「美味しんぼ」第101巻“食の安全”をコーディネートし、作中に“有機の水先案内人”として登場。2020年4月、「東京オーガニックレストラン手帖」を辰巳出版より刊行。