前回と打って変わって、日常生活を大幅に取り戻しつつあるイタリアからお届けします。

3月から厳格な隔離政策が続いていましたが、新規感染者数の減少や医療体制の立て直しに伴い、5月頭から段階的な規制緩和が始まっています。5月末現在では、同州内であれば宣誓書の携帯無しで外出が可能になり、従来のようにたかだか買い物に行くにも警察に職務質問されるかもしれないという不安から解放されたのは、心理的にとても大きく感じています。さらに6月3日からは移動制限を全土で解消する方向で協議がなされています。*飲食店も当初の予定より前倒しで営業再開が可能となりましたが、対人間隔などで厳しいルールを伴う為、営業を再開してもテイクアウトに限定していたり、引き続き休業している店も残念ながら多く見受けられます。

それでもジェラート屋が再開して、ジェラートを食べながら外を自由に歩けるというのは、3・4月の状況を思うと夢のようです。一方、初夏の陽気と規制緩和の開放感から多くの人が街中に繰り出し人集りが出来てしまっている様子も見かける為、いずれまた感染が拡大しないかとナーバスな感情も湧いてきます。2ヶ月以上も皆篭って生活したのですから、この苦労を無駄にしないよう、引き続き気をつけながら、生活を楽しみたいものです。(子供達の学校は引き続き9月まで休校が決定しています。)

*その後全土一斉の移動制限解除が決定しています。

マーケットに並ぶ人の様子

休止となっていたマーケットも新ルールのもとに帰ってきました。屋外でありながら警察による入場制限があり、接客時の対人間隔も1メートルとるように規制線が張られたり、客同士の間隔が近いと巡回する警官に指摘される事もあります。マスク着用は必須で、もちろん客が商品に触る事はせず、販売者が手袋を着けた上で取ってくれます。

このように多少の不便はありますが、何せ従来はスーパーで必要なものを素早く買い回って、誰とも口をきかずに足早に帰るという状況だった為、生産者さんと対面で新鮮な食材を買い求められるというのは、本当に豊かな気持ちになります。

マスクを着けて接客する生産者

いわゆる「with コロナ」の状況で、人々の消費行動にも変化が出ているようです。コロナが猛威を奮い始めた当初は、非常事態の買い貯めの心理が働いて食料品店は一様に特需に沸いていましたが、この状況は一時的ではなく暫く続くものである事、また3月の最悪の時期にも食料不足に陥るといった事態にならなかったことから、消費行動も落ち着いてきているようです。

また調査会社ニールセンの発表によれば、3月は大型店、ディスカウントストア、小規模店舗のいずれでもオーガニック製品の売上が伸長し、平均で2割強の増加を見せたとの事です。中でも農畜産物でオーガニックを選ぶ傾向が顕著で、昨年の3月と比較してオーガニックは青果24.8%、精肉42.2%増。これに対して一般は青果18.2%、精肉29%増に留まりました。冷凍食品はオーガニックで44.8%、一般では29.5%増だったとの事です。

共同調査したAssoBio(イタリア国内のオーガニック・ナチュラル製品の加工・流通業者が加盟する団体)は

「家にこもる生活を続ける中で、何を食べるかという事に人々の関心が高まり、結果として高品質で安全な食品の消費を促した。」

とコメントしています。(この内容は大手日刊紙の「La Stampa」でも報じられました)

La Stampa

ライフライン以外の業種が2ヶ月間停止した事による経済不安もある中で、割高のオーガニック製品の消費が促進されたのは興味深い事だと思います。飲食店の休業に伴いそもそも外食が出来ず毎食を家で作る事から、多少割高の食材を買ってもさほどお財布に支障が無く、また否が応でも健康を意識させられる状況の中、オーガニックという選択肢に手が伸びたのかもしれません。

それにしてもオーガニックを選択する事はウイルス対策に直接的に繋がらないものの、オーガニック食品に対して日頃から何となく抱いている健康的なイメージからこれだけ消費が促されたというのは面白く、コアな消費者でなくても流動的な層が多く存在しているのだと思わされます。しかしこれも3月の最悪の状況の時の話なので、「withコロナ」のオーガニック需要の変化は今後とも注目していきたいと思います。

経済活動休止中にある地域の大気汚染が目に見えて減少した事は世界的にニュースになりました。今回の気づきをもとに、環境保全の面からもオーガニックを選択する動きは加速していくでしょうか。

この記事を書いた人

竹内芙美(たけうちふみ)

365日寝ても覚めても食べ物の事ばかり考えている根っからの食いしん坊。
オーガニック食品の老舗商社にて海外営業として勤務し、欧州のオーガニックブランド向けに日本の伝統食品のPB開発等に携わる。在職中に日本の職人のものづくりに魅せられ、商品の背景にあるストーリーを欧州の消費者に伝える事に関心が芽生える。2020年社会人10年目を機に、食科学大学(通称スローフード大学)にてマーケティング専攻の為、渡伊。

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