オーガニックに対する正しい理解を深め、オーガニックを見て、感じて、学んで、体感するイベント「オーガニック・デイ・ジャパン」が、2015年10月29日(木)、表参道ヒルズにて開催された。企画・主催は、オーガニック・トレード協会(本部:米ワシントンDC)、アメリカ大使館農産物貿易事務所の後援によるもの。2014年1月に、アメリカのUSDAオーガニックと日本の有機JASの同等性が認められたことを受け、昨年、2014年11月には、輸入業者や小売店を中心とした業界関係者に向けてのセミナー「米国産オーガニック製品と絶好のビジネスチャンスを学ぶ」が開催された。これに続き2年目となる今回は、企業から一般消費者にまで幅広くオーガニックを周知、アピールするため「セミナー」「ヨガレッスン」とともに「オーガニック・マーケット」を開催し、国内で購入可能なUSDA認証と有機JAS認証オーガニック製品の展示販売が行われ、成功裏にイベントが終了した。
オーガニックの啓蒙のためのツールとして、フライヤーなども制作し配布された。「オーガニックにまつわるヘルシーでハッピーな事実」「なぜオーガニックなのか?」など、一般消費者に対し、オーガニックがより良い選択である理由などをわかりやすく解説している。
アメリカ農務省(USDA)と、日本の農林水産省(MAFF)は、2014年1月に有機製品の同等性に関する協定を締結。これにより、互いの有機製品規格を同等のものと認め、相手国の表示ラベルに記載されたメリットや約束事を自国内でも適用。企業側には、複数の認証手続きを回避できたり、事務処理が簡略化されることでビジネスコストを大幅に削減。双方の国にとって、オーガニック製品の市場拡大が期待できることとなった。
実際、OTAの教育セミナーで発表された数字によれば、米国から日本への輸出は、2014年1月~8月と、2015年の1月~8月、前年同期比で既に107%。年間ではさらなる伸びも期待される。また、反対に日本からのオーガニック製品の輸入は、なんと前年同期比で170%であるという。この成長の理由のひとつとして、世界的な日本食ブームなどの影響も含め複合的な要素があるだろうが、日米有機製品の同等性が好影響をもたらした結果とも受け取れる。また、OTAの取り組みのように、この1年の地道な啓蒙活動やプロジェクトの遂行など、努力の積み重ねの成果も、これを後押ししている。
Organic Exports to Japan
Jan-Aug 2014 $16,999,942
Jan-Aug 2015 $18,212,479 (7%UP!)
Organic Exports from Japan
Jan-Aug 2014 $ 4,899,289
Jan-Aug 2015 $ 8,346,476 (70%UP!)
※教育セミナー「アメリカの最新情報について」モニク・マレズ資料より
数字の上では、アメリカのオーガニック製品の輸入量が増加しているようだが、実際の国内の売り場では、USDA認証製品が増えているといった印象は、正直まだない。
既に「認定輸入業者」である者たちは、日米同等性のメリットを十分理解していることと思う。しかしながら、既に海外からオーガニック以外の製品を輸入している商社、中小規模輸入業者が、オーガニック製品の魅力、そして「有機JAS」を取得し製品を流通させることの意味やメリットをどれだけ理解しているだろうか?また、同等性により、以前に比べ飛躍的に手間やコストが下がったものの、倉庫での既存製品とは別の保管管理や、手間やコストがかかることに変わりはない。輸入事業者の負担の重さが「有機JAS」取得の足かせとなっているひとつの要因でもある。
実際、せっかく同等性の国からのオーガニック製品であっても、あえて「有機JAS」のマークがなく、オーガニックと謳えずに流通しているものも多い。有機JASマークを貼付することが困難ならば、単純に「USDA」マークが日本と同等国である米国の認証マークであることを認知させればよい、という話ではない。現段階では、海外同等国の有機食品を日本で販売する場合であっても、有機JAS規格の認定を受けなければ「有機JAS」マークの貼付および「有機」「オーガニック」などの表示はできない。海外で認定された「Organic」などと表示されている食品をそのまま輸入販売すると法律違反になるのだから。
今後、日米のオーガニック製品輸出入拡大にむけて、消費者に対するオーガニックの啓蒙、「USDA」および「有機JAS」マークの意味周知とともに、輸入事業者、流通、小売り業者に対してのアプローチが重要になってくる。また、先にあげた数字にもあるように、日本の有機製品の米国への輸出量は伸びており、今後さらなる拡大のチャンスでもある。
消費者のオーガニック志向の高まりとともに、さらなるオーガニック市場の成長加速が期待される今、この機に国産有機製品の国内での流通の拡大、消費者の認知度向上のための取り組みが求められている。
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。