近年、世界各地で多くのスタートアップ企業が次々と誕生し、商業化の実現に向けて研究開発に取り組んでいるという「培養肉」。CLEAN MEAT(クリーンミート)とも呼ばれるこの培養肉は、飼育された家畜、つまり命ある動物を絞めて肉として販売するものではなく、植物由来の原料を肉に似せて作るものでもなく、動物の実際の細胞組織を培養することで作られる人工肉のことだ。2013年、培養肉で作られたハンバーガーの試食会がロンドンで開かれた時には、バーガー1個当たり3000万円以上となる試算だったが、あれから5年以上がたち、私たちの食卓に培養された人工肉がのる日も、そう遠くないレベルまできているという。
そんな「培養肉」時代の前哨戦とばかりに、今回の「Natural Products Expo West 2019」では、「PLANT-BASED(プラントベース)」、つまり植物由来の肉代替品を試食できるブースが大盛況だった。
※plant based : 本来の発音では「プラントベースド(トゥ)」となりますが、オーガニックプレスでは日本語として認知しやすい「プラントベース」と表記しています。
一番の行列が見られたのは、BEYOND MEAT(ビヨンドミート)のブースだ。既に一部のスーパーで肉売場に並んでいるという、あのビヨンドバーガー(THE BEYOND BURGER)を生み出したメーカーだ。
従来の肉代替品といえば、大豆や小麦たんぱくを使ったものが主流だった。植物が原料である肉は、すでに多くの人に親しまれている。日本で販売されている多くは、水で戻して使う乾物タイプか、缶詰になっているものだが、これからのトレンドは、グルテンフリー(GLUTEN FREE)、ソイフリー(大豆不使用)で、冷蔵タイプの肉代替品。大豆以外の豆によるピープロテイン(えんどう豆やムング豆)、そして玄米由来のプロテインに植物油、ビーツなどの野菜が原料で、見た目も質感も、味も含めて本物の肉により近いものが商品化されている。
ひき肉タイプは、バーガーだけでなく、ミートボールにしたり餃子にしたりと様々な料理にアレンジできる。水で戻すなどの手間もなく、本物のひき肉同様に使うことができる。味も、食感も肉汁の感じも、言われなければ本物と間違ってしまいそうなクオリティーだった。
1979年からテンペをはじめ、多くの大豆たんぱくを使ったベジタリアン食品を手がけてきた、LIGHT LIFEからもまた、グルテンフリー、大豆不使用、PLANT-BASED(プラントベース)のバーガーとソーセージ、ひき肉が新登場。
とにかく、リアル!
言われなければ、味は普通のバーガーとほとんど変わらない。チーズやソースなどをプラスしたら余計にリアルだ。
アメリカを代表するストリートフード、ハンバーガーショップもホットドッグスタンドでも、プラントベースを当たり前に提供する時代も、そう遠くないのかもしれない。
他にも、VEGANフードを提供するNATURLIも、プラントベース(大豆由来)のバーガーパティ、ミンチ、ソーセージを展開。
えんどう豆由来の鶏肉代替品も。
ベジタリアンやヴィーガンにとってリアルな味、リアルな質感などは、本物の肉を想像させむしろ嫌悪感を持たれそうにも思うのだが、何故ここまでリアルに近づけるのだろう?
マーケティング戦略的には、フレキシタリアン(Flexitarian)と言われる層がターゲット。フレキシタリアンとは、Flexible(フレキシブル)×Vegetarian(ベジタリアン)、つまり、柔軟なベジタリアンで、時には肉や魚も食べる人のことだ。
ストイックな制限をせず、無理なく柔軟に対応するフレキシタリアンには、ダイエットや生活習慣病のリスクを減少させる目的だけでなく、アニマルウェルフェアや地球環境に貢献したいと考える人も多い。でも、肉を食べたいという欲求は捨てられない、健康になるために我慢したくない・・・。美味しいものを食べれば食べる程、知れば知る程、ますますホンモノの味を求めてしまう。そんな消費者の望みをかなえるべく、肉代替品は、よりリアルさを追求し進化し続けていた。
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。