2019年末、世界で最初の新型コロナウイルス感染症患者が報告されてから、瞬く間に世界中にパンデミックが拡がりました。日本でも2020年の1月15日に国内で初めての感染が確認されてからというもの、新型コロナウイルスは何度も猛威を振るい、私たちの生活に大きな影響を及ぼしました。

コロナ禍では飲食店が軒並み休業したり、時短営業を余儀なくされたり・・・。そんな微妙なタイミングでの発売開始となってしまいましたが、2020年「東京オーガニック★★★レストラン手帖」が出版されました。私も寄稿をさせていただいていたのですが、執筆しているときは、まさかこんなにも世の中が一変するとは考えてもいませんでした。

これからの20年どうなる?【寄稿】

今から20年前、2000年6月10日に改正JAS法が施行され、日本でも有機食品の検査、認証制度がスタートしました。

このころはまだ“オーガニック”という言葉も一般的ではありませんでした。農薬や化学肥料を使用していない野菜や、そのような原材料でつくられた、いわゆる自然食品は、普通のスーパーでは全くと言っていいほど並んでいませんでした。

限られた自然食品店や宅配、共同購入などで購入するしかなく、求める消費者も少なく、オーガニックはとても小さな規模のマーケットでしかなかったのです。

今でもまだ小さなマーケットであることには変わりありませんが、あれから20年たち、だいぶ消費者の意識も社会も変わってきました。その要因のひとつにインターネットの普及があります。

今や時間や場所に関係なくネットにアクセスできる環境にあり、ネットで情報を取得したり物を購入したりすることが当然という時代に。気づけば、昔は入手困難だったオーガニック製品もネット通販で購入でき、そして普通のスーパーマーケットでも、気軽に購入できるようになりました。

ITの進化や変化はますます加速し、ネット通販は今後もますます拡大するかもしれませんが、一方で、リアル店舗での意義や価値がむしろ高まっていくのではないでしょうか?

対面での人とのつながり、コンセプトやメッセージ性を感じる空間など、そこに行かなければ体験できないことがある、会える人がいる、というのはリアルの強みです。ただ商品を並べているだけでは、ネット通販や普通のスーパーと差別化しにくく、独自性、高い専門性、豊富な知識が求められています。

環境意識の高いヨーロッパでは、量り売り(Bulk Foods)は当たり前。食品だけでなく、洗剤やシャンプーといった日用品、化粧品なども量り売りで購入。できるだけ捨てない、無駄にしない(Zero Waste, No Waste)、プラスチックをできるだけ排除する(Plastic Free)を掲げた店舗がたくさん存在します。

エコバッグ持参は当然のこと、プラスチック包装の商品を扱わない、量り売りの販売をする、リターナブル容器を利用する・・・。

成熟した消費者たちは、そんな、“ネットでは代替できない買い物の仕方”を求めています。

(文章 さとうあき)

2020年4月11日発売
東京オーガニック★★★レストラン手帖
「オーガニックショップップと消費者意識の変化」

あれから3年

あれから3年がたち、コロナ前後で考え方に変化はあったのかというと・・・

「ITの進化や変化はますます加速し、ネット通販は今後もますます拡大するかもしれませんが、一方で、リアル店舗での意義や価値がむしろ高まっていくのではないでしょうか?」

この考えに変わりはありません。むしろどちらも加速するのではないかとも思っています。

くしくもコロナ禍を契機として、オーガニック食品業界も堅調な伸びを示した企業が多いようです。新型コロナ禍で自宅で過ごす時間が増え、いわゆる“おうち需要” “巣ごもり需要”として、宅配やネット通販の需要が高まりました。外食が減少したぶん、家での食事を普段よりもちょっと贅沢にするなど、食材にこだわる傾向もみられました。今まであまりインターネットを利用してこなかったシニア層のデジタル消費も、コロナ禍で一気に活発化。ネットショッピングの利便性が広く認識されることとなりました。

最近では企業も、徐々にリモートワークから出社に戻そうという動きがみられています。おうち需要も落ち着き、徐々に外食の機会も増えていくでしょう。それに伴い宅配やネットショッピングは、一時のブーム的な売り上げ増からは少し凹むかもしれませんね。でも、消費者は一度享受した便利さを一気に手放すことはないので、この数年ですっかり身近なものとなったネットによる購入は、今後も増えていくと予想しています。

リアルの店舗では、コロナ後に良い意味で揺り戻しの動きがあるのではないかと思われます。コロナ禍でしばらく離れていたお客様も、対面によるコミュニケーションや、“ネットでは代替できない買い物の仕方”を求めて、少しずつ戻ってきそう。期待を込めて・・・。

この時期に“密”を避けるため、店舗での声がけや接客などをする習慣がすっかりなくなってしまったお店や、非接触型セルフレジを導入したお店は、コロナ後の顧客満足度に影響するのか、しないのか?とても気になるところです。

この記事を書いた人

オーガニックプレス株式会社 (ORGANIC PRESS Inc.)
CEO / Editor-in-Chief  佐藤あき (Aki Sato)

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

関連記事