フランスの食卓に欠かせない国民食「パン」。フランスでは、ビオ(オーガニック)の原料を使用しているパンがたくさんあるのはもちろんのこと、BIO認証を取得したパンも珍しくない。オーガニックスーパーや専門店などでは当然扱っているが、一般のスーパーでも普通のパンと一緒に販売されていて気軽に購入できる。
また、発酵から成型、焼成までの全てを店舗内の工房で行うオーガニックのパン屋さん(ブーランジェリー)も存在している。フランスのパンと言われ真っ先に思い浮かぶ、いわゆるフランスパン「baguette(バゲット)」を筆頭に、クロワッサン、パンオショコラのような、菓子パン系オーガニックパンまでずらり!しかも、どれも思ったより高くない。お手ごろな価格帯だ。
フランスでオーガニックパンが一般的である理由のひとつには、オーガニック認証の原材料が手に入りやすい環境があげられる。酪農王国でもあるここフランスでは、有機の畜産物、卵、牛乳や生クリーム、バターなどの乳製品も比較的安く購入できる。その豊富なオーガニック原料を使用しバラエティーに富んだオーガニックのパンが作ることが可能で、さらには手頃な価格で提供が可能ということだ。
日本でも「有機JAS認証のオーガニックパン」は存在しているのだが、作っているところも、取り扱っているお店も、そしてパンの種類もまだまだ少ないのが現状だ。日本でオーガニックパンを作ろうとした場合、ネックとなるのが「有機卵」と「オーガニックバター」。国産のオーガニックの卵は流通しているが、非常に高い。有機の認証を取得したオーガニックバターで、現在流通しているものはごくわずか。大変希少で高価なものだ。牛乳や生クリーム、チーズといった乳製品全般にわたり、非常に流通量が少ない。
フランスパン(バゲット)のように小麦粉、酵母、塩、水のみで作られるもの、シンプルなレーズンパンやナッツ入りのパンなど「有機農産物」のみでなら原材料がそろう。ところが、バターや卵を使うようなクロワッサンや菓子パン、さらには総菜パンとなると、原料全てをオーガニックでそろえるのがとても難しい。たとえ入手できたとしても、とてつもなく高いパンができてしまうだろう。
美味しいビオバター(オーガニックバター)をたっぷり使った、焼きたてオーガニックのクロワッサンが、1.10ユーロと手ごろな価格で買えるフランス。うらやましいかぎりだ。
日本人にとって主食といえば米だが、同様にパンも日本人の食卓に欠かせない存在となっている。ところが、消費者の多くは日本独自のパンの味、大量生産されるパンに慣れ親しんでいて、まだ天然酵母パンの美味しさに気づいてない方も多い。もしかしたらオーガニックパンの存在すら知らないかもしれない。是非一度、有機認証された「オーガニックパン」を味わってほしい。シンプルな材料だからこそ感じられる、小麦そのものの香りや風味、天然酵母独特の味わいにきっと魅了されるだろう。
ご飯と同じくらい主食として食べられているパン。「オーガニックパン」がもっと手ごろな価格で購入でき、スーパーやコンビニで普通に並ぶようになれば、オーガニック(有機JAS)そのものに関する認知度も高まるかもしれない。日本でオーガニックをもっと身近なものにする、そのためには有機農産物だけでなく、国内の畜産、酪農のオーガニック化から?
・・・道のりは長そうだ。
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。