アメリカ、ロサンゼルスにあるNatural Foods Market erewhonの青果コーナー。大規模のオーガニックスーパーでは、1アイテムあたりの陳列量、ボリュームのある売り場に圧倒されることが多いが、こちらのお店は中規模のため、野菜も種類はそれなりにあるが、1品1品の量はそんなに多くない。そんな多品種少量販売でも、ボリューム感ある売り場に魅せる工夫があった。裸売りでも鮮度を保持できるよう、ミストで野菜に水分を与える仕組みがあったりしたのも、大変印象的だった。

日本の野菜用冷蔵ケースは、3~4段の蛍光灯つきの「棚」式であることが多く、下段が一番奥行きがあるものが多い。在庫が少なく、少量の野菜を並べたい場合に、後ろがスカスカになってしまったり、高さのないもの、立てにくい野菜などは、スペースを有効に使うことが難しい。こちらのお店では日本で見られるような棚ではなく、深さの浅い四角い仕切りのある入れ物に入れて斜めに陳列。上部に斜めになった鏡が計算された角度で設置され下の野菜たちの姿が映されているので、より高さやボリュームがあるように見える。

じゃがいもや玉ねぎなどの根菜類は、木箱などに入れると、少なくなったときに中身が見えなくなるが、木樽を倒して台にこぼれたように見せて販売するなど工夫している。少ない在庫をボリュームあるように見せる売り場づくりは、日本の自然食品店でもマネできるところがありそうだ。

遊び心と対話のある売り場

erewhonの青果コーナーにはロスの野菜や果物で作ったと思われる人形があったりして楽しい。 「この子たちが売場を守ってくれてるんだ!」という、担当スタッフの遊び心。子どもやお客様との会話のきっかけにもなり、こんなところからも自然と会話が生まれてきそうだ。

このお店では、タトゥーやピアスなど、日本ではちょっと考えられないタイプの個性的なスタッフ方もいて、自由な雰囲気のオーガニックショップだ。それでも、皆、専門知識や商品知識を持っていてプロフェッショナルでフレンドリー。しっかりとした専門知識を持つ担当スタッフが常駐しているので、気軽に質問などもできる。

欧米のオーガニックスーパーマーケットは、基本はセルフスタイルの販売方法だが、干渉しすぎない、心地よい接客のあるお店が多い。「対話」があり、「情報」が多く、「品ぞろえ」が豊富。そして「魅せ方」も上手い。日本の売り場では制約もあってできることは限られるかもしれないが、魅力的な売り場づくりのために海外のオーガニックショップから学ぶことは、たくさんありそうだ。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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