南ドイツのニュルンベルクにて2月15日(水)~2月18日(土)の4日間にわたって開催されたオーガニック食品とナチュラルコスメの見本市「BIOFACH / VIVANESS 2017」。今年は来場者数が初めて50,000人を超え、オーガニックが堅調な成長分野であることを裏付けるレコードイヤーとなりました。
例年、開催国としてその存在感を示しているドイツ。2016年の家計支出ではオーガニック食品・飲料への支出が前年に比べ9.9%増え、その売上は94.8億ユーロ(約1兆1,376億円 ※1ユーロ=120円換算)となりました。またナチュラルコスメについては8.5%のマーケットシェア、11.5億ユーロ(約1,380億円)の売上規模となり、ヨーロッパで最も強いマーケットを形成しています。今回は「country of the year GERMANY」というテーマを掲げ、オーガニック業界をリードする国としての責任と革新性を強くアピールしていました。
■ドイツ政府によるオーガニック農業支援
大きな話題となったのがオープニングに登場したドイツのシュミット食糧・農業大臣による発表です。新たに始まるオーガニック農業支援プログラム『未来戦略 オーガニック農業』(Zukunftsstrategie ökologischer Landbau (略称ZÖL))を紹介。ドイツ国内のオーガニック農地の割合を現在の6%から20%へ引き上げるという目標を掲げ、オーガニック農地への転換を資金面から支援することを表明しました。
2018年より施行され、期間としては約10年。年間にして20万ヘクタールの農地がオーガニックへ転換されることになります。投じられる資金は現在の2,000万ユーロ(約24億円)から3,000万ユーロ(約36億円)へ増額されるということです。
オーガニック分野においてはアメリカに次いで世界第2位の市場規模を誇るドイツ。しかしオーガニック農地の割合は低く、他のEU諸国、例えばオーストリア20%、スウェーデン17%に対してドイツはたったの6%。農産物の多くを輸入に頼っているのが現状です。
今回発表された98ページにもおよぶ『未来戦略 オーガニック農業』では明確な数値目標が設定されただけでなく、具体的な対策や措置も盛り込まれています。業界関係者からは支援額が少なすぎるという意見もありつつ、その実行可能性の高さに期待する声が多く寄せられました。
■スタートアップ企業がつかむ成功のチャンス
BIOFACH、VIVANESS両会場にはドイツの経済・エネルギー省が支援する合同ブースもあります。出展資格があるのは設立10年以内の若い企業やスタートアップ企業のみ。設立間もない企業でも通常よりも低い出展料で参加することができ、老舗メーカーと肩を並べて世界中から集まるバイヤーにアクセスすることができるのです。
出展数は今年のBIOFACHでは23社、VIVANESSでは10社と決して多くありません。しかしバイヤーにとってはまだ市場にはない新しいアイディアや商品を発掘できる場所。通常のブースと変わらないくらい、もしくはそれ以上に賑わいを見せているところもありました。今年で3回目の出展だというメーカー担当者は、出展することで良い成果を得ることができ、契約に結びつくことも多いので毎年参加していると話していました。
このように新しい企業が参入しやすい環境をつくることは市場の活性化にもつながります。
オーガニックを短期的なムーブメントで終わらせないためにも政府がその価値を理解し、支援することは持続性と生産性を高めるうえで大きな意味を持つのです。
今回発表された『未来戦略 オーガニック農業』の中でもオーガニック農地20%という数値はゴールではなく中期目標であることが強調されており、検証と目標の再設定が計画として盛り込まれています。この支援プログラムがどのように機能していくのか、そこから日本のオーガニック業界をさらに発展させるヒントが見つかるかもしれません。
この記事を書いた人
神木桃子(こうぎももこ)
ドイツ在住オーガニックライター
オーガニック専門店を運営する会社での販売・バイヤー職、地域産品のコンサルタントや販売を行う会社での営業・バイヤー職を経て、2014年秋よりドイツに移住。商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積んだエキスパートならではの視点で、ドイツのオーガニック&サステナブル情報を発信している。3歳になる娘を子育て中。