世界最大級のオーガニックフードの国際見本市「BIOFACH 2019」が2月13日(水)~2月16日(土)の4日間にわたってドイツ・ニュルンベルクにて開催されました。
同時開催となるナチュラルコスメ専門の「VIVANESS 2019」と合わせ、今年は98ヶ国から3,273社が出展。来場者数は143ヶ国から51,500人以上と、出展社数、来場者数ともに昨年を上回る数字を記録しました。
今回のコラムではBIOFACH(以下、ビオファ)で見つけた新たなトレンドや革新的な新製品の数々をご紹介します。オーガニック業界のみならず、小売、飲食業界の方も必見です!
◆エキゾチック×ベジタリアン・ヴィーガン
そのまま食べられる惣菜から手軽に作れるインスタント食品まで「こんなものまで?」と驚くほどバラエティ豊かになってきているオーガニック製品。主な製品はマーケットの中心である欧州の食文化に合わせたものでしたが、ここ数年でファラフェルやフムスなど異国情緒漂うメニューを元にした製品が次々に登場しています。
冷凍食品メーカー「Biopolar」の新製品は“ヴィーガンソウルフード”と銘打った3品。レンズ豆にブロッコリーを組み合わせたインドカレー風のご飯メニュー「Buddha Bowl(ブッダ ボウル)」に、ひよこ豆にクスクスを組み合わせたオリエンタルな味付けの「Aladin Tajine(アラジン タジン)」。そしてチリコンカンを彷彿とさせるスパイシーな「Chili Gonzales(チリ ゴンザレス)」と、どれも今までに見たことがないメニューばかり。ピザやパスタが主力製品のメーカーなだけに驚きでした。
やはりこちらも冷凍食品メーカー「followfood」では、人気のピザに「Vegetaria Humms(ベジタリアン フムス)」が新登場。フムス自体は冷蔵惣菜としてスーパーに並ぶほど定着しているメニューですが、ピザとの組み合わせは初めて見ました。
毎年、トレンドを意識した製品を積極的に開発している「DAVERT」ではギリシャ料理“Gyros(ギロス)”をベースにした「ベジ ギロス」を発売。肉の代わりに大豆たんぱくを使用し、水を加えて加熱するだけで食べられるインスタント仕様となっています。
エキゾチックなメニューであるだけでなく、ポイントはベジタリアンやヴィーガン対応の製品であること。ベジタリアン・ヴィーガンのマーケットがまだまだ拡大し続けていること、そして新しい食文化も抵抗感なく受け入れる世代が消費の中心になってきていることが背景にはあるのでしょう。
◆オルタナティブフード
代替肉や代替チーズなどのオルタナティブフード(代替食品)は当初、ベジタリアンやヴィーガンなど限られた人だけが買うものという印象でした。しかし今日ではバラエティが増え、製品のクオリティも上がり、一般の消費者にも美味しいヘルシーフードとして認知されてきています。
ジャックフルーツは“フルーツミート”として人気の食材。青果では流通しにくいため、レトルトカレーなど手軽に食べられる調味済みの製品が中心でした。しかし需要の高まりとともに食材そのものとして提案する動きが出ています。「JACKY F.」で紹介されていたのはジャックフルーツの缶詰。軽く塩味がついており、下処理は不要。好きな料理にアレンジができるので、一般消費者だけでなくカフェなどの飲食店での利用も期待できます。
ヴィーガンチーズは本来のチーズさながらに様々な種類が作られ、デリカテッセンのように進化しています。ヴィーガン専門の「Veganz」の新製品はカシューナッツをベースにしたヴィーガンクリームチーズ。「クラシック」、「地中海風」、「ハーブ」の3種類を展開。ヴィーガンチーズが出始めた頃は無理やりチーズの風味に似せたという印象でしたが、今回の新製品はヴィーガンでなくても食べたくなる美味しさでした。
“何かの代わり”ではなく新しいカテゴリーの食品としてひとつの地位を確立しつつあるオルタナティブフード。目新しい食材をただ用意するだけでなく、需要に合わせたアレンジや美味しさを追求したレシピが今の人気につながっているように感じます。
◆ゼロウエスト(Zero-Waste)
プラスチック削減の動きはビオファでも。食器やカトラリー、ストロー、包装資材など、例年になく多くのメーカーが出展していました。今回は食周りの雑貨が中心でしたが、今後はプラスチックフリーのパッケージを利用した食品も増えてくることが予想されます。
ペーパーバッグを中心に扱う「Apomore」が新たに開発したのが、木材と草、みつろうを原料にした「BEE-PAPER(ビーペーパー)」。食材を包むラップ替わりに、花束などのラッピングとして、小売から外食まで様々な分野での活用が考えられます。使用後は生ごみと一緒にコンポストに入れれば土に還る循環型の素材です。
飲食の分野で消費量が多いのが使い捨てのプラスチック製カトラリー。「Bionatic」が提案するのは木粉にオーガニックポリマーを加えた、繰り返し使える食器やカトラリー。軽くて見た目がナチュラルな雰囲気なのでお弁当と一緒に持ち歩いたりするのによさそうです。
大手飲食店で廃止の動きが広がっているプラスチックストロー。「FW-GLAS」が紹介していたのはカラフルなガラス製のストロー。このメーカー以外でもオーガニックポリエチレンやパスタ、そしてグルテンフリーパスタでできたものまで。様々なストローが出品されていました。
その他、去年の流れを引き継いでターメリックやプロテイン製品も健在。手軽に食べられるコンビニエンス製品も益々増えています。マーケットが変化していく中で、オーガニックにあぐらをかいて定番品を売り続けるだけでは停滞するのみ。メーカーにはトレンドを意識した製品づくりが求められています。
マーケット規模がまだまだ小さい日本では、コストも時間もかかる新製品開発を毎年のように行うのは難しいことかもしれません。しかし日本のメーカーにはアイディア溢れるレシピから凝ったデザイン、緻密なパッケージングまで、高い開発技術があります。これはドイツに暮らすことで改めて気づかされたことです。是非この利点を生かして、新たなヒットをつくり出し、マーケット拡大に結びつけてほしいものです。
この記事を書いた人
神木桃子(こうぎももこ)
ドイツ在住オーガニックライター
オーガニック専門店を運営する会社での販売・バイヤー職、地域産品のコンサルタントや販売を行う会社での営業・バイヤー職を経て、2014年秋よりドイツに移住。商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積んだエキスパートならではの視点で、ドイツのオーガニック&サステナブル情報を発信している。3歳になる娘を子育て中。