ある商品やサービスを利用するときに、保証金・預り金として支払う「デポジット」。日本ではまだまだ馴染みのない言葉かもしれません。身近な例として交通系ICカードが挙げられますが、カード購入時の料金をデポジットと認識しているひとは、少ないのではないでしょうか。

一方のドイツを始めとするヨーロッパ諸国では、飲料容器に対するデポジットの活用が盛んです。前回の記事でドイツのデポジットシステムについて紹介しましたが、同様のシステムが、フィンランドやデンマークなど8ヶ国ですでに導入されています。さらに、イギリスやポルトガルなど7ヶ国では導入に向けた準備が進められており、デポジットシステムが環境政策として高い効果をもたらすことが期待されています。

日本も国としてこのようなデポジットシステムを導入すべきなのか。文化的背景や社会の仕組みが異なるため、一概にベストな選択とは言えません。しかし、小売店や地域コミュニティなど、民間レベルでデポジットの仕組みが役に立つ可能性は十分にあります。

プラスチックごみ削減とリユース促進のために、デポジットをどのように暮らしに取り入れていくか。ドイツの事例が、新しいサービスや製品のヒントとなるかもしれません。

デポジットの仕組みは慣れれば簡単

まずは日常生活の中で、飲料容器のデポジットをどのように支払い、払い戻ししているのか説明していきます。

●デポジットを確認するには
リターナブル容器(リユース型)かワンウェイ容器(リサイクル型)かで、デポジット額は異なります。デポジット対象の製品には、どちらの容器か分かるように、マークもしくは文言の表示があります。

左側の四角いマークがワンウェイ容器、右側の丸いマークがリターナブル容器のマーク(筆者撮影)

また、プライスカードにはデポジットを意味する「Pfand」の文字と、デポジット額が記載されています。そして小売店には、リターナブル容器かワンウェイ容器かが分かるよう、飲料棚に表示することが義務づけられています。

リターナブル(Mehrweg)と書かれた下に、小さくPfandの文字と金額が記載されている(筆者撮影)

●デポジットを支払うには
特別な手続きは必要ありません。レジで製品のバーコードをスキャンすると、自動的にデポジット額が会計に加算されます。レシートには製品価格とは別に、デポジットの総額が記載されます

●どこに返却するか
ワンウェイ容器の場合は、原則としてどの小売店でも返却することができます(小規模店は取扱い製品のみに受け取りを限定できる)。
リターナブル容器は全国的に流通している製品であれば、同様に場所は選びません。ただし、地域や店舗を限定した製品の場合は、返却先が限られることもあります。

●払い戻しを受け取るには
大手スーパーマーケットやディスカウントストアには、自動回収機が設置されています。

オーガニックスーパーにある自動回収機。容器単体なら上の丸い返却口に、カゴごとなら下の大きな返却口に入れる(筆者撮影)

回収機は、容器のバーコードや専用マーク、外形などをスキャンして容器を判別。デポジット額が自動的に算出され、レシートにバーコード情報として印字されます。このレシートをレジに持っていくと、払い戻しを受け取ることができます。買い物のときに一緒に出せば、会計額から相殺されます。

デポジットの総額とバーコードが大きく印字されたレシート(筆者撮影)

このように返却する手間は多少かかりますが、慣れてしまえば日常のルーティンの中で行えます。宅配業者によっては空容器の回収・清算を行うサービスもあるため、高齢者や買い物に行く時間がないひとでも支障はありません。

デポジットはこんなものにまで

クリスマスマーケットのグリューワインカップや、オクトーバーフェストのビールジョッキにデポジットがかかることは有名な話ですが、それ以外にもこんなものにもデポジット?!と思わせるものがあります。

例えば、オーガニック牛乳やヨーグルトのリターナブルガラスびん、量り売り専門店が宅配サービスで使用するリターナブルガラス容器、オーガニック野菜の定期購入専用の通い箱など。サステナブルに配慮した企業が自主的に取り入れる例が多く見受けられます。

なかでも、これから利用が拡大すると考えられるのが、デポジット式のリターナブルコーヒーカップです。1時間に32万個もの使い捨てコーヒーカップが消費されると言われているドイツ。EUの禁止指令を受け、2021年より特定の使い捨てプラスチック製品の流通が禁止となります。その対象として、プラスチックのカトラリーやストロー、持ち帰り容器、綿棒などに加えて、持ち帰り用コーヒーカップも含まれるのです。

2016年創業のスタートアップ企業「reCup」が提供するのは、デポジット付きのリターナブルカップ「RECUP」です。お客はパートナー店でRECUPをデポジットとして1ユーロで購入。パートナー店であれば、どこでも使用・返却・払い戻しができるという仕組みです。パートナー店には大手コーヒーショップやガソリンスタンド、オーガニックスーパー老舗のALNATURAやbasicも名を連ね、提供場所はドイツ国内4,800ヵ所以上に広がっています(2020年2月時点)。

© reCup GmbH

デポジットの仕組みが定着していない日本で、このようなサービスがいきなり全国規模で広がることは難しいでしょう。しかし、プラスチックフリーやゼロウェイストムーブメントの広がりとともに、リユースのサービスや製品への需要も高まっています。売って終わりではなく、その先の環境に与えるインパクトまで問われる時代。ものづくりは、リユース×デポジットの仕組みで変わっていくかもしれません。

この記事を書いた人

神木桃子(こうぎももこ)

ドイツ在住オーガニックライター
オーガニック専門店を運営する会社での販売・バイヤー職、地域産品のコンサルタントや販売を行う会社での営業・バイヤー職を経て、2014年秋よりドイツに移住。商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積んだエキスパートならではの視点で、ドイツのオーガニック&サステナブル情報を発信している。3歳になる娘を子育て中。

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