国内外で40店舗(2016年8月現在)の自然食品店を展開する、株式会社こだわりや「胡田和里家 台北信義店」現地取材で、日本の有機食品を輸入、販売する上で困っていることは何かと訊ねてみた。一番に出てきた答えは「表示」に関する問題だった。
日本で海外の認証製品を「有機」「オーガニック」などと表示して輸入販売する場合、有機JAS認証取得が必要となる。有機JAS規格の認定を受けなければ、製品に有機JASマークを貼ることも、「有機」「オーガニック」と表示することもできない。これと同様に、台湾側から見た場合、日本の有機JASを取得した製品であっても、台湾の有機認証を取得していなければ、「有機」という文字が入ったパッケージのものをそのまま販売することができないのだ。
写真のヒカリ野菜ジュース。パッと見ただけではわからないが、ラベルが2重になっているのに気づいただろうか?この製品は有機JAS認証の原料を使用しているもの。日本のパッケージでは「有機トマト・にんじん・ゆこうを使用」と一括表示外に、そして一括表示内にも各原料に「有機」の明記がある。この表示を消すため、わざわざ有機の文字を抜いて作ったラベルシールを上から貼るという、苦肉の策。
こちらは有機JAS認証マーク付き、日本では商品名「有機にんじんジュース」。商品名のほかにも有機人参、レモン使用の明記があるのだが、完全に「有機」の文字を隠すため、上記同様に上からシールが貼られている。
シールを貼れないものは、マジックで「有機」の文字を塗りつぶしたり・・・
漢字表記だから余計に目立つ「有機」の2文字。有機栽培米特別純米酒も、「有機栽培米」の文字の部分に紙を貼って隠すなど対応。決して見た目も良くはなく、そもそも、こういった作業にわざわざ時間をかけたくないのだが、やむを得ない。台湾での認証なく「有機」と表示されているものを、そのまま輸入して販売するのは法律違反なのだから。日本でもJAS法が改正され有機JAS認定制度ができたばかりの当時、小売店、流通が海外認証製品に対して対応を迫られた時代が思い出された。
「表示」に関する問題とともに悩ましいのが「販売価格」だ。一般の製品に比べ有機のものは若干価格が高いのは台湾も日本も同じ。さらに日本からの輸入となると、日本の販売価格の1.5~2倍の価格設定にせざるを得ず、日本の製品は価格競争力が持てずにいる。Made in Japanのものは、一般的に品質が高く信頼性も高いと認識されており、「少々値段が高くても買いたい」という声もあるが、「有機」を表記できず、直接的な表現での情報提供が難しいとなると、商品の訴求力は弱くなってしまう。
Made in Japanの「オーガニック」の魅力やこだわりをどう伝えるか?加工度の低い有機食品については特に、美味しさ、品質、ブランド力といった価格以外の魅力や独自性を磨くことに加え、情報発信の仕方も今後の課題となっている。
また、台湾が日本の有機JAS同等国ではない(2016年8月現在)ことが、今後、日本の有機食品輸出拡大のボトルネックのひとつとなりそうだ。台湾を含めアジア各国と、早急な有機認証制度の同等性の議論や合意が待たれている。
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。