毎年ドイツで開催されている世界最大級のオーガニック食品とナチュラルコスメの国際見本市「BIOFACH / VIVANESS」が、2021年は“eSPECIAL”としてオンライン開催に。2月17日(水)~19日(金)の3日間で、136カ国から13,800人の参加者と、1,442社の出展企業・団体がデジタルプラットフォームに集合しました。

数だけ見ると、リアル開催であった昨年実績の3分の1程度。しかし、コロナ禍で多くの展示商談会が開催中止をよぎなくされる中、業界関係者が集まる貴重な機会となったことは間違いありません。

オンライン方式に踏み切った背景として、「他社との交流や専門家によるレクチャー、トレンドやイノベーションの発信を求めるオーガニック、ナチュラルコスメ業界からの声が非常に大きかった」と主催であるNürnbergMesseのPetra Wolf氏は語っています。

オンライン見本市ってどんなもの?

一般参加者としてチケットを購入すると、プラットフォームのリンクが送られてきます。リンクを開くと、まずはプロフィール情報の登録から。参加目的や所属、興味のあるカテゴリーやコンタクトをとりたいターゲットなど、およそ20もの項目について詳細に入力し、ようやくメイン画面に入ります。

オンライン開催となったBIOFACH / VIVANESS 2021のプラットフォーム (スクリーンショット)

このプラットフォームでは以下のような機能が提供されています。

◎参加者、出展者、製品、イベント情報などの検索
◎プロフィール情報を基にしたマッチング
◎メッセージチャットやビデオミーティング
◎イベントやミーティングのスケジュール管理
◎カンファレンスやプレゼンテーションのオンライン視聴

出展者とバイヤーのネットワークづくりだけでなく、専門家によるセッション、スタートアップ企業を集めたプレゼンテーション、参加者による新商品アワードの投票など、様々なプログラムに参加することができます。

見本市における物理的な活動をできる限りオンラインに移行したという印象ですが、3日間通して使ってみた感想は「非常に使いにくい‥」。何よりウェブサイトが重く、検索ひとつとってもなかなか表示されない状態でした。ライブストリーミング方式のカンファレンスでは、人が集中しすぎて回線がつながりにくいという事態も。急ごしらえ感は正直否めませんでした。

今年のトレンドや注目のテーマは?

それでも、今回のオンライン開催で何より恩恵を受けたのは、カンファレンス分野でしょう。本来であれば会場に行かなければ入手できない業界の最新情報を、自宅に居ながらにして得られるわけです。700人以上が参加した“ドイツのオーガニックマーケット動向”に始まり、“パッケージングのサステナビリティ”、“世界のビューティートレンド”など、人気のプログラムには数百人単位で人が集まりました。また、例年のように会場をまわって商品を見られないため、“デジタルトレンドツアー”や“新商品アワード”も好評だったようです。

ライブ配信されたオープニングイベントの様子(スクリーンショット)

主催者側が発表した2021年のトレンドは次の通り。サステナビリティや社会的責任、サーキュラービューティーなど、社会性の強いキーワードが挙げられたことは、今年の大きな特徴と言えます。

≪BIOFACHトレンド2021≫

・プラントベース(plant-based products) 
・ローシュガー&シュガーフリー(low-sugar and sugar-free products)
・付加価値のある食品(food with additional benefits)
・サステナビリティ&社会的責任(sustainability and social responsibility)

≪VIVANESSトレンド2021≫

・ウォーターレスビューティー(waterless beauty)
・自分のための時間&心地さ(me time & comfort)
・セーフビューティー&サーキュラービューティー(safe beauty and circular beauty)

 

今回のプラットフォームは、会期後6ヶ月間、引き続き利用することができます。チャットなどの通信機能はオフになりますが、データベースとしての利用や、ストリーミング配信映像のオンデマンド視聴が可能に。コンタクトをとってみたい企業を検索したり、期間中に参加できなかったカンファレンスを視聴したりと、見本市が終わってからも価値を提供し続けることとなります。

前述のPetra Wolf氏は、閉会後のプレスカンファレンスで「今年は、re-meet(再会)の前にe-meetしようと言っていたので、リアルでの再会を心待ちにしている。」と語っています。デジタル技術面での課題が浮き彫りにはなったものの、どんな形であれ代替案が提供されたことは、次へとつながる大きな布石となったことでしょう。

この記事を書いた人

神木桃子(こうぎももこ)

ドイツ在住オーガニックライター
オーガニック専門店を運営する会社での販売・バイヤー職、地域産品のコンサルタントや販売を行う会社での営業・バイヤー職を経て、2014年秋よりドイツに移住。商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積んだエキスパートならではの視点で、ドイツのオーガニック&サステナブル情報を発信している。3歳になる娘を子育て中。

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