日本や一部アジアの国に比べ、欧米などでは今まであまり食べる習慣が無かった「海藻」。和食ブームの影響から、寿司やおにぎりに使われる海苔、お味噌汁に入っているワカメ、出汁に使う昆布などを通じて、海外でも徐々に認知されてきた。

どちらかというと食事に取り入れるというより、“韓国海苔”のようなオーガニック認証のスナックは流通していたが、今回のNatural Products Expo West 2023では、様々な食品に海藻が使われ商品化されていたのが印象的だった。

KELP(ケルプ)入り、サラダ感覚で食べる漬物。キムチの漬け汁がベースで、商品によっては魚醤を使っているものもあるが、ヴィーガンキムチをベースにしたものも。ヴィーガン、グルテンフリーに加えて、発酵食品というトレンドも抑えた商品だ。

KELP CUBESは、海藻をピュレ状にしたものをベースに、商品によっては生姜やフルーツもプラス。冷凍タイプで、スムージーを作る時に1~2個入れて撹拌して摂取する。ヨウ素をはじめとする栄養素や、プレバイオティクスの補給として、ブースト用のサプリメント的な位置づけだ。

というのも、ヴィーガンやベジタリアンの方など、魚介類、乳製品、卵を全く食べない人や、IODIZED SALT(ヨウ素添加塩)を使用していない自然派、天然塩を志向する人などは、ヨウ素が不足してしまいがち。このような潜在的な栄養不良の課題を解決するための1つとして海藻を取り入れた、新しいタイプの商品だ。

プラントベースバーガーのパティとして注目!

エキスポで多くみられたのが、プラントベースバーガー。2019年には加工度の高い代替肉が台頭した時期で、あれからコロナ禍を経て4年たち、よりシンプルでクリーンな原材料を使用したものが多く誕生していた。中でも、パティに海藻を使用したものに注目!

atlantic SEA FARMSの「SEA-VEGGIE BURGERS」は、ケルプ(海藻)の他、緑豆、ピープロテイン、ひよこ豆等、豆をベースとしたパティ。ファラフェルに近いが、刻んだケルプが程よい食感を生み出している。

akuaのKELP BURGERは、世界初!?の海藻バーガーだそう。

ケルプ、キノコ類をベースに、オーガニックエキストラバージンオリーブオイル、キヌアやひよこ豆等の、健康的な原材料を使用したパティ。VEGAN、NON-GMO、SOY FREE、GLUTEN FREE。

AKUAは2019年に4種類のユニークなフレーバーのスナック、Kelp Jerky(ケルプジャーキー)を発売し、2020年にThe Kelp Burger(ザ・ケルプ・バーガー)を展開。シードラウンドで資金調達をし、さらに養殖昆布を使用した製品開発を進めている。

このようなスタートアップ企業が海藻に注目するのは、いわゆるスーパーフード的な栄養価の部分だけでない。地球温暖化の抑制の観点から、新たな食料資源として有効活用していこうという動きが活発化している。

健康の面だけではなく。肉の消費量を抑えることで環境への負担を減らすことにもつながる、という観点からも広がったプラントベースフード。少し前までは、より本物の見た目や味に近づけるために、少しやりすぎ?と思うほど加工度の高い代替肉が注目されていたが、それに待ったをかけるように、よりクリーンで持続可能な原材料を使ったものが続々登場している。

海藻入りヘルシースナックも続々登場

12tidesは、環境再生型養殖で育てられた海藻を使用した、USDAオーガニック認証のケルプスナック。パッケージも堆肥化が可能なものを選択し、輸送時の包材などに関してもプラスチックフリーにするなど環境に配慮。B Corporation(Bコーポレーション)認証を取得している企業だ。

馬鈴薯でん粉を主原料とした日本の“えびせん”のような、パフのような食感。サクサク軽いおせんべい。キャッサバ粉とタピオカ粉を使用しており、小麦粉不使用のグルテンフリー。動物性原料は使用していないが、昆布のうまみと、楽しいフレーバーで味付け。SEA SALT、EVERYTHING、CHILI PEPPER、TRUFFLE + PEPPER、VEGAN CHEDDARの5種類、すべてオーガニック!

ユニークなキャラクターのイラストが可愛いSea Monsters は、ケルプ入りのソルガムパフスナック。CHEESE PIZA、SOUR CREAM & ONION、SPICY KOREAN BBQ、SWEET CHILIの4種のフレーバーは、すべてグルテンフリーで1種を除きヴィーガン。海藻だけでなく、ソルガム(たかきび)も成長するのに大量の水は必要ない雑穀であり、地球に優しいというのがセールスポイントだ。

Wavy Wondersは、デンマークのメーカー。持続可能なノルウェー産の海藻をベースに、チアシードやフラックスシード、キヌア、ゴマなどのスーパーフードを使用している。

細かく粉砕した(またはペーストにした)海藻をぎゅっとプレスしたような、それでいてサクッとした食感を残したスナック。海藻の風味もしっかりあり、噛んでいると旨味が感じられる。

WILD GARLIC YOGURT、SEA SALT、CHILI & BERRYの3種で、すべてグルテンフリーで1種を除きヴィーガン。パッケージのイラストも可愛く、よく見るとスナックの部分をイラストの服、ひげ、ラケットに見立てていたり、吹き出しでユニークなメッセージが書かれていたりと、遊び心も満載。

あまり目につかない、パッケージの底の部分にも!

地球温暖化や気候変動を防止する

近年、地球温暖化の原因とされるCO2の新たな吸収源として、海藻が注目されている。海藻は光合成によって吸収し炭素を固定化、海洋酸性化の影響を緩和することから気候変動問題解決に一役買う可能性があり、そもそも農地(陸地)の必要が無く農薬や肥料も不要だ。また、大量の水(淡水)を使わずに栽培できることから、持続可能な海藻養殖にも期待感が高まっている。

そんな中、新たな市場を創出するため、様々なスタートアップがユニークな商品を開発。食品としてだけではなく、海藻を牛に与えることでゲップに含まれるメタンガスを削減する研究や、海藻を原料とした梱包資材の開発など、新しい価値を提供すべく研究や開発が進められている。地球温暖化や気候変動の防止は、長期にわたって取り組むべき重大なテーマ。今はちょっとした海藻ブームとして沸いているようにも見えるが、急激に冷めることはなく今後も続いていくと思う。海藻が欧米の食卓に定着する日も、そう遠くはないかも。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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