日本でいう農水省、台湾の行政院農業委員會による農産物直売所(いわゆるファーマーズマーケット)が、台北市にある。その名も「希望廣場(The Hope Plaza Farmers Market)」。台湾の各地から農家が集まり、週末のみに開催されている。
「希望廣場」は、広々とした敷地に建設された建物で、壁はなくオープンではあるが、屋根付きなので雨の日でも開催が可能。毎回テントを設営する手間もかからず、各所に扇風機が配置され、明るく開放的、清潔感もあり、出店者にとっても快適な空間となっている。基本的に平台のテーブルに、希望廣場の文字が入ったクロスをかけ、各自持参したカゴや段ボール、もしくは直接テーブルに農産物を置くスタイル。スタイリッシュな、、、とは若干言い難いものの、設備としては十分だ。
メインの建物のサイドには屋台のスペースや、テーブルやベンチなどもあり、買い物だけでなく飲食も楽しめる。
この「希望廣場」は、有機農産物のみのファーマーズマーケットではないのだが、多くの有機農家が出店していた。ここ数年、台湾では廃油を食用油として販売していた事件をはじめ、産地偽装など食品企業の不祥事などもあり、食の安全に対する不安が広がっている。そういった背景からか、このファーマーズマーケットでは、有機野菜や食用油等は検査証明を提示することが義務付けられており、HPには、
「請農友檢附有機蔬菜及食用油等檢驗證明供查驗」
検査のための農家の有機野菜や食用油や他の検査証明書を添付してください
との文字が。
有機農家さんのブースでは、農産物の価格やPOPに「有機」の文字が書かれているだけでなく、有機認証や、各種検査の証明などが見えるところに置かれていたのが印象的だった。
また、QRコードも表示されており、トレーサビリティー(生産履歴追跡)確認も可能。消費者はスマートフォンなどで、生産地や生産過程などの情報をいつでも入手できる。インターネットで公開された情報により、農産品の生産販売過程での記録内容が追跡調査できる仕組みが、食の安心性をさらに高めている。
日本でも人気のファーマーズマーケット(マルシェ)だが、有機農家のみなどに限定したところは少なく、消費者側からもどれが有機なのか?を瞬時に判断することが難しいもの。また、生産者が消費者に直接販売するのが本来のファーマーズマーケットの姿だが、実際には流通業者など、農家でない者が販売するケースもよく見受けられる。生産者自らが対面販売を行うからこその安心感や、対話や交流から生まれる信頼が薄れ、商業的、イベント的な意味合いが強まることで、こういった空気を敏感に感じ取った一部の消費者離れも見られる。
台湾では以前から有機農家のオーガニックマルシェなども各地で開催されている。「希望廣場」は有機農家限定のものではないが、「ここで売られているものは安心」という市民からの信頼が得られているようだ。その理由には、台湾政府による一連の食の安全への取り組み、政府運営というお墨付き、徹底された農産物の管理システム、情報公開のIT化などがあげられるだろう。
そして、このファーマーズマーケットを始めた台湾の行政院農業委員會は、なんと今年「有機生活誌 Eat.Play.Life」という、オーガニックなライフスタイルを提案、啓蒙するマガジンまで創刊した。今後のマガジンの継続、展開の予定などは不明だが、台湾政府による食の安全安心への取り組み、有機農業啓蒙に対しての「本気度」を感じる。
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。