¡Hola! 皆様こんにちは!大変長い間ご無沙汰してしまいました。
その間EUでは有機生産に関わる新規則の施行やセクターに関連する事項について実に多くの変化がございました。再びこちらスペインからオーガニックに関する話題を届けさせていただきたいと思います。改めまして宜しくお願いいたします。
実は、ちょうどパンデミックになる前に、弊社Servicio de Certificación CAAE(セルビシオ・デ・セルティフィカシオン・カーエと読みます。以下、CAAE)の新規事業として下名が取り組んでいたプロジェクトがあり、その立ち上げ、パンデミックによるプランの変更、その後のコーディネートやプロモーション活動等に没頭しておりました。
近年、ヨーロッパは「2030年までに、農地の25%を有機栽培にする」という目標を掲げました。これは、2020年に欧州委員会が「グリーン・ディール」の中で、「“F2F”ファーム・トゥー・フォーク(農場から食卓まで )」と「生物多様性」という2つの戦略を通じて定められている事項です。
この大きな目標を達成するには、有機農業の拡大が必要不可欠となり、そのためには行政が生産者に提供する経済的支援についての政策も密接に関連してきます。
スペイン政府としての政策の概況や取り組み等については、次回少しお話しさせていただきたいと思いますが、今回は冒頭にお伝えしました、下名が立ち上げから関わっております弊社の新規事業についてお話させていただきつつ、EUの有機生産のセクターのお話をさせていただきたいと思います。
グリーン・ディールの目標達成の為に重要な事項として、有機生産の規模の拡大が必要不可欠だと申し上げましたが、それに関わる業務に従事するプロフェッショナルの養成も重要な事項です。
そこで、スペインで最初に設立された有機生産の認証機関として、CAAEが30年に渡り積み重ねてきた知識と経験を活かすことのできるまたとない機会だと考え、始まったのがプロフェッショナルトレーニング部門の事業です。
Online コースのポータル、Campus CAAE
ヨーロッパの有機生産の分野で重要な事項として、欧州理事会規則 (EC)834/2007が改正され、2022年1月より、欧州議会および理事会規則(EC) 2018/848に基づく新規則に移行された事(注1)は、有機生産に関わる方であれば既にご存知の事かと思います。
ここでその新規則について詳細をお伝えすることは割愛させていただきますが、弊社のプロフェッショナルトレーニング部門では、この新規則についての概要及び同規則の要求事項に基づいた有機生産の認証検査実施の手順を学ぶ認証検査官(オーディター)を養成するコースをまず企画致しました。
EUの有機認証の規則EU2018/848は2022年1月1日より施行された。変更についての経緯と関連規則、及び認証の手順を学ぶコース。
当初、実地研修も少し含めたコースを考えていたのですが、ご存知の通り、スペインでは緊急事態宣言による、ロックダウン、行動制限が発令され、それが何とコース開始予定日の数週間前だった為、すべてをオンラインで実施することに急きょ変更しました。あの時ほど大きなプレッシャーを感じたことはないという経験になりましたが、結局はその変更がアンダルシアだけではなく、スペイン各地からの方々にも受講していただく事につながり、現在も定着しています。また、スペイン国内には同様のコースが存在しなかったこともあり、お陰様で好評を頂いています。
尚、弊社は南米にも拠点があり、同じスペイン語圏ですので、EUへの輸出向け生産者に対する認証を実施する南米のプロフェッショナルの養成を目的とした同じコースの南米版(同じ言語ですが、スペインでは有機はEcológicoという単語を使うのに対し、南米では Orgánicoを使うのが一般的等、使う単語に微妙な違いがあります。)も昨年よりスタートしました。
ちなみに、南米にはペルーならRTPO、メキシコならLPO、等、各国独自の有機規則がありますので、大規模生産者による、様々な認証規格の認証を受けた製品の輸出量が大変多い南米に向けて、それらの規格に基づいた認証についてのコースも展開予定です。
キヌアの生産者。南米で生産される多くの有機農産物はEU、アメリカや日本等に輸出される。
お次はコスメティックの分野。ここでもオーガニックへの気流は目下上昇中で、各社がよりサステナブルで環境に配慮した製品であるという事を示すオーガニックの認証は製品に付加価値を与え、消費者に信頼を与えることが出来るという事で今やメーカーにとってオーガニックコスメは大変重要な製品ラインナップとなっています。
コスメティックの分野は、有機食品の認証規格であるEU欧州理事会の(EC)2018/848、日本農林水産省MAFFのJAS、米国USDAのNOPといった公共の機関が定める規定がある場合と異なり、フランスの「エコサート」、イタリアの「イチェア」やその他ドイツとイギリス、といった民間の有機認証機関等が作った独自の基準が適用されていて、世界的に統一された基準というものが規定されておらず、今一つ基準が分からないという状態が続いていました。
そこで上記の民間の有機認証機関が集って国際的に統一可能な基準をと制定されたのが、COSMOSコスモス認証です。
このCOSMOS認証の基準(現行法はCOSMOS 4.0)についての概要と要求事項、それに基づいた認証検査の実施の手順について学ぶコースは今年で2回目の開講です。
COSMOS Organic/Natural規則の要件、認証手順や技術的分析の手順を学ぶだけでなく、コスメティックの分野の傾向を学ぶなど、多岐にわたる内容を学ぶ。この写真は、製品に張り付けるラベル表示についてのウェビナー
そして現在最も注目を受けている、最新のコースはEUの肥料製品に関する規則のコースです。
EUで使用、流通される肥料製品(土壌改良剤)の要件に関する事項を定めた規則(EU) 2019/1009が規定され、2022年7月より適用開始されました。
このEU 2019/1009のもっとも重要な事項は、この規則の定義として、地球環境及び人々と動植物の健康、安全と環境を守る事が定められている事で、同規則内にて、繰り返しこの定義が表記されています。
旧法では化学肥料のみを対象としていましたが、土壌の保護という目的で有機及びミネラル肥料が加えられました。
適用開始以来、数か月後で既に改正が加えられており、多岐にわたる情報が規定された同規則を深く理解する事、また、同規則に従った製品の技術資料の作成やラベル表示の作成等は難しく、弊社にも問い合わせが立て続けにあったため、それを学んでいただくという目的でコースを開講しています。
新肥料法EU2019/1009では、EUの規格に基づき認証された製品であることを示す、CEマークの表記が義務付けられるようになった。
これらのコースは、弊社のような認証機関で働く、認証検査官の養成を目的するだけでなく、有機生産に関わる事業者にて品質管理部門の担当者、内部監査員として働くという可能性も広がります。
複雑な規則と有機生産の認証に必要な要求事項を熟知したプロフェッショナルの存在は、今後拡大していく有機生産の分野においては重要な役割を担っています。
認証検査官や内部監査を担当する品質管理責任者等、有機生産のセクターに貢献する事のできるプロフェッショナルの需要は高い。
以上、CAAEで開催させて頂いている主なコースのラインアップと、それにまつわる規則等の簡単なご紹介をさせていただきました。絶えず進化を遂げている有機生産の分野ですが、ここ数年ほど大きな変化を遂げた事はなかったのではないでしょうか。そんな重要な時期にちょうどこの分野でのお仕事をさせていただき、本当に沢山の新しい事を勉強させて頂いております。今後ともよろしくお願いいたします。
注1:当初の施行時期は21年1月の予定でしたが、関連規則の制定に時間を要した 上にパンデミックの影響もあり、1年延 期されました。2022年1月の施行から2023年1月まで旧法の適用を可とする移行期間が設けられました。
この記事を書いた人
大谷由美子(おおたにゆみこ)
兵庫県出身。2000年よりスペイン・セビリア在住。スペインの文化に興味を持ち、語学留学。のちに現地の語学学校に就職、17年半に渡り外国人向けスペイン語コースのプロモーションに従事。大好きなスペインと日本の橋渡しをすべく新たな可能性を模索する中、日本でのスペインの食文化のブームや人々の食に対する安全や環境保護への関心の高まりを受け、スペインの食品産業に注目。徹底した品質管理が行われた、安全でクオリティーの高いスペインの有機生産物を認証し、国内をはじめ世界に届けるための一端を担う事ができるCAAEに転職。有機JAS認証の窓口を皮切りに新しい分野での業務に日々研鑽を積んでいる。