世界最大級のオーガニック食品とナチュラルコスメの国際見本市「BIOFACH / VIVANESS 2020」(ビオファ&ヴィヴァネス)がMessezentrum Nürnberg(ドイツ・ニュルンベルク)を会場に2020年2月12日(水)~15日(土)の日程で開催されました。

ビオファ&ヴィヴァネス2020 開催実績

今年は展示会場が2ホール追加され、参加企業は大幅に増。コロナウイルスの影響で来場者は昨年より少なかったものの、4日間で149ものカンファレンスが開かれ、総聴講者数が初めて10,000人を超えるなど、オーガニック分野に対する関心がさらに高まっていることを示す結果となりました。

世界中から最新のオーガニック食品やナチュラルコスメが集結する中で、今年の注目のカテゴリーは何なのか。ビオファ、ヴィヴァネス、それぞれで発表されていたトレンドキーワードに沿って紹介していきます。

ビオファ2020 オーガニック食品トレンド

Packaging

まさに今年の顔と言っても過言ではないトレンド。気候変動に対する抗議活動「Fridays for Future(未来のための金曜日)」の広がりによって、消費者は自らの消費についてより意識的になり、製品パッケージに関してもサステナブルな選択肢を求めるようになってきています。

この流れを受け、多くのメーカーがパッケージをサステナブルな素材やリターナブル容器へと置き換えていました。

バッグインボックス形式のパッケージを採用した液体洗剤。プラスチックごみを95%削減できる

紙製のパッケージに入ったタブレット型洗剤。水の中にタブレットを溶かし、液体洗剤を手作りすることでゴミを削減できる

また、パッケージフリー(量り売り)の購入スタイルもひとつのトレンドとなっており、バルクストアと呼ばれる量り売り専門店が世界各国で誕生しています。

ビオファでもドイツ各地のバルクストアが加盟する団体「Unverpackt e.V.」のブースには人だかり。量り売り販売を行うための設備機器メーカーの出展も目立つなど、勢いはとどまることを知りません。

Vegan 2.0

ヴィーガン市場は引き続きの成長を見せ、ヴィーガン製品は限られた人だけのものから誰もが楽しめるものへと変わりつつあります。

今や全ての食品カテゴリーに登場していると言っていいほどで、そのラインナップはアーモンドミルクバター、ココナッツホイップクリーム、ジャックフルーツサラダなどなど。今まで以上に「これもヴィーガン?」と思わせる、多種多様な製品がそろっています。

左にあるのがジャックフルーツを使用したサラダ風総菜。燻製をきかせたクラシック、カレー風味、ビーツ入りの3種類

Open Pollinated Varieties(固定種)

日本でも注目されるようになってきた固定種や在来種。F1種に比べると生産量が少なく、固定種の農作物はそのまま販売されることが多いですが、加工品も徐々に増えてきています。

今回紹介されていたのは種子メーカーが発売した固定種のビーツの種や、飲料メーカーによる固定種の人参を使用したストレートジュースなど。現状では加工度がそこまで高くない製品ばかりですが、今後需要が高まれば製品バリエーションは増えていくかもしれません。

固定種の人参「Sonnen Möhre」を使用したストレートジュース

Region 2.0

遠方から輸送コストをかけて運ばれてくるものよりは、自分たちの地域で生産されたものを。高まる消費者のニーズは農産物のみならず、加工品についても地域性を重視する姿勢へとつながっています。

例えばオーストリア産の米や、南ドイツ産の甜菜糖など。往来は他国からの輸入に頼っていた原材料を自国、もしくは周辺地域からの調達に切り替えて製品化されたものが増えています。地域の農業を守るだけでなく、輸送コストを削減することによる価格面のメリットを得ることができるので、メーカーにとっても消費者にとっても理想的な形です。

オーストリアのメーカーが自国で米の栽培から販売まで手掛けている

ヴィヴァネス2020 ナチュラルコスメトレンド

Packaging

コスメの分野でも重要なキーワードとなっているパッケージング。コスメは食品のように量り売りの販売スタイルが難しいため、パッケージをよりサステナブルにする流れは食品以上。革新的なパッケージが続々と登場しています。

リサイクル可能なパッケージを採用する、パッケージは極力少なめにするなどはもはや大前提。サトウキビ由来の土に還る容器を使用したミセラーウォーター、フィリピンの海から集めたプラスチックを再利用(50%)したパッケージのスピルリナコスメなど、特徴的なパッケージコンセプトをもつ製品もありました。

Zero Waste bathroom

サステナブルな視点から、ごみを出さない暮らしを目指すゼロウェイストというライフスタイルが注目を集めています。量り売り販売の人気の背景にもあるこのトレンド、コスメの分野にもよく表れています。

ヴィヴァネスではバスルーム関連製品が特に顕著で、シャンプーバーやパウダータイプのケア製品など、水を使わない固形コスメが続々登場しています。サステナブルな素材を使用した歯ブラシや月経カップなどの日用品もこのトレンドに含まれます。

メーカーに返却するとリユースされるプラスチックフリーのガラス容器を使用したコスメ、コットン製のフェイスマスク、月経カップなどが並ぶ

Dental Care

ゼロウェストバスルームの流れを組んで、デンタルケアもエコロジカル化が進んでいる分野です。今年のヴィヴァネスでデンタルケア関連製品を扱うメーカーはなんと54社も。
サステナブルな素材の歯ブラシや歯間ブラシからパウダータイプのマウスウォッシュや歯ブラシタブレットまで様々な製品がそろいます。

その多くはサステナブルなパッケージを採用するなど、“パッケージング”や“ゼロウェイスト”のトレンドも抑えているのが特徴です。 

All about Hemp

唯一、素材でヴィヴァネスのトレンドキーワードに上がったのがヘンプ(麻)。クリームから栄養補助食品までヘンプオイルやCBD(カンナビジオール)を使用した製品のバラエティが増えてきています。

ヴィヴァネスでのヘンプ関連の出品数は24点。ヘンプシードオイルやCBDスキンケアライン、ヘンプ配合のシャンプーバーなど、その存在感を高めていました。

ヘンプ食品メーカーによるヘンプコスメ(ビオファブース)

今年のビオファ&ヴィヴァネスを振り返って

今回、ビオファのトレンド選定に関わった大手オーガニックスーパーの担当者は「トレンド製品を決めるのが難しかった」と語っており、市場を牽引するほどの大きなトレンドがないことを示唆していました。

近年、需要の高まりに背中を押され、メーカーの開発合戦のような様相を呈していたオーガニック業界。スーパーフードの流行に続けとばかりに新たな製品が次々に開発され、パッケージングで重視されるのはスタイリッシュで目を引くデザインであることでした。

しかし今年のトレンドキーワードを見ると、その風向きが大きく変わってきたことを感じさせられます。革新的な製品ではなく、革新的な消費スタイルへ。オーガニック業界が大きく舵を切ろうとしています。

この記事を書いた人

神木桃子(こうぎももこ)

ドイツ在住オーガニックライター
オーガニック専門店を運営する会社での販売・バイヤー職、地域産品のコンサルタントや販売を行う会社での営業・バイヤー職を経て、2014年秋よりドイツに移住。商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積んだエキスパートならではの視点で、ドイツのオーガニック&サステナブル情報を発信している。3歳になる娘を子育て中。

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