今年もオーガニックフードとナチュラルコスメの国際見本市「BIOFACH / VIVANESS 2018」がドイツのニュルンベルクメッセを会場に2月14日(水)~2月17日(土)の4日間にわたって開催されました。50,000人を超える来場者が期待されている今回の見本市、その特徴やトレンドをいち早くお届けします。
■世界から集まるオーガニック
初開催となる1990年から数えて29回目となる今回、会場は新たにふたつのホールが追加され、ニュルンベルクメッセでも過去最大規模の合計10ホールに。出展企業は初めて3,000社を超え、93ヶ国から3,218社が集まりました。
国ごとの出展企業数でみると、上位5ヶ国(ドイツ、イタリア、フランス、スペイン、オランダ)は昨年と比べて横ばい。その代わりに「BIOFACH(以下、ビオファ)」ではトーゴとミャンマーの2ヶ国、「VIVANESS(以下、ヴィヴァネス)」では韓国、セネガル、ベラルーシ、ボスニアヘルツェゴビナ、ルクセンブルクの5ヶ国が初参加となりました。
新たに加わったホールには、昨年までメッセ会場入口に設置されていたビオファの新商品スタンドが規模を広げて移動。ずらりと並ぶ世界各国の商品に、オーガニックの世界的な拡大と多様な発展を改めて感じさせられました。
■ビオファのトレンドも“多様性”
運営側が挙げたキーワードは次の三つ。
まずは様々なブレンドやフレーバーが登場している“オイルスペシャリテ”。子ども用や男性用などターゲットをしぼったブレンドオイルや新素材のバオバブオイルなどが並ぶ中、興味深かったのは嗜好性を高めたオイルのシリーズ。ローストパプリカや地中海風など色や香りも楽しめるオイルは食卓の彩りにもなりそうです。
次にプロテインを豊富に含んだ食材を手軽に食べられるよう加工した“使えるプロテイン”。ヴィーガン人気が背景にあり、食材は植物性。麻の実や豆を使用したお菓子やペーストなど、どれも美味しく、プロテインを摂取しているという印象を与えません。
そして様々な食品にターメリックを加えた“味わうターメリック”です。チョコレートやフルーツバーなどのお菓子から、ミューズリーや、なんとキムチにまでターメリックを使用したものが登場しており、とても驚きました。
三つのキーワード以外に目についたのは今までにない凝った商品。ココナッツオイルベースのスプレッドや、食材を加えるだけで簡単にメニューが完成するスパイスミックスなどこれさえあれば!という一品が多かったです。
もしマーケットが小さければ、メーカー側も革新的な商品には挑戦しにくいもの。細かいニーズに応えるもの、嗜好性の高いものへとトレンドがシフトしているのは、マーケットが広がり、消費者の購買力が上がっているからこそでしょう。
オーガニックと聞くと素材を一から手間暇かけて調理して、といったイメージを抱いたのは昔の話。オーガニックな食卓は楽しく簡単に、そして美味しく。そんな時代になったことを今年のトレンドは改めて証明してくれました。
■そしてオーガニックは新たなステージへ
ふたつの見本市が人を呼ぶ理由、それは展示商談会だけではなく、学術的な議論や政治に働きかける動きも加わったひとつの大きなプラットフォームとして機能していることも挙げられます。毎年、ビオファとヴィヴァネスで共通の開催テーマが掲げられ、パネルディスカッションやワークショップなど大小さまざまなプログラムが企画されています。
今年のテーマは「Next Generation」-「次世代」-それは何十年もオーガニック業界を牽引してきた老舗企業からソーシャルメディアを活用するスタートアップ企業までが共存する時代になったからこそ問われているテーマなのでしょう。これからの議題とは、目指すべきゴールとは。世界から集まる専門家たちが課題を共有し、意見を交換し合うことで、世界的なオーガニックの成長は次の段階へ進むことが期待されます。
ドイツに続き、今年は世界5ヶ国で開催されるビオファのイベント。中国・上海に加え、タイ・バンコクでも初めてビオファが開催されるなど、アジアのオーガニックマーケットも拡大期を迎えています。その中で日本は存在感を示せるのか。日本におけるオーガニック専門の展示会でも革新的な商品提案や実のある議論がなされることを願っています。
この記事を書いた人
神木桃子(こうぎももこ)
ドイツ在住オーガニックライター
オーガニック専門店を運営する会社での販売・バイヤー職、地域産品のコンサルタントや販売を行う会社での営業・バイヤー職を経て、2014年秋よりドイツに移住。商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積んだエキスパートならではの視点で、ドイツのオーガニック&サステナブル情報を発信している。3歳になる娘を子育て中。