環境負荷の小さな農業を広げるべく、日本と東南アジアでバリューチェーンの再構築に取り組む株式会社坂ノ途中が、有機農業の環境持続性についての考察、そして国内における課題と必要な支援策をまとめた「有機農業白書 vol.0 ~有機農業を広げる妥当性と必要な支援~」を発表しました。

坂ノ途中は今まで提携生産者を対象にしたアンケート調査を行ってきましが、2024年1月から全国の有機農業者を対象にしたアンケート調査を行う予定です。より広く情報を集めることでデータの質を高め、得られたデータをもとに、白書を定期的にアップデート。生産者のみでなく行政や企業など多くの人々が参考にできるデータにしていきたいと考えています。vol.0はあくまで序章という位置付けで、これをきっかけに情報を広く集め、今後、正式な白書を定期的に発表していく予定です。

「有機農業白書」主な内容

◎有機農業の拡大は環境持続性に貢献するか?
そもそも持続性の定義とは何なのかという問いからはじめ、有機農業と慣行農業が環境に与える影響の国際的な比較や、日本国内に当てはめた場合の有効性などを解説します。

◎有機農業が広がりにくい原因は何か?
有機農業を広げるにあたって何が問題となっているのか、坂ノ途中が多くの情報を持っている「新規就農者」に焦点を当てて考察します。就農のための情報収集、就農への具体的な準備、就農後、という3つのステップにおいてどのような支援が必要なのかをまとめています。

「はじめに」より一部抜粋

この白書は、環境負荷の小さい農業を広めるためのものだ。有機農業は環境負荷が小さいと見なされているが、日本では広まっていない。有機農地の面積は、全農地面積の1%以下だ。しかし農林水産省は、2021 年に策定した『みどりの食料システム戦略』の中で、有機農地の面積を 2050 年までに 25%に上げるという目標を掲げた(農林水産省,2021)。

しかし、そもそもこの目標は妥当なものだろうか? 有機農業は本当に良いものなのだろうか? もし妥当なのだとしても、そのゴールに向かうための地図がない。その道中にどんな困難が予想されるのかもわからない。これでは、前に進もうにも進むことができない。

この白書は、ゴールの妥当性を検討し、ゴールに行くための地図を作ることを目指す。ただし、この白書で行われる検討の結果は、暫定的なものにすぎない。

系統的な試行錯誤と情報集積には、読者のみなさんの力が必要だ。みなさんがお持ちの情報を提供してくだされば、地図はどんどん精度を上げて、使えるものになっていく。そうなるように願いを込めて、坂ノ途中はこの白書を作っている。

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執筆者について

小松 光(Hikaru Komatsu)
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。大学・研究機関(東京大学、九州大学、京都大学、台湾大学など)で教育・研究に従事。世界銀行、国際連合教育科学文化機関などのアドバイザーも務めた。坂ノ途中に入社後は、研究室で、坂ノ途中の事業の文明論的意味について考えている。白書vol.0 では、全体の企画・構成、2 章の構成、2,3 章の執筆を担当。

平島 晴生(Haruo Hirashima)
静岡県立大学大学院 薬学研究科(修士・薬学)を卒業後、小野薬品工業株式会社に研究職として入社。医薬品の品質試験法の開発や新薬申請に必要なデータ取得の業務に従事した。その後、事業性評価やマーケティング、DX などの業務に従事。現在、坂ノ途中に出向中であり、主に研究室の事業開発・事業改善に従事。白書vol.0 では、3 章の構成と執筆を担当。

樋口 雄飛(Yuhi Higuchi)
神戸大学大学院 自然科学研究科(修士・工学)を卒業後、株式会社野村総合研究所に経営コンサルタントとして入社。経営戦略・マーケティング戦略・業務改革等、業界・テーマ横断でコンサルティング業務に従事。その後、新生銀行グループにて信用リスク管理、データ・AI 利活用、DX などに従事。坂ノ途中では取締役として、「坂ノ途中の研究室」を起点に、環境負荷の小さい農業の経営ハードルを下げるための事業開発・事業改善に従事。白書vol.0 では、全体の企画・構成、3 章の執筆を担当。

横浜 美由紀(Miyuki Yokohama)
立命館大学国際関係学部卒業。株式会社ロフトワークなどでクリエイティブディレクターとしてHP のコンセプト策定や設計図作成、デザインディレクションやライティング業務などを行う。2018 年に坂ノ途中に入社し、HP のリニューアルや運用を担当。「坂ノ途中の研究室」の発足に伴い、2022 年1 月よりセオリーオブ・チェンジや「坂ノ途中の報告書」の作成、インパクト調査・測定などに従事。白書vol.0 では、全体の企画・構成、3 章の執筆、表現の統一・調整を担当。

渡邊 春菜(Haruna Watanabe)
東京工業大学環境・社会理工学院卒(修士・工学)。現在、同大学院博士課程在籍中。専門はランドスケープデザイン、景観工学。2021 年にインターンとして坂ノ途中に入社。「坂ノ途中の研究室」の発足に伴い、2022 年1 月よりインパクト調査・測定、セオリーオブ・チェンジや「坂ノ途中の報告書」の作成に従事。白書vol.0 では、全体の企画・構成、データ分析を担当。

株式会社坂ノ途中について

「100年先もつづく、農業を」というメッセージを掲げ、農薬や化学肥料不使用で栽培された農産物の販売を行っている。提携生産者の約8割が新規就農者。少量不安定な生産でも品質が高ければ適正な価格で販売できる仕組みを構築することで、環境負荷の小さい農業を実践する生産者の増加を目指す。その他、東南アジアの山間地域で高品質なコーヒーを栽培することで森林保全と山間地での所得確保の両立を目指す「海ノ向こうコーヒー」も展開。農業分野を代表するソーシャルベンチャーとして事業成長を続けている。京都市「1000年を紡ぐ企業」、経済産業省「地域未来牽引企業」「J-Startup Impact」など、受賞多数。

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