オーガニック農産物に多く含まれる天然植物成分サルベストロール

オーガニック農産物に多く含まれる成分に「サルベストロール」という植物性天然成分があります。サルベストロールはポリフェノールなどの一種で植物にカビや細菌が付着した際に、植物が防御反応を起こす際に生成されます。(図1)

図1 サルベストロールの生成過程

元々植物は自然界の中で、常に真菌感染にさらされています。感染への防御反応として生成されるサルベストロールは、本来ほとんどすべての果実や野菜に含まれ、黒い斑点となって現れることもあります。(図2)

図2 晩柑の皮に現れたサルベストロール

一見痛んでいるように見える晩柑の黒い斑点ですが、これがサルベストロールです。皮や種、中果皮や根など、廃棄されやすい部位に多く含まれています。そのサルベストロールはがん細胞特有の酵素CYP1B1(シップワンビーワン)と反応し、抗がん物質としてがん細胞を排除する働きをします。正常細胞にはCYP1B1が存在しないので影響がないことから、天然の抗がん剤として、欧米の医療現場で注目されています。

イギリスで発見されたがん細胞と正常細胞を見分ける酵素CYP1B1

1997年、イギリスのサンダーランド大学薬学部名誉教授のダン・バーク博士ががん細胞と正常細胞とを鑑別する研究でCYP1B1という酵素ががん細胞にのみ特異的に増加することを発見しました。

バーク博士の研究チームは、CYP1B1ががん細胞に固有の酵素であり、正常細胞ではほぼ検出されないことを北米のがん専門誌「キャンサー・リサーチ」誌に発表しました。

アメリカのハーバード大学のダナ・ファーバーがん研究所でも、多種のがん細胞のサンプル3300件のほとんどにCYP1B1の発現を確認。「がん細胞と正常細胞を見分ける酵素」としてCYP1B1の存在が確立されました。

そして2002年、CYP1B1と対になる天然物質として、サルベストロールが発見されました。

ダン・バーク博士の共同研究グループのイギリスのデ・モントフォート大学薬学部の医薬品化学者であるゲリー・ポッター元教授が、サルベストロールにがん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導する作用があることを発見。イギリスのがん専門誌「British Journal of Cancer」など、サルベストロールに関する論文を複数発表し、医療現場で注目されるようになりました。

CYP1B1とのみ反応高い選択性が特徴のサルベストロール

高い選択性をもつサルベストロールは正常細胞においてはCYP1B1がないために何も起きません。しかしがん細胞に取り込まれるとサルベストロールはCYP1B1と反応して活性化し、抗がん物質となってアポトーシスを引き起こし、腫瘍増殖を抑制します。(図3、4)

図3 がん細胞と正常細胞に対するサルベストロールの作用

図4 前立腺組織内のCYP1B1

また、サルベストロールは濃度が高くなっても、CYP1B1が存在しない正常細胞には影響を与えず、CYP1B1を有するがん細胞のみを高い選択性で死滅させます。培養細胞による実験でサルベストロールの濃度を高くすると、死滅するがん細胞の割合は増加していくという結果が出ました。(図5)

図5 サルベストロールによるがん細胞死

サルベストロールは体内で生成することはできません。自然界の動物はサルベストロールを豊富に含む果物や野菜を食べることにより、体内のがん細胞をアポトーシスに導いているのです。CYP1B1とサルベストロールによる抗がんメカニズムは「自然界のがん予防システム」と認識できます。

※この記事は「ORGANIC VISION」第11・12号の連載「オーガニックの可能性」からと「ガンが嫌なら野菜を変えなさい」の記事を引用し、構成しています。

***

ガンが嫌なら野菜を変えなさい(veggy5月号増刊)
監修・石黒 伸(アクアメディカルクリニック院長)

雑誌概要
誌 名: ガンが嫌なら野菜を変えなさい (veggy5月号増刊)
監 修: 石黒 伸 (アクアメディカルクリニック院長)
著 者: サルベストロール研究会
判 型: A4判
定 価: 864円(本体800円)
発売日: 2019年4月15日
発行元: キラジェンヌ株式会社
発売元: キラジェンヌ株式会社

***

一般社団法人オーガニックヴィレッジジャパン(OVJ)発行
「ORGANIC VISION」 vol.11 vol.12

▽一般社団法人オーガニックヴィレッジジャパン(OVJ)
http://ovj.jp/

***

※サルベストロールについて、また相談できる医療機関についてのお問い合わせは、サルベストロール研究会までご連絡ください。

▽サルベストロール研究会
https://salvestrol-labo.com/

関連記事