2024年2月13日~16日、世界最大規模を誇るオーガニック見本市 BIOFACH 2024がドイツ・ニュルンベルグ(NURUNBERG MESSE)にて開催された。
BIOFACH(ビオファ)と、ナチュラルパーソナルケア展示会VIVANESSの同時開催。今年は、94か国から2,550社のオーガニック企業が出展。世界128か国から35,000人ものビジター(主にバイヤーやプレス)が集結した。
オーガニックプレスとしての取材は、2015年以来9年ぶり。VIVANESSはずいぶん規模が縮小されてしまったような印象で、既に知名度の高いWELEDA、Dr.Hauschka、LOGONAなど、老舗オーガニックコスメブランドの出展は見当たらなかった。
特に当時と大きく異なるのは、デジタルとのハイブリッド開催だという点。コロナ禍からの過去3年間、継続してきた。そのため、来場者数自体は2015年当初より減少してはいるが、10,000人を超える参加者がハイブリッド見本市を利用し、BIOFACH と VIVANESS デジタルに登録。オンラインの参加者数を考慮すれば同等程度の規模となった。
また、この10年近くの間に、来場者の事前登録やそのチェック体制もかなり厳しくなった。それは、BtoBの場であるという本来の見本市としての目的や意義、質を保つためでもある。製品やサービスを展示し、取引のための商談の場となることが大前提。世界最大規模でありながら、質の高いオーガニック専門の見本市だ。
▽BIOFACH 過去のレポートを見る
https://organic-press.com/tag/biofach/
Best New Product Award BIOFACH
来場者の投票により選ばれる、Best New Product Award は、会場のノベルティスタンドとデジタルイベントプラットフォームで投票が可能に。
生鮮食品ではビオの肉加工食品が選ばれたが、多くは植物由来の製品だ。リターナブルボトルを使用しているワインや、その他食品、化粧品に関して関してもプラから紙へ。パッケージも環境に配慮したものが多く選ばれている。VIVANESSでも、固形の日焼け止め、粉末のハミガキ、固形のシャワー ボールといったように、できるだけ水を含まない配合にすることで、輸送中のCO2も大幅に節約するような製品が多数受賞している。
BIOFACH 最優秀新製品賞 (カテゴリー別)受賞者
■生鮮食品
purro back to meat : purro back to meat
Juffinger Bio Metzgereiの新ブランド「purro back to meat」サラミやソーセージなど肉加工食品
■冷凍商品
Gelato Classico – Die Aismanufaktur GmbH : Bio-Eispralinen Himbeere vegan
ヴィーガンアイスクリーム プラリネ ラズベリー
■食料品(調理・ベーキング)
Biovegan GmbH : Mein veganer Speck-Ersatz
キノコ由来のベーコン代替品
■食料品(スナック、スイーツ)
Biovegan GmbH : Mein süßer Reis Moment
ヴィーガン・グルテンフリーのインスタントお米のデザート
■ドリンク
Riegel Bioweine : PFANDtastico – Italienische und Spanische Bioweine in der 0,75l-Mehrwegflasche
イタリアとスペインのオーガニック ワイン(0.75 リットルの再利用可能なリターナブルボトル入り)
■その他
HANS Brainfood GmbH : HANS BIO Ultra Protein 85%
タンパク質含有量85%ヴィーガンプロテイン
■非食品
Aries Umweltprodukte GmbH & Co. KG : Anti Mück Pflegestift
虫よけケア スティック
【最優秀新製品賞 VIVANESS (部門別)
■フェイシャルケア 4peoplewhocare GmbH: Solid: “Feste Sonnencreme”(固形日焼け止め)
■ボディケア N&B srl Società benefit: “Body Butter – skin super food”(ボディバター)
■ヘアケア Greendoor Naturkosmetik GmbH: “Hairsplash – Feuchtigkeitsspray für die Haare”(髪用保湿スプレー・ネロリ)
■メイクアップ Bio Make-Up: “Lip Flower Lippenstift”(二酸化チタンフリー口紅・エレガンス・スタイリッシュなデザイン)
■スペシャルケアケア Purpose Products GmbH: “teethlovers Bio-Zahnpulver in kompostierbaren Refill-Bags”(teethlovers オーガニック歯磨き粉末、堆肥化可能な詰替袋)
■ドラッグストア商品 turn of beauty GmbH: “turn Starterset”(シャワージェルや石鹸に代わるシャワーボール)
■ウェルネス製品 Outdoor Freakz GmbH: “Badebomben und Badetabs ,,Die Eiskönigin” und ,,Das Dschungelbuch”(バスボムとバスタブ『アナと雪の女王』と『ジャングル・ブック』)
出典: Biofach プレスリリース
JAPAN PAVILION
日本貿易振興機構(JETRO)主催のジャパンブース(JAPAN PAVILION)では、抹茶、日本茶、醤油、味噌、日本酒、蕎麦、梅干、柚子・・・といった日本らしい素材を使用した食品が多く展開されていた。
そんな中、KOMBUCHA(大泉工場)や国産クラフトビール(PARADISE BEER FACTORY)といった、欧米ブランドと肩を並べて海外への輸出に挑戦する企業も。
欧米のオーガニック食品には、日本の伝統食にインスパイアされた商品も多い。伝統的な日本食も大事に継承しつつ、新しい風を取り入れた日本の有機加工食品なども、世界に向けて積極的にアピールしていって欲しいなと思う。今後の展開に期待したい。
BIOFACH 2024 トレンド
2015年の記事にも書いたように、BIOFACH ではある特定の素材に対して、大きなブームやトレンドといったものは見られない。そんな中でも気になった素材や商品などは、また別途レポートしていきたい。
気になるキーワード
◎PLANT BASED COLD CUT(コールドカット) ※プラントベースのハムやサラミ
◎PLANT BASED TUNA(代替魚・プラントベースツナ)
◎KOMBUCHA(コンブチャ)
◎TEMPEH(テンペ)
◎KIMCHI(キムチ、その他乳酸発酵の漬物)
◎ブイヨンなどの出汁
◎BIO ウォーター ※EU認証ではない
◎WATERLESS BEAUTY(ウォーターレス)
◎SOLID SOAP(固形石鹸)
◎歯磨きタブレット
◎リターナブルボトル(瓶)
BIOFACH はオーガニック専門の展示会だけあって、加工度の高い代替肉などはほとんど展示されておらず、小麦(セイタン)や大豆、エンドウ豆、ジャックフルーツなど、素材を生かした代替食がほとんど。そんな中でも、以前に比べれば選択肢は増え、見た目や食感などのクオリティーは高くなってきている。ヴィーガン、プラントベースは既に一過性のブームではなく定着している。グルテンフリーも含めて、以前に比べるとそこまでマーケティングに力を入れている感じはなかった。
野菜や果物用の紙容器やネット状の袋、加工食品の容器、化粧品や日用品に至るまで、今まで以上にできるだけプラスチックを減らす傾向に。ミネラルウォーターはペットボトルから、瓶や缶へ。食品やワインなどもリターナブル瓶を採用したり、製品のパッケージがより環境に配慮したものへと進化している。
とかく日本では、海外の過激なヴィーガンや環境活動家の行動が大きく取り上げられがちで、それに伴いなんとなく有機・オーガニックに関して否定的な感情を持たれることもあるのが悲しい。このBIOFACHの会場においては、ヴィーガンやプラントベースをコンセプトとする商品も、乳製品、卵、畜産物も“BIO(有機・オーガニック)”という共通項でつながり、一堂に集う。また、一言でBIOと言ってもそれぞれの生産者の考え方、哲学によって、生産の手段や農法、表現が異なる場合もある。それでも、いがみ合うような敵ではなく競い合う仲間であり、ここでは互いへのリスペクトがある。
共通の目標は、今、対応が迫られている地球温暖化対策、地球環境問題に、各自ができる範囲で社会的責任を果たすことなのだと、そんなメッセージが今回のBIOFACHの会場、出展者や商品から強く伝わってきた。
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。