リサイクルする前にリユースを!
何度も繰り返し使うことを前提とした“アルミボトル入りミネラルウォーター”が、海外で増えてきている。
日本で流通している飲料の中でも、脱ペットボトルが最も進んでいないのは、おそらくミネラルウォーターだろう。ガラスボトルのミネラルウォーターは流通しているものの、輸入がほとんどで国産の水ではごくごく僅か。ほとんどがペットボトル入りだ。
リユースを前提としたデザイン
こちらは、Natural Products Expo West 2023にも出展していた、アメリカのPATHというアルミニウムボトル入りウォーター。使い捨てペットボトルへの依存を打破することを目指し、詰め替えを前提とした容器だ。軽量なうえ、持ち歩きたくなるような洗練されたデザインも魅力。デザインのカスタマイズができるので、企業のノベルティーとして活用することもできる。飲んでしまった後も空のボトルは捨てずに、家でも、会社やお出かけ先の給水スポットなどでも、何度でも水を充填して使うことができる。
このようなプラ削減、リユース可能なボトルの取り組みは、2022年7月、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が、2032年までに州内のすべての包装をリサイクル可能、または堆肥化可能にすることを義務付けるSB 54に署名したことによる影響が大きい。これにより、プラスチック包装を10年間で25%削減し、すべての使い捨てプラスチック包装の65%をリサイクルすることを義務付けた。
サンフランシスコ市では2014年に定められた条例により、既に市所有の敷地内でのペットボトルの販売が禁止されている。空港内では再利用ができ詰め替え可能な飲料ボトルを持参または購入することもでき、保安検査の前後に各ターミナルにある給水ステーションで無料で給水が可能となっている。
空港だけでなく、ホテルなど様々な施設で給水ステーションを設け、マイボトルの持参を推奨。このような取り組みはさらに加速してくと考えられる。
【参照】
Office of Governor GAVIN NEWSOM
https://www.gov.ca.gov/2022/06/30/governor-newsom-signs-legislation-cutting-harmful-plastic-pollution-to-protect-communities-oceans-and-animals/
SFO Sustainability
https://sustainability.flysfo.com/plastic-free-sfo/
San Francisco International Airport
https://www.flysfo.com/sites/default/files/2023-03/Expanded%20Zero%20Waste%20Concessions%20Guide_01262021.pdf
こちらはスペインで購入した、Ocean52 その名も「No plastic water」というわかりやすいパッケージ。スペイン北部のアストゥリアス州のGALEA SPRINGから採取した天然ミネラルウォーターの缶ボトルだ。こちらのメーカーでは、プルタブの飲みきりタイプの缶も併売している。
利益の52%は海洋保護に充てる取り組みもしているとのこと。B Corporation認証も取得している企業だ。
スペインでは、基本的な廃棄物法制を通じて循環経済の原則を確立するとともに、気候変動との闘いに貢献し、海洋環境を保護することを目的とする「循環経済のための廃棄物および汚染土壌に関する法律」が、2022年4月10日に発効された。また、2023年1月には、「使い捨てプラスチック容器税」が施行され、再利用できないプラスチック容器や包装の製造業者、輸入業者を対象に、プラスチック含有量1キロ当たり0.45ユーロの税金が課されることになった。
【参照】
Ley 7/2022, de 8 de abril, de residuos y suelos contaminados para una economía circular.
循環経済のための廃棄物および汚染土壌に関する法律
https://www.boe.es/eli/es/l/2022/04/08/7/con
脱プラスチックボトル
日本では2021年に無印良品を展開する株式会社良品計画が先陣を切り、飲料のパッケージをペットボトルからアルミ缶へと切り替えた。あれから3年がたち、コンビニやスーパーなどの売り場では未だにペットボトルが主流ではあるものの、少しずつ再封にも便利なスクリューキャップ式アルミ缶ボトル飲料は増えている。ワインなどアルコール類でも、最近は飲みきりサイズの缶ボトルが人気だ。
【参照】
株式会社良品計画
ペットボトルからアルミ缶への切り替えと水プロジェクト活動拡大のお知らせ
https://www.ryohin-keikaku.jp/news/2021_0422.html
リサイクルしやすく持続可能な容器として再注目されている、アルミ缶。軽量で鮮度保持に優れ、熱伝導性も高いので飲料の容器には最適だ。何よりもリサイクル性に優れている。アルミ缶を再びアルミ缶へ戻す“水平リサイクル”により資源の有効利用ができ、また、リサイクルの際にも新しい地金を作るよりエネルギーの節約にも貢献できる。
アルミ缶に利点はあるものの、小売り目線で考えれば、アルミ缶に変更したら販売数が減少してしまうかも?と懸念してしまうのは想像に難くない。果実のジュースなどは特に、透明のペットボトルのほうが果汁の色や質感がわかり、目にした瞬間に食欲や購買意欲がわく。お茶類も、それが緑茶なのか麦茶なのか、紅茶なのか?など、ぱっと見てすぐに識別しやすいのはやはりペットボトルだ。
それでもプラスチックごみの問題が深刻になってきている昨今、使い捨てされてしまいやすいプラボトルから、缶ボトルやガラスボトルへと再転換を急ぐべき。それには、国や自治体による思い切った施策だけでなく、メーカーも小売流通も、そして消費者自身も、意識の大転換が必要だ。
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。