5年前の「Natural Products Expo West 2019」で、インスタント麺について書いたレポートがある。あれから5年、日本の現状もふまえつつ、海外のオーガニックラーメンの現在地を考えてみたい。

▽インスタントラーメン新時代。スープにもこだわるオーガニックのカップ麺
https://organic-press.com/world/world_report104/

こちらはスペインのオーガニックスーパーで購入した、オーガニック味噌ラーメン。イギリスの「king soba noodle culture」というブランドで、輸入品となってしまうため、スペインでの価格は1食4.09€(購入時レート日本円でおよそ675円)と高め。ちなみにイギリス現地価格だと£2.29(およそ441円)だ。

◎オーガニック認証
◎グルテンフリー
◎ヴィーガン

インスタントカップ麺でかつ有機認証の製品は、5年前には海外でもほとんど無かった。お湯を注ぐだけでできる、インスタントのカップ麺でオーガニック認証を取得するのは、麺は比較的とりやすいものの、添付される粉末のスープの素や、かやくのオーガニック認証を取得するハードルが高かったからだ。

実は日本でも、2020年に日本初となる有機JAS認証のカップラーメンが誕生している。今のところインスタントカップ麺でオーガニックのものは株式会社風と光の1社のみ。(※インスタントの袋麺は、数社あります)

ちなみに、同社では醤油ラーメンと塩ラーメン、焼きそば、カレーうどんなどをラインナップしている。いずれも動物由来原料は使用していない。

こちらのオーガニック味噌ラーメンを開封してみると、カップの中から玄米麺とフリーズドライのネギ、味噌スープのペーストが入っている。(それぞれオーガニック原料)

さらに味噌スープの原材料を細かく見てみると、ベースとなる味噌はオーガニックで、酵母エキスと椎茸、セロリをブロスとして使用している。

Classic Miso Soup*:Miso Paste*(Water,Soy Beans*,Rice*,Sea Salt,Yeast,Koji Culture),Yeast Extract Powder,Red Pepper,Celery Powder,Shiitake Mushroom Extract)*Organically certified ingreadients.

麺の形状は、日本ならカップにあわせて円形にするだろうなと思われるがこちらは四角形。おそらく袋入りの麺の規格のままだと思われる。最終的にほぐれれば良いので問題はないが、麺をタテにして入れるのが不思議な感じだ。

気になる味の評価だが、玄米の麺は小麦の麺と比べても違和感なく、コシもちゃんとあって、ラーメンとして美味しく味わえた。白米だとフォーのようになりそうだが、玄米麺は色も、食感もラーメンに近い。ちなみに、別の味のラーメンは玄米ではなく蕎麦を使用していて、ラーメンとは言い難い味だった。蕎麦はインスタントラーメンの麺にはあまり向いていないようだ。

日本でも近年、国産の米粉を使った麺がたくさん市場に出回っているが、生めんに近いものがほとんどで、茹でる必要がある。“熱いお湯を注ぐだけ”3分で食べられるような、“米麺のインスタント化”が実現すれば、国産で且つオーガニック、グルテンフリーなカップラーメンの商品化もそう遠くないかも?

ちなみに、容器はもちろん紙。日本のカップラーメンの容器は一般的にプラ容器が多い。だいぶ紙カップも増えてきたようだが、なぜかさらにシュリンクがかけられている。こちらは上蓋の接着部分はシーリングされているが、外装のシュリンクなし。味噌ペーストなど一部の個包装は除き、できるかぎりリサイクル可能な素材を使用し、ごみを出さないよう環境に配慮している。

海外のオーガニックスーパーでもなかなか目にすることができなかった、オーガニックのインスタントカップラーメン。まだ少数派とはいえ、認証された製品がこれから続々登場すると予測される。

日本で商品化する場合、従来の小麦の麺でも実現可能だが、輸入のオーガニック小麦に頼らざるを得ない。また、日本の場合は主食である米の需要拡大という意味でも、米麺のインスタント化、オーガニック認証の米麺などから、まずは進めたいところ。実現すれば、日本製品の品質の高さに加え、味の面でも味噌ラーメンや醤油ラーメンなど日本ならではの調味料を使用して、海外製品に負けない美味しい商品が生まれそう!国内はもちろん、今後は、海外展開を見据えた商品開発やブランディングが求められている。

自然災害の多い日本では、お湯さえあれば手軽に温かい食事をとることができるカップ麺が重宝される。いざという時のための備蓄、健康的な非常食の選択肢のひとつとしても、ジャンクなイメージだったインスタント食品のオーガニック化が、ますます必要とされるようになってくる。今後の商品開発に、大いに期待したい。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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