2015年10月29日(木)、表参道ヒルズにて開催された「オーガニック・デイ・ジャパン」。モニク・マレズによる教育セミナー「アメリカの最新情報について」にて、大変興味深いマーケティングデータ―が紹介されていたので紹介したい。

US Organic Market Size and Market Trends

米国のオーガニック市場は前年に比べ10%以上の成長を見せている。2014年のオーガニック全体の売り上げは391億ドル。そして市場成長率は11.3%(54億6000ドル増)と、過去6年で最大の伸び率だったという。米国内において全食品の総売り上げの5%はオーガニック。その中でも農産物が最大のカテゴリーで、全ての有機食品売り上げのおよそ36%を有機農産物が占めている。

ここ数年のオーガニック飲料、とりわけジュース人気から、オーガニックフレッシュジュースの成長率は33%、ボトリングされたジュース類も15%近く伸び、米国有機農産物市場の成長を後押ししてるようだ。

2014 Sales
Organic Food : $35,9 billion (91.9%)
Organic Non-Food : $3,2 billion (8.1%)
Total Organic :$39.1 billion

source:Organic Trade Association’s 2015
Organic Industry Survey conducted
2/10/2015-4/3/2015

また、米国では10軒のうち8軒(83%)の家庭がオーガニック製品を購入しており、そのうち半分のオーガニックユーザーは2年以上オーガニックを購入している、というデータがある。そして半数の家庭が、1年前に比べてさらに多くのオーガニック食品を購入していると回答している。つまり、このことからもオーガニックは一過性のブームに終わらず、しっかりとリピーターを掴む魅力があるカテゴリーであると、数字が示しているのではないだろうか。

そして、個人的に最も興味深かったレポートがこちら。

TREND#1 : CHANGE OF VENUE
Where do you typically buy your organic foods?
あなたは有機食品を、いつもどこで買っていますか?

何気ないアンケートレポートで、詳細な説明こそされなかったが、このアンケート数字は現在の、またこれからの日本を見ているようだ。米国の有機食品購入者の購買行動、買場の変化などから、日本のオーガニック市場の未来が見えてくる。各買場カテゴリーのシェア、そして2014年と2015年の数字の変化に注目して見てほしい。(複数回答あり)

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1.Conventional Food Stores / Supermarkets
一般の食料品店やスーパーマーケット(Kroger,Safewayなど)
2014年 70% ⇒ 2015年 78% (↑UP)

2.Mass Merchandiser
大型量販店 (Walmart,Target,K-Martなど)
2014年 45% ⇒ 2015年 54% (↑UP)

3.Natural/Organic Food Chain Stores
オーガニック食品のチェーンストア(Whole Foods Market,Trader Joe’sなど)
2014年 37% ⇒ 2015年 37% (→flat)

4.Warehouse Club
ウェアハウス クラブチェーン、会員制(Costco,Sam’s Club)
2014年 23% ⇒ 2015年 32% (↑UP)

5.Local Farmer’s Market
ファーマーズマーケット、農家直売
2014年 10% ⇒ 2015年 13% (↑UP)

6.Online Grocery
オンライン・ネットショップ(Amazon.comなど)
2014年 7% ⇒ 2015年 14% (↑UP)

7.Local Health / Natural Food Store
地域の健康食品、自然食品店
2014年 4% ⇒ 2015年 7% (↑UP)

8.Neighborhood Co-op
近くの生協
2014年 2% ⇒ 2015年 2% (→flat)

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先に記したように、米国全体のオーガニック市場の成長率は11.3%。そして、一般の食料品店やスーパーマーケット、大型量販店、コストコなどで購入する人たちが増加。その他の買場でも全体的に増加している。別の見方からすれば、従来のオーガニック専門店以外の売り場が増え、その分価格競争も激化してくることも想像がつく。消費者にとってはどこでも便利に、より安く購入する買場の選択肢が増えている。

また、次に注目したのがオンラインショップ。アマゾン・ドット・コムなどのネット通販も、まだ全体からすれば少ないものの一年で倍増。生鮮食品も扱うアマゾンのサービスAmazonFreshは、配達エリアも取扱い数も拡大してきているとのこと。確実にオンラインショッピングサイトでオーガニックフードを購入する人は増えている。

一方、Whole Foods Market(ホールフーズマーケット)や、Trader Joe’s(トレーダージョーズ)などのオーガニック専門店(チェーンストア)の利用者は横ばい。固定客や根強いファンに支えられているものの、市場が伸びている分、事実上マイナス傾向にあると言えそうだ。

彼らのようなオーガニック専門店は生き残れるのか?
そして、そのためにどんな取り組みをしてるのか?

すると、モニクから

「このようなオーガニック市場の成長の一方で、生産者回帰(消費者が直接生産者とのつながりを求める)の動きも見られる。これからは、より生産者との会話、対話を大事にし、情緒的な価値をつくることが、取り組みの主流になっていくべきでは。」

という言葉が返ってきた。

日本におけるオーガニックの市場規模や拡大スピードは、米国とは比べ物にならないくらい小さなものかもしれない。それでも、ここ数年の間に、従来のオーガニック専門店以外でもオーガニックを扱う店が増えてきている、ということは実感値としてある。また、ネット通販の伸びも同じくだ。

今後、日本は米国と同じような道をたどるのか?オーガニックが身近となり、一般のお店でも、どこでも手軽に買えるようになるつつある今、オーガニック専門店だからこそ可能な、消費者との直接的な対話や表現方法。今だからこそもう一度振り返り、見直してみる価値はあるかもしれない。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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